ワーカーホリックというやつだよね。
お待たせしました! 展開が難しく。
今日もボクはパンを売っている。なんか綺麗な感じで言ったけど労働しているだけである。
朝ゴリラを嗜んだ後、今朝もハンバーガーを売っている。菓子パンも売れ行きは良い。
「ねえ、ボクの人生ってこれでいいのかな?」
「知らんが儲かってはいるだろう?」
「商業ギルドの応援が二十人を超えているんだけど」
「お陰でパンをだすだけで済んでいるのだ。良かったではないか」
「やっぱり値段上げる? まあ売れてるのはありがたいんだけど」
「うちよりマシな飲食店がないから仕方ないのでは?」
そうなんだよねー。残念なことにうちより美味しい料理店ってないんだよなあ。スキルで出してるだけだけど。やっぱりこのパンと水のスキルはチートなんだよなあ。
ちなみに今日の三時には代官様と面会する予定。アポがあっさり取れてビックリしている。ルーフィアパン店はこの地に名前が轟いているらしい。それはそれで助かるんだけどね。商業ギルドから派遣されたアルバイトの皆さんが死にかかってるのだけが心配だ。疲労回復ポーションをおごってやろう。
マジブラック企業なんだけど、うち。まあ一番働いてるのリンゴだけど。
「我は怒っても良いか?」
「だめ。ボクも働いてるし」
むしろスキル使いまくってるからね? ハンバーガーを出すのもう嫌なんだけど?
「実は一番お主が悲惨な気がする」
「間違ってねえな」
一日に数千個単位でパンを出してるんだけど、そろそろ精神的におかしくなりそうなんだけど。
「まあ定休日までもう少し……明日が定休日であるな!」
「やったぜい、ひゃっほう!」
「まあ今日は代官様と会談があるが」
「ボクもう引き込もって良い?」
侵入者を全殺しにして寝てたら良い気がしてきた。なんでボクパンを売ってるんだっけ? お金はもう家が買えるくらい貯まってるしもうゴールしても良くない?
「お主普通にヤバい子であるな」
「モテモテさ!」
「そういう意味では言ってない」
なんかボクってツッコミなのにボケすぎじゃない? キャラ的にボケな気がしてきたんだけど。
「うむ、ボケの方が強いな」
「今気づいたんだけど日常生活にお笑いって必要かな?」
「豊かな生活には必要かな?」
「じゃあ必要だ」
「だからボケるなと」
「リンゴがボケないからダメなんだ!」
「ジャムが甘くない」
「微妙なボケはやめて! ツッコめない!」
「完璧なボケってどうすればいいか分からないの!」
「それがもうすでにボケ!」
「ツッコミが上手かったらどんな発言もボケになる気がしてきた!」
「はやくボケて!」
「超音速でボケてみる?」
「それツッコミが追い付かなそう!」
はあ、ボクって絶対ワーカーホリックだよお。ツッコミ業そろそろやめたいよお。
「やっぱりお主ボケじゃないか?」
「アイリスがいたらツッコミしかしないんだけどなぁ」
いったいボクは何と戦ってるんだろうね?
半日ボケたので、じゃないよパン屋してたので!
お代官様のところに向かうことにした。スキルがAランクになったせいかスムーズにストレスなくパンと水を出せるようになったよ。飲んべえのお客のためにビールを樽で置いてきた。やれやれ。代金は鍛冶屋の親方さんがくれた。ドワーフの。
「だんだん商売が荒くなってきてないか?」
「スキルで出すだけだからお金取るのがだんだん申し訳なくなってきたよ。お金ならすでに生活に困らないだけあるし」
「まあしっかりお金をもらわないと他の店の営業妨害になるからな」
値段をむしろ上げないとダメなんだろうねえ。経済はボクには難しいよ。まあ孤児院の子供たちのお給料は最初の五倍にしてるんだけど。まだ収入が多いんだ。
「原価がかからんのがな。普通は三割強原価がかかるところを丸儲けだからな」
「他の商売をしている人たちに申し訳なくなってくるよ」
お酒とか本当に出したら出しただけ売れるからね。ボクがいる限りお酒が切れることないからドワーフのお客さんが増えたよ。ブランデーとかウイスキーとか蒸留酒も売りまくりさ。ちなみにビールの五倍くらい値段つけてるのに飛ぶように売れる。ちなみにこういうお酒の知識もスキル知識。
そんな風にリンゴと駄弁っているうちにお代官様の館についた。ボクの領地を認めてもらえるものだろうか?
