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セレナ:旅立ちの日

 セレナはいつも考えてくれるので好きです。



 ようやく巡礼の旅が決まった。メンバーはアイリス、私、モアリースト司教、チェルシーさんだ。


 チェルシーさんはピンクの髪と瞳を持った美女でSランクなのにまだ二十代らしい。私の周りには天才が集まるのだろうか。凡人の自分は申し訳がない。モアリースト司教は白髪に青い目でお爺ちゃんだがなかなかに整った顔をしている。


 自分以外美形である。悲しい。


 さて、いよいよ旅立ちなのだが宰相のベレベには反対されていたため(そもそもこいつがモアリースト司教の政敵らしい)式典のようなものはないし、モアリースト司教ともチェルシーさんとも現地解散で話がついている。どうもチェルシーさんはモアリースト司教と契約関係にあるらしい。


 まあ彼らのやろうとしていることがなんなのかは踏み込まないことにしている。国に関わることだ。知らないのが一番良いだろう。


「はあー、早く女神に会いたいわあ!」


「辺境だからまあまあ遠い。ひたすら西に移動しないとダメ。聖女として活動するのもハスター様との契約」


「分かってるって。治癒師したら良いんでしょ? ちょいちょいとやってやるわよ」


「人気が出る程度に愛想も振りまいて」


「ハイハーイ」


 アイリスはかなりテンションが高いのでたぶん私の言ったことはやる。実際私もルーに会えると思えば心が踊る。ルーがいっそ少し困ってて私たちが助けられたらいいな、なんて思ってしまうけれど、ルーは根っこが強い。きっと飄々としているはずだ。


 ルーに新しい家族ができている心配はある。彼女は家族や友人と認めた人たちが傷つくと、キレる。


 ルーは今、スキルという力を持っている。もし人に敵対されたら殺してしまうかもしれない。


 ルーが私やアイリスを犯罪者にしたくないように、私たちだってルーに罪を犯してほしくないのだ。


「ルーは愛が深いからな」


「ルーフィアは必ず私を待っててくれるわね! 愛の巣を用意して!」


「すごい自信ね?!」


 まあたぶん待っててくれるけど。愛の巣はどうかな? ルーに聞いたパンと水のスキルならお金を稼いだり開拓地を応援したり戦争に参加したりしてるかも知れないけど。


 重要人物になってる予感しかしない。会えるのかな?


「さて、次の町の治療院に向かいますぞ」


「はーい」


「分かった」


「二人とも、緊張感がないな。まあ敵がいても私がなんとかしてやろう」


 敵、ね。やっぱりいるわよね。聖女として第三王子の派閥として動いていくのだから、そうなるでしょうね。


 そういえばアレスたちはどうしてるかな。邪魔になりそうよね、あいつら。なんか今ではどこかの令嬢に取り込まれているらしい。どうせ鼻の下を伸ばしてホイホイついていったんだろうけど、あの噂が気になる。城の中で魔物が出るという。


 城には結界だってあるはずだ。外からは魔物は入れない、と、すれば中で生まれた(・・・・・・)と言うことだ。それを作った学者が、おそらく王族に保護されているのだ。不穏すぎる。


 できるだけアイリスを城から遠ざけ、ルーの元に連れていく。きっとそれが一番冴えたやり方。


「この辺りは魔物は出ないのですね」


「一応は騎士団が巡回しているからな。王都周りは冒険者の仕事も少ない」


「辺境は大変なのですか?」


「辺境には辺境で竜殺しの英雄がいたりするからな、危険はあるだろうが」


「そうですか」


 ドラゴン、ドラゴンか。今の私なら殺せるだろうか。少なくとも三人がかりでチェルシーさんにボコボコにされた勇者(笑)たちよりは強いんだろうな。


 結局あいつらは大した修練をしていない。正直燃やしてくれば良かったか。まあ私が手を汚すまでもない。


 私たちは順調に一つ目の町にたどり着く。アイリスとモアリースト司教は仕事が大変だろうが私とチェルシーさんは護衛で暇そうだ。


 時間が空くようならなにか考えておかねば。ルーの役に立てるかな。


「む? なにやら不穏な気配がしますな?」


「そう言われれば」


 油断していた。なにか嫌な魔物の気配がする。謀略に巻き込まれる可能性があったのになにをボンヤリしていたのか!


 なに、あれ、炎を全身にまとった熊のような生き物。肩や胸にヒヒの頭のようなものがついている。腕も四本。キマイラだ! こんなところに合成獣、明らかに刺客!


「護衛は確か炎使いと剣士であったか、あとは戦えぬ僧侶二人、楽な任務だな。さあ、破壊、破壊、破壊! 火精魔熊よ、その力を示してみろぉ!」


「人間がいる!」


「なによお、ルーに会うの邪魔する気ね? ぶっとばすわ!」


「人類で最恐の聖女が暴れる方が怖い。私が対処する」


「剣で斬れないタイプは苦手だ。頼んだ」


 頼まれた。どうも敵は勘違いをしているようだし。私のスキルは燃やすスキルなどではない。炎を操るスキルなのだ。


「燃える熊さん、あなたの主人を攻撃しなさい。炎術:火精操作」


「は?!」


 炎の熊は自分の主人に襲いかかる。貴方は火に耐えれる?


 ちなみに私を燃やせる炎はこの世に存在しない。


「ば、ばかやろう! お前が破壊する敵はあっちぃぎゃああああ?!」


 案外弱い。私は燃える熊の肩を抱きその男を見下す。


「炎術だから燃やすしか能がないなど、ルーが聞いたらきっとこういう」


「な、ななななななにいいいぃ?!」


「貴様はスキルを舐めた。炎術:火精強化」


「ぎ、ぎゃああああああああああああッ!?」


「グリースさん、油断しすぎでございますよ!」


「ぐっ?!」


 突然出てきたエルフの神官に熊ごと蹴り飛ばされる。仲間がまだいたか! 私も油断していたようだ。


 はっ! ヤバい! 私が攻撃を受けたのをあの子に目撃させてしまった!!


「あんたああああっ! 私のセレナになにするのおおおおっ!!」


 やばい、こいつらアイリスの地雷をスキップしながら踏んだ。私のって言ってくれて嬉しいけど。やめなさいアイリス、あんたのそれは不味いのよ!!


「光術:大光球落星!!」


「ぎ、ぎゃああ!!」


「直ちに逃げます! 空間術:長距離転移!」


 十五メートルはある巨大な光球が地面に激突、巨大なクレーターを作る。ちなみにスキルの専門家によると光の術でこんな質量を出す技は存在しないことになっている。アイリスだから仕方ない。


「ちっ! 逃げたわね!!」


「殺さなくて良かった」


 今の光術はチェルシーさんが初めて逃げ出した一撃である。本当にこの聖女ヤバすぎだ。


 その後はなんの妨害もないまま、辺境の町までたどり着いた。たぶん敵もアイリスが怖かったのだろう。


 まあ、もっと怖い存在には出会ったんだが。





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