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セレナ:旅の終わりに出会った二人

 今日は二話載せます。



 ルーと再会できてとても幸せになった。というかルーがめちゃくちゃ強くなってた。まあ元から芯は強いのだけど、スキルで実力が追いついた。はっきりいって私も勝てないと思う。どんな努力をしたのか。心配になる。


 パン屋を頑張っただけとか全く意味が分からない。デンジャラス放水? なにそれ。ただルーを愛しいと思うから怖さはなかったが。


 ルーはすさまじい強さだ。私たちでも勝てないだろう。でも、この旅の間に出会ったあの二人ならどうだろう。


 私はとても勝てる気がしなかったのだ。私でもと言っていいものか。私は冒険者ランクならAからSくらいだしな。


「すまない、馬車に乗せてもらって」


「構いませんよ。我々も急ぐ旅ではありませんので」


 モアリースト司教が対応してくれたが私は心底引いていた。


 黒い衣装(ドレス)、黒い髪、赤い瞳の美しい女性だったが、一目見てとても勝てないと思った。百年修行したらどうにかなるレベルに感じた。アイリスすら黙って唸っていた。人にあらざる存在。


 チェルシーさんなら接近戦に限れば五分かもしれない。はっきりいって接近戦でチェルシーさんに勝つのは私もアイリスも無理だし。遠距離で二人で策を弄したらやっとどうにかなるレベルだ。


 そもそもチェルシーさんは三秒あれば100メートルは詰めてくる化け物だ。こちらの攻撃が当たらぬようジグザグに走っての三秒だ。


 なので接近した状態ならチェルシーさんがわずかに勝つ。そんな魔導士の女性だった。憧れるほどに強い魔力を持った。そう、憧れた。美しい人だし。


 道中でドラゴンが襲ってきた。あり得ないことだったがどうやらこの女性を狙ってきたらしい。ただ、彼女のスキルは聖女のスキルである光術で、細い糸のような光を一瞬横に走らせてオリハルコンの剣でも貫けないと言われるドラゴンを真っ二つにしたのだ。


 アイリスに聞いたところ人間技ではないとのこと。あの、一週間で私の三ヶ月の努力を覆してくる天才のアイリスをしてだ。


 アイリスが使う大光球をあの糸の細さにまとめているらしい。完全に化け物だ。


 彼女はどうやら魔族らしく、魔族が暴れていると聞けば、それが都市を破壊するレベルの魔族でも討伐に出かけて無傷でしれっと帰ってきた。本気で化け物だな。


 ただ、救いは彼女が人間にとても友好的だったことだ。我々の馬車にただ乗りするのは悪いからとドラゴンの素材を譲ってくれたりした。さすがにもらいすぎである。まあ処分するにも困ると言っていた。


 ちなみにルーと再会した時に彼女と同じくらいの圧迫感を感じた。どうしてそんなに急成長したの? 私たちも修行を怠ってなかったのに。アイリスもルーと真剣に勝負したら勝てなそうと言っていた。相当辛い修行をしたのか聞いたらパン屋が辛かったとか言ってた。意味が分からない。


 ただこのお話はここで終わらない。その最強の魔族とおぼしき彼女が圧倒的に敗北を喫したことがあったのだ。


 長い旅だった。春から秋になるほどの。だから色々有ったのは当然といえよう。だけど、信じられないことはあるものだ。


 その黒い衣装が似合うお姉さん、クラリスさんが手も足も出ない、そんな存在がいたのだ。


 その人が現れた瞬間に私たちは吐きそうなほどの威圧感を感じ、敵対したわけでもないのに恐怖からかクラリスさんは率先して飛びかかった。


 彼女の光の術でアイリスの必殺技である大光球を叩きつけ、たのだが、無傷どころか術が消えた。


 彼女の名前は知らないが、直感で分かった。薄いオレンジのコート、襟を立てて、望めるのは銀の髪とアメジストの瞳、圧倒的な存在感。


 オレンジお姉さん。そう、ルーにスキルの予言をもたらした人物だろう。何者なのか。いやまて、それは十年前だぞ。若すぎる。魔族か?


「くだらない闘争に身をやつすのならば其方を希望としたは我の失策か。我も無様なことだ」


「き、貴様の存在を許せば世界が揺るぐであろう!」


「そのようだ。では私は去るべきだな」


「いや、いや、まさか。去ってはいかん。去らないで!」


「ふふ、戯れだ」


 なんでそんなやり取りをしたのか。なんでそんな人が私たちの前に出たのか、分からなかったが。


「あの子の大切な娘たち。ふふ、可愛いな。そう仔犬のように怯える必要はない。私が愛しいと思うものを精霊が傷つけることはないからな」


 彼女はそう言ったが、逆に返せば気にくわない存在は精霊が勝手に攻撃すると、そう言うことだ。精霊は世界を作るもの。世界が敵となると言うことだ。


 最強の存在。自然にそう思った。なんで? 今あなたはこの世界に現れた?


「なに、約束をな。果たしに来たに過ぎん。だがな、我が動くようでは全ては失策であったのだろう。子らよ、人生を楽しめ。楽しめるなら我も嬉しいからな。幸せになれ」


 そう言って彼女は去った。去らないでほしいと言ったクラリスさんだが、なぜか安堵していた。


 私には全く意味が分からなかった。あれは人間なのか? 魔族ですらないだろう。


 旅の過程ではいくつも感動があったが、その出来事が、彼女との出会いが、なぜか起こってはいけないことだった気がしたのは確かだ。


 クラリスさんは目的地であるランシンの町の手前で降りたが、なぜか彼女とも別れてはダメな気がした。


 彼女がいなければ、オレンジお姉さんに勝てないだろう、その不安が大きかったのだと思う。


 オレンジお姉さんが敵でなかったとしても、あの存在感は怖すぎた。ルーは五才で彼女と出会っている。正気でいられるものなのか。確かに子供なら覇気など分からないのだろうが。


 謎は多いが答えはでない。残念ながら私はこういう時には思考を放棄する。考えすぎると悪夢を見たりするから。


 まあそんな旅だった。うん、変なキマイラに襲われてすさまじい力の魔導士のお姉さんと出会って、ルーに宿命を告げたオレンジお姉さんにも出会って。


 この旅はすごい濃厚だった。それだけは間違いない。




「いや、そんな話聞かされるとボクもすごい不安になるんだけど。オレンジお姉さん優しくなかった?」


「優しくなかったかと言われたら優しかったな。めちゃくちゃ優しかったんだろう。あの存在感だけでドラゴンを駆逐できそうなところを抑えていたんだから」


「五才でそれにであったボクがよく生きてたな?!」


 まあ、幸せになれと言ってくれたのだから、彼女は私たちにとっては善性な人なのだとは思う。きっと、おそらく、メイビー。





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