不可思議な敵
はいよ、ごろりんこ!
ごろりんこ職人ミーヤちゃん。
さあ、て、今日も忙しかったなー。わらわは抱き枕を所望する~。
「甘えん坊であるな。来るがよい、我が胸に!」
「無い袖は振れない」
「ひどくないか?!」
ひどくないさ~。眠いけど。いい抱き枕でぐっすり眠れば精神も回復回復~♪
「うぉふ!」
いきなり魔森狼の最初にテイムした子、ウォルイが寝室に入ってきた。ドア? そんなものはないですね。
「ん? どうしたのウォルイ」
「くぅーん」
「ベッドになりたい?! なんかダイレクトに意志が伝わってきた!?」
三メートルはあるウォルイである。二人が横になるには十分だが……。
「ぬくそうではないか。硬い敷布団よりよいのでは?」
「おおおぉ、それいいねえ! やってみよっか! てかウォルイもメスなのね! リーダーなのに!」
「メスがリーダーの群というのはわりと珍しくないのだ」
「そうなんだ、あ、めっちゃふかふか!?だけどちょっと獣臭! 待ってて、浄化水を温かめで、洗浄、除去!」
「うぉふぉん?」
「おお、毛並みが一気によくなったぞ! すごいなスキル!」
「ふふん、称えていいよ?」
「お主を称えると図に乗るであろう」
「まーねー……ほめられなれてない」
「よしよし、お主は可愛いのう、ウォルイにダイブである!」
「ひゃっほーい!」
ぼふん、ふわふわ、もふもふ。あひぃ、一瞬で安眠しそうになった?! かけ毛布と掛け布団!
ふ、私大金持ちなんです。ダメだ、似合わない! まあ大金持ちなのでみんなにいい布団おごったったぜい! 貴族並みの生活を送るゴブとか面白くない?
ボクはカイロパンをたくさん配置してふかふかもふもふごろりと寝るだけだよ…………スヤァ。
やべぇ、なにがやべぇってウォルイの寝心地がやべえ。ストレスが一切残ってない。一万日でも毎夜ウォルイベッドで眠れたら戦えるわ!!
「スッゲェいい寝心地であったな……肌艶まで回復しそうで……してるぅ?!」
「朝からリンゴが猛ツッコミするくらい快適だったよ!?」
「くぅーん」
や、やべえ、ボクのパンと同格の癒し効果だとおおぉ?!
「我はこのベッドでしか寝れない体にされてしまったのだ」
「ボクもだが、言い方」
そんなハプニングはあったが今日も朝が来た。ウォルイにはハンバーガーに魔力を込めて特大のを食べさせてあげた。
ライムが食べるベッドがなくていじけてる波動が来たので堅パンを久々に出してやったらなぜか喜んだ。スライムの好みは分からない。永遠の迷宮のように。シリアスか。
快適な朝だったので朝はみんなでポテサラサンドイッチ! ウォルイも追加でね?
「いじめか、って喜んでる、ってそういえばこいつサラダサンド食ってた!?」
「もはやワンコだね!」
とても元気になったので出勤します!
今日のゴブたちの予定はアルラウネ探索と北にもエサ場を作ったからそちらの確認ね。あとマッピングも不完全だから潰していく。このシンクロというか共通意識みたいなのすごいわ。
まあ、まずはパン屋をやろう。……………………、なんか今視界にすごい美しいものが写った。
ミドリさん(ゴリラ)がポージングをしている。……整えた記憶がないがなんとも美しい。ビューティーゴリラ!! そういや美容関連のスキル持ってたな!! 今度使ってもらお!!
「うおお、なんたる毛並み! ゴリラでない我にすら伝わる美しさとは!!」
「しかもボクのパンを食べて能力がうなぎ登り!」
「世界一美しいダンジョンになってしまいそうであるぞ!!」
やべーよやべーよ。くっついたらダメなものがくっついた感じがガンガンするぜぇ!
ちなみに配下には好みのパンと水をお腹いっぱい与えてる。
とりこになりすぎて遅刻するところだった。やばい。ゴリラヤバい。もうゴリラが世界征服しそうなくらいヤバい。
朝の仕事は普通にこなせた。うーん、システム改革したら流れがよくなった。
「従業員が機械的にではなく考えて仕事するようになったのであるな」
実際前線に独断で動かれたら堪ったものではないけど、こちらの命令の範疇なら考えて動かない兵は困る。この辺りは理解できないとダメなんだよね。自分がリーダーになりたいなら自分の城を建てればいい。うちでやられたら邪魔でしかない。無能判定も当たり前。
「お主軍略などどこで学ぶのだ?」
「学んだ覚えがないよ?」
でも本を読んで考えることはよくあるなあ。しかもよく読む冒険物ってだいたい最後戦争になるんだ。それで軍略とか学んだのかなあ?
いつも通りにパン屋さんを開いて、大量にパンとジュースとビールを出して…………、実はきつめのお酒とか高級酒も出し放題なんだよねぇ。稼ごうと思ったら夜にもやるんだけど、今はまだ防衛が大事。
今日も1日忙しく働いて、問題は帰ってから起こった。って言うか。
物語が、動きだした。悪い方向に。
「子供らが襲われておりますぞ!!」
それはゴブリンシャーマンのムバウばあちゃんの声だった。村の北を探索させていたゴブリンたちが襲われたらしい。ボクとリンゴとライムとなぜか非常食も、北に駆けた。
家族が襲われているのだ。当然駆ける、そんな意識が伝わってきた。非常食のくせに!
「うぉふぉおおおーぅ!!」
非常食が跳んだ! 敵に目掛けて一直線に!!
すごくない? ロバの膂力じゃなくない?
蹴りを入れた、非常食が弾けて転がった! なにごと?!
敵は、雷をまとっている。狼?
なんか狼にいくつも猿の顔をつけたような気持ち悪い生き物だった。鵺とか、キマイラ、そう名付けた方がいい生き物だ。
恐れと、同時に怒りが沸いてきた。ボクのゴブたちを、こいつ、食ってる。
殺す。
「食いたいだけ食えや!! パンと水!! 地獄のように辛いパンとそれすら溶かす水に溺れろお!!」
「ガボッ?!」
水中ではどれだけ力があっても自由に動けはしない。陸上と水中では力の働き方が変わるのだ。チーターも海中なら溺れるしかない。マグロを陸に上げれば動けなくなるように、陸生動物と水生動物は別物だ。
さらにボクのパンと水は味も思うがままだ! 死ぬほど辛いマスタードの海に沈め!!
「うお、匂いこっちにまで来る!?」
「まあやつが死んだら解除するから大丈夫だよ」
いや、マジでマスタードの匂いキッツいな! 味方が被弾しそう。
まあ飲み込まれた本人が死んでるけどね。なんなのこの雷をまとった狼みたいな生き物は。
「はあ、なんだったのこいつ」
「……分からんが、人工的な生物のようだな」
人工的な生物?
……これがこの後も続く地獄の入り口だとは、ボクたちの誰一人気づいてはいなかった。非常食にボクのスキルで治癒ポーション飲ませなきゃ。
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