綺麗なメイドさんに応接室に案内される。可愛いなあ。あいたっ、なんでつねるのリンゴ。
この地の代官を勤めているのはメルフィーナ=ランシン子爵という女性貴族だ。元々平民でこの地を預かる時にランシンの名前をもらったらしい。それで子爵? そんなに早く昇爵するもの?
オレンジの少しウェーブのかかった長髪に赤い瞳が綺麗な人だった。年齢は二十代前半で身分は子爵だという。まあボクは民衆に人気があるので敵対的に振る舞われることはないだろう。
いたずらに喧嘩を売る必要はないよね。ボクって舐められるのは嫌いなんだけど、そんなに力も無いからね。マスタードを鼻から突っ込んでやるくらいしかできないよ。
「それはボケなのか?」
「ボクはツッコミ体質なんだ」
「強烈なボケにしか聞こえんぞ」
「ボクは家族が守られるならそれで良いのさ」
「我は家族か?」
「恋人じゃないの?」
「恋人になった記憶がないわ」
「えー、いけずぅ」
そんな茶番をしてたら代官様が来た。
「お主たちか、カエデ村以西を領地にほしいと申し出たのは」
「そうでーす」
「貴族を敬わないのだなルーフィア」
「まずこの国を敬ってないからねえ」
「まあ戦意を促すために新聖書などという物を作ったこの国を敬えぬ気持ちは私も分かるぞ」
「そのうちこの国は滅びるだろうけどね。さすがにあちこち喧嘩を売りすぎてるよ」
「ふむ」
メルフィーナさんは話が分かりそうだ。暴れるつもりで来たけど必要ないかな。元は平民だっけ。
「どうせなら独立しても良いのだがな。さすがに今の王家にはついていけぬ」
「だよねえ」
「お主不敬とか考えぬのか?」
いや、別に人類を敵に回しても良いって言ったじゃんリンゴ。不敬とか言われても戦うけど?
「貴族王族など所詮力で手に入れた身分ゆえな、力ある者が覆すならそれも有りだろう」
「ものすごく物分かり良いな?!」
「リンゴも不敬だよ~」
「お主が言うな!?」
「私は代官なんてやめて寝ていたいくらいだ」
「代官がすごい怠け者だった!?」
「ハンバーガー美味しいよね」
「ついでにうちの店のファンだった?!」
「リンゴの方がツッコミ体質なのかな~」
「ツッコミが追い付かないから二人してボケないで?!」
「カエデ村を放置しているのはこの領地に力がないゆえ。お前たちが開拓してくれるならば否やはない」
「それで良いのか代官?!」
「まあ代官の権力なんてこんなものなんだよ」
「どこ目線?! ルーフィア平民なのに偉そう過ぎるだろ!?」
「まあ私のごとき代官では仕方ない」
「もっと自信もって?!」
リンゴはうるさいなあ。領有権認められたからもう良いじゃん。帰ろ?
「良いのか?! こんなグダグダで?!」
「アップルパイ三十個置いていくね」
「やったー!」
「代官?! 威厳とか無いの?!」
「ペリテー伯爵には話を通しておこう」
「急に貴族ムーブ?!」
ペリテー伯爵は西側はこのランシンやカエデ村まで領有してる伯爵様で常には東端の領都にいて、ランシンはメルフィーナさんの前の子爵に代官を任せていたらしい。その人に、メルフィーナさんはなにか功績をあげたので養子になって、なって数年で亡くなって領地をメルフィーナさんが受け継いだらしい。その人は新書に反発したために左遷されたとか。
「いきなり壮大になってきた?!」
「帰るよリンゴ」
「置いていくでない!」
「……アップルパイ美味しい」
あの子たちもあの計画に巻き込まれそうだな……。
香りも高いし酸味と甘味が絶妙だ。もぐもぐ。
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