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ハスター:祈り

 さあ、終わりを始めます。




 僕らはただみんなが傷つくのを見ているだけだった。戦場では今も別格な人たちが苦戦を強いられてる。


 僕たちにはどうしようもないのは分かる。でも、少しでも力になれないのだろうか。補給線なら保ってる。


 僕は、なんて弱いんだろう。王子なんて権力、こうなってしまえば無力なんだ。





 戦いは続いている。


 世界が滅ぶというほどの攻撃を食らっても回復してしまう敵の最終兵器。ブレアが仕組んだ悪夢だ。


 あの天を突くような巨体がみるみる回復するのは実際に気持ち悪くもあり、恐怖を感じさせる。


 僕たち力のない民は、カエデ女王国の人々は、ニターナの兵たちも、嘆くでも怒るでもなく、ただ、祈っていた。勝利を、皆の無事な帰還を。


 巨大なスライムが敵を食らう。しかしライムは逃げ帰った。仕方ない、この戦い自体ルーフィアのための戦いだと思うし。


 炎が度々敵を焼くが不思議とこちらには熱が来ない。


 本当にセレナの破壊は優しい。


 世界を焼くのかというほどの炎で敵は溶けたが、すぐにも敵は再生した。


 かと思えば家の柱のような水晶が雨のように降る。石が、岩が、山が降る。魔王を自ら名乗るだけはある。尊敬するよ。あれはリンゴか。


 だが彼女も力尽きた。


 空が降ってくる。効いているが、続かない。アイリス本人は攻撃に向かないと思っているらしい。嘘でしょ。


 続いて光の柱が舞い狂う。クラリスさんだな。敵も泡を食っているように見える。


 さすがは大魔王だ。でもなぜか彼女は地面に突入した。




 僕たちはその度に、ずっと、祈っている。


 祈っていることしかできない平民だ。


 なんだってこんなところに連れてこられたのかと思ったけど、


 英雄には、勇者には、聖女には、魔王でも、前線で戦う王たちには、


 背後で守られる民たちの声が、


 祈りが必要なんだろう。祈りが必要なんだ。


 祈ろう。僕らにはそれしかできない。


 男としてはなんと無様なことだろうと思う。確かに行政で結果を残したとは言えるが、それは個人の力としては相当なのであろうか。人を使う才能というものでしかない。美しくはないな。


 貴族は全てをまとめより良い環境を整える、そのために存在を許されていると思う。


 ぶっちゃけて言えば王や貴族は必要だ。大工に棟梁が、設計士がいるように、まとめ、導くものが必要なんだ。だからロードと言うんだろう。


 でも、必ずしも力を必要とはしていない。


 僕らは。全てを支配しておきながら、無力だ。


 世界が滅びようとしているのに。なにもできない、なにもしてあげられない。


 もちろん避難誘導はしたけど、ひとりでできたわけじゃない。


 僕は諦観と共に、この景色を眺めていた。


 今のままじゃ駄目だな。そう思った時、


 世界に光が満ちた。



◇ルーフィア視点



 ボクは、どうなったんだろう。


 なんかうるさいな、後ろの人たちが、これ、なんで聞こえるんだろう。すごくセンスが鋭敏になっている感じ。


 ボクたちに祈ってくれてるんだ。だからかな。うん、新しい力が良く分かる。皆のお陰でボクは、新しい力を得たらしい。体は変わんないな。クラリスさんやリンゴの変身とは別物か。ちょっと発光してるけど。スーパーな感じ。スーパー普通人。




 ボクは、傲慢だ。




「さて、さーて、ボクの大切な人たちを苦しめたのはどいつだ? 可愛がってやるか。でかいだけのヤツが。ん? ああ、クラリスさんに根を食らわれて焦っているな? いやクラリスさんすげえ、神と化したボクでもちょっと怖い」


 クラリスさんが光になって地中を飛ぶように駆けてる!! あの魔王ガチヤバイよ! 普通に勇者勝てないわ!!


「あぼぎゃがばらあっ!!」


「不細工な鳴き声だな。今、ボクの力を見せてやろう。はじめまして雑魚くん。ボクは傲慢の邪神、ルーフィアです」


 それは、すべての終わりを告げることもできる、破壊神の一柱。ボクの望むように世界よ、変わるがいい。




 ボクは、傲慢だ。




「はじめるか、【破裂せよ】」


 傲慢、それは、その意思を無理矢理に押し通すこと。


「バンッ!?」


 きたねえ花火だ。


 ふうん、ああ、ボクは空を飛んでるよ。ボクが望んだから当然だろう? 傲慢の邪神は力ですべてを押し通す者。


 次はどうしてやろうかな? なんか再生しようとしてるから、これで。


「【再生を禁ずる】」


 傲慢の神は物理であろうが神霊であろうが命令できる。【滅せよ】って言えば終わりなんだ、ぶっちゃけ。


 でもね、それじゃボクの怒りが治まらない。


 ライムを、セレナを、アイリスを、リンゴを、みんなを苦しめた。


「【十分に苦しむが良い】」


「あごばあああ?!」


 ふむ、なにかしら意思があるようだが、相容れぬ。語るべくもない。


「せがいなど、いらぬぶぅ」


「で、あろうな。さて。そこか」


 世界などいらないのに世界を食う存在にされたとは難儀だな。まあ帝国も食らったらしいし、許さぬが。


 敵の核らしいものが分かった。……しかし神の力なくしてここまで焼いたセレナたちは十分に神レベルじゃないか? 怖い。


『根は焼ききったぞ』


 おお、クラリスさんの声。クラリスさんはやっぱりすごいな。神じゃん。いや本気で怖い人だな。どうして生身で神レベルなんだ。そりゃ魔王を神も恐れぬって表現するわ。オレンジお姉さんには勝てないけどそれは当たり前。あの人始祖神の、宇宙の神様の一柱だからね。神になって分かるけどボク今もあの人に勝てる気がしない。


 ま、まあ、目の前のこいつだよ、こいつ。一撃で仕留めてもいいんだけど、どっしよっかな。


 とりあえず、


「これはセレナの分」


 殴る。


「これはアイリスの分」


 殴る。


「これはリンゴの分」


 殴る。


「これはライムの分」


 殴る。


「これはボクの分」


 殴る。


「そして、これは、ボクの、ボクのために祈り続ける、皆の分だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」


 ギッタギタに痛めつけてやる!!


「みんながお前の核のことを分析してくれたからな、終わりだ。【滅びよ】」


 これで、精霊を食らうものは終わる。核が溶け、ヤツは消えていく。




「ボクは、傲慢だ」





 少しでも面白いな、続きを読みたいなって思ったら、ブックマーク、評価、感想をよろしくお願いします!


 評価はできれば☆☆☆☆☆→★★★★★でお願いします!_(:3」 ∠)_


 最後まで、書ききりますので!!



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