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冒険者のルーフィア

 毎日が光速で過ぎ去っていきますね。ユニーク五千件突破、有り難う御座います。



 ガチャリ、と、冒険者ギルドの白い両開きの扉が開かれた。


 そこから入ってきたのは見るからに貧相な少年だ。


 冒険者ギルドという組織の常なのか、新人には教育が施されるのが慣例となっている。


 むしろこの慣例はベテランぶってる奴がぶちのめされるための慣例じゃないかとボクは密かに疑っているのだが。


 例にもれず、少年はオッサンたちに食って掛かられる。


「へっへっへ、ガキぃ、こんな場所になんのようで来たんだあ?」


「ここにはこわあいおじさんがたくさんいるんだぞぉ?」


「良く見りゃ可愛い顔をしてるじゃないか、酒でもつきあえや」


 少年は彼らをチラリと見ると、まるで興味ないように奥の受付に進んだ。まだこんな化石じみた人類いるんだなあ。


 いきり立つ男たちだが。


「あいつらよそもんか?」


「それでなくともモグリだろ」


「はあ、喧嘩売る相手は選ぶもんだろうが」


 先日のスタンピードでジャイアントを倒したボクは冒険者たちに尊敬されていたりする。


「下級冒険者のしつけってあいつらみたいなののためにある恒例行事な気がするわ」


「まああの子なら平気だろうけどここにいる全員を敵に回すとは思ってないらしい。受付嬢すら、いやギルマスまで敵になる」


 それはまるで呪いの言葉。うーん、ボクはゴッズ級アイテムだったりするんだろうか?


 少女ルーフィアはなんのこともなく受付の席に着いた。そりゃそうだ。この町でボクに逆らう人いなくなっちゃってるし。メルフィーナ子爵くらいだよ。あ、リンゴもね。あれ、非常食も逆らうわ。


「西の森に進入禁止地帯を作りたいんだけどいくら払えばいいかなあ?」


 冒険者ギルドでよく勘違いされているのだが、冒険者の身分は冒険者ギルドでも最下位だ。冒険者、それを雇うギルドの職員、ギルドマスター。その上に立つものがいるのだ。


 それが冒険者ギルドの依頼人。冒険者が決して逆らってはいけない相手である。当たり前だ。お前らの給料どこから出てると思ってる。依頼人に逆らったり妨害したら、その冒険者に待ってるのは、冒険者としての死だ。


 冒険者ギルドは夢や希望にお金を払う組織では断じてない。錬金術師や貴族のために働く労働力を確保する営利組織だ。そもそも誰も金を払わなかったら薬草もドラゴンの素材も売れないのだから。


 そもそも冒険者は多くは農奴から脱したいものが選ぶ職業だったりする。それこそAランクを超えるような英雄ならば仕事を選べるが、C以下はベテランでも所詮は使いっぱしりなのだ。夢も希望もない。ただの雑用係だ。この世界にはスキルがあるので農奴が勇者スキルや聖女スキルを賜ることもあるが、それでもだ。


「てんめえええ! 俺たちを無視してんじゃ」


「おい、余所者の雑魚ども。彼女が何者か知ってて喧嘩を売ってるんだろうな?」


 中年だががっしりした、いかにもベテランの冒険者がバカたちを止めにかかる。そこでようやく彼女に食って掛かっていた冒険者たちは気付く。自分達を囲んでいる視線が氷より冷たいどころか石化させられそうなほど厳しいものであると。……実はこの人ギルドマスターなんだよね。


 よくある話である。貧弱に見えても慕われる上位者に食って掛かる余所者、毒持ちに気付かない。自然界でもある話だ、が、その結果はお察しの通り。


 後の祭り。


 ボクはなんの苦労もなく暴力も振るわず、推定D以下の冒険者を教育してやったのである。ボクってやっぱり優しいよなー。


「ちょっとなんか冒険者任務こなそうかな。薬草鑑定は持ってるから難易度の高い奴やってみたい」


 採取はランク外でもできるけど任務は受けられないのでかなり安くなってしまうけどね。実績はもらえる。ちなみに今Cランク。


「Bランクくらいでしょうか?」


 受付さんもボクの活躍を知ってるから高めの任務を選んでくれる。でもねー。


「Sでもいいよ。ボクのパーティーでやるから大丈夫」


「パン屋閉店ですか?!」


 うお、めちゃ食いついてきた!? そうか、高ランク任務って時間がかかるもんねえ!? 道理で冒険者ランクの案内がなかったよ!


