セレナ:破壊神
セレナはヤバすぎます。
まず初めに言っておこう。無限のエネルギーなんてない。そんなもの有ったら世界が存在できないから。ただひとつあるとすればそれは原初の宇宙ね。そこには無限大にして無が在ったとされているわね。
私は意外とこの説は採用してるけど。世界はいつだってはじまりのひとつから起こる。ひとつの細胞が多細胞生物になるように、ひとつの物にナイフを入れたら二つになる。二つは四つになる。そしてやがて多様性は生まれていく。たったひとつの真理から。
って、哲学の話じゃなくて物理学や生物学ね。
じゃあなにが無限なのかというと、例えば私の、いろいろ便利なまほーポイントが100ポイント有りました。30ポイント使いました。残高は100ポイント。そういうこと。なので、例えば今、200ポイントの魔法は使えないということね。でも100ポイントを百万発打てる。
ただし、自分の一呼吸。例えば100ポイントの技を使うための溜め時間は無くならないから、0時間に百万発、とかは無理。一回の魔法を放つのに一秒かかるのなら百万秒かかるってこと。……大したことないスキルでしょ。だからこんなすんなり出てきたのね、このスキル。
ルーもどこかで言ってたかも知れないけど、スキルは修練によっても発動する。
私を誰だと思ってるの?
破壊神の末裔、セレナ=フランベルジュ。この世で最も邪悪な一族の末裔よ! しかも腐ってないわ! ルーは好きだけども! 女の子同士最高! え、腐ってる?!
前世は天才って言われるくらい賢かったのになあ。人生二回目だと飽きるじゃない?
「まあ、茶番は置いといて。ホットなジュースをおごってあげるわ。精霊よりも美味しいわよ」
丸い、目が二つ、丸い。口はギザギザの歯と大きな牙二つ。どっちかというとあっちの方が末裔顔してるわね。ブクブクと脂肪ダルマ。手足も極端に短いけど一応二足歩行。手は地面に着いちゃってるけど。それを私は空から見ているわ。炎術:超推進火力。私は空を飛ぶ。そして、巨人と見つめ合うわ。
醜いわね。焼けなさい。
「スキル:炎術:世界終焉の剣」
世界の全てを焼き払う終末の一撃!! もちろん金属でも揮発する高熱よ。
……んん、うん、攻撃は当たったわね。
……削れたわねー。んー、賢い人はとっくに気づいてるけど、とりあえず今の状態。巨人は片腕を失い地面は溶岩。なんか巨人から「マジかあ~ッ!」て聞こえそうな顔をしてるわ、ブス巨人が。
説明覚えてるか糞巨人。
「無限魔力:炎術:世界終焉の剣」
「無限魔力:炎術:世界終焉の剣」
「無限魔力:炎術:世界終焉の剣」
「無限魔力:炎術:世界終焉の剣」
「無限魔力:炎術:世界終焉の剣」
「無限魔力:炎術:世界終焉の剣」
×100
「……あー、やっぱり私が世界を滅ぼす、破壊神だったのね……」
世界が、裏返っていた。
「ぶっふぉっ!!」
「しっかりするのだかあさま! かあさまなら耐えられるのだ!!」
「いや、たぶんものすごく熱いよ?」
「ものすごく熱いですむとか本当にこの魔王は最悪の大魔王ね!! 尊敬するわ!! 私もなるわ!!」
「聖女がなるでないわ!!」
「さすがにこれは、方がついたか?」
テルナ様、甘いわ。甘かったわ、私が。これ、こいつ、死んでない?! あ、ちなみに私のスキルは当然「燃やしたいものは燃やし、燃やしたくないものは燃やさない」わ。元祖、絶対切断、炎バージョン!!
だけど、これは……。なんで地面まで燃えてるかよ。……こいつ、星を喰ってやがる!!
つまり巨人は大地を自分の体として取り込んでいってる。根を生やしている。……不味い!!
「根が、この星を食おうとしているの! こいつ、世界を全部食おうとしてる!!」
「!!」
全員がそれを理解した。こいつは本質的に、神に勝つために計画された存在なんだ。
……なんか、冷めた。こいつもか。
星一個、しかも惑星一個なんてちっぽけな存在なのをどうして分からないのか。こんなもの全部もらったってしょうもないって。宇宙の百万分の一%にも及ばない、こんなちっぽけな星を支配しても意味がないと、なんで気付かない。蟻より下だとなんで分からない? 私たち生物がちっぽけな存在だなんて、夜空を見上げただけでわかるじゃないの。……こんなチビすけに世界をくれてやれない。
星を喰らう? 勝手にやってろよとしか思えない。阿呆が。そのくせ未だにそのちっぽけな星の地表を這うだけの蟻だ。馬鹿にも程がある。
「燃やすわ。消えて。黙示録」
「ぎゃごあばはああああああああああ……あがあっ」
しぶとい?! 世界を焼くつもりの全開の炎だったのに。私の全魔力をひたすらに炎にしてつぎ込んだ。燃やせないものはないはずだ。なのに、耐えてやがる。
まあ、もう一回? 食らいたいのね。黙示録百連発。……なんでだ?
このまま押しきれるとかいう話じゃない。私のこの力ならもう燃え尽きているはずの、コアが、燃えない?
万物を燃やす炎で燃やせないということは、ここにないということだ。この世界の物理現象は元の世界の物理現象を大きく外すことができない。そう設定されている世界なんだ。
世界を表す方程式というものがある。その方程式は、物理科学的な要素をまとめて、宇宙開闢からの真理を、世界の姿をひとつの計算式にまとめ上げるものだ。逆にいえば、摂理に従わない理不尽というものは存在し得ない。世界に説明がつかないことは存在しない。なぜなら、説明しなければ誰も認められないからだ。実証しなければそこにあるのは空論か幻想だ。まあそれは事実として、と、テクニックで悪戯をすることはできるが、これは。
いや、そうか。分かった。まだ突破力が足りてない。うん。世界を滅ぼす一撃……百撃くらいでは駄目か。
なんというか私は萎えた。なんだこの茶番。違うんだ。こんな殴り合いじゃ、こいつは殺せない。だってこいつ、情報でしかないんだ。物理は情報の下でしかない。魔法はそれを証明している。
焼くものを考えないと。こいつを本当の意味では焼けない。
私が思い悩む間に、敵は当然攻撃してくる。戦場で考え事は悪手。知ってる。でも高速思考のせいでついおろそかになる。ハイパースピードの世界で躱し続けていたものの、やはり油断や疲れはある。
精霊を喰らう者の反撃の放射を、私は喰らうことになった。
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セレナは防御は苦手です。