「ていきゅうび、二日で、定休日にいくから!」


「それなら往復で二日で行ける範囲でSランク薬草採取ですね。マンドラゴラ採取などがありますね」


 僕らのやり取りを聞いて、絡んできていた冒険者はなんの魔法も受けてないのに石のように固まっている。


 冒険者ギルドで舐めてかかったらダメな相手は実は貧弱そうな相手なんだよねえ。だってこんな荒くれのいるところに入れるだけでもその貧相な相手はバックボーンを持ってるってことなんだから。


 もちろんただの世間知らずの可能性はあるけど、それだって力ある冒険者には保護対象なんだよなあ。


 あまつさえ、貴族に食って掛かる冒険者なんてその場で斬首だよ? 相手の正体が分からないならスルーしようね。


 なんで貧相ってだけで食って掛かれるんだろうね? 本物のバカの考えはボクには分からないよ。あ、考えてないからか。


 ボクは逆に彼らが憐れに思えるよ。ボクお金はあるから結構いい服着てるのになあ。頭より目が悪いのかな?


「お決まりの茶番も楽しいがさっさとマンドラゴラとやらを狩りに行くのだ」


 ちなみにリンゴも黙ってついてきている。


「うーん、思い付いたんだけど非常食にマンドラゴラ引っ張らせるのありじゃない? あの子なら犬みたいに死なないと思うし」


「お主あやつに並々ならぬ敵意持ってないか?」


「家族に敵意なんて持ってないよ?!」


 ボクとリンゴのやり取りは何故か雑魚冒険者たちを睨んでいた人たちからも生暖かい視線で見られていた。


 まあ非常食だとマンドラゴラの死の叫びくらい余裕で乗り越えそうって思ってるのもあるんだよ? ホントだよ? まあ威厳を示して黙らせよう!


「お前たちにはメロンパンをおごってやろう!」


『うわああああああっ!?』


 え、そんなに?! 冒険者ギルドの全員が喜びの叫び声をあげてボクらを恫喝した冒険者は鼻水を足らす案山子になってるんだけど?


 まあメロンパンくらいはおごるさぁ。なんかメロン入ってるクリームメロンパン。ギルド員さんがてきぱきテーブルを出したよ。そんなに?!


 まあ盛ってやろう。


 優しい人が案山子にメロンパンあげた。石化回復効果なかったと思うけど解けたみたいだよ。いったいなんなのこの茶番。


 そういえば一週間もの間ボクが食料供給してたわけだけど、それは冒険者だけじゃなく普通の市民から貴族に至るまでだったんだよね。全員が洗脳されて……してないからね? ボクの作るパンが本当に美味しいんだ。


 ボクという優しい存在はこの町に溶け込んでいるんだね!


「そのセリフが凄まじいボケセリフに聞こえるのは我だけか?」


「間違ってない」


「認めた?!」





 まあそんな定番イベントはあったけどボクらは山にマンドラゴラとついでにインペリアルマッシュルームというキノコを探しに来た。食べたらなんかすごいことになるらしいけどボクが食べたらダメらしい。味を確かめたいなぁ。


 鑑定でちょちょいとそれらを見つけて非常食に抜かせて、この辺り心が通じてるのは楽だった。耳栓もしてあげたよ。家族だからね!


 そうしてちょっとだけのお小遣いを稼いだんだ。たまにはいいね。






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