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セレナ:終わりを告げる者

 そもそもセレナは強すぎるんですけどね。



 戦況はかなり不味いことになっている。テルナ様の国軍はこちらからも具申して下がらせてもらったが、当然、敵はそのまま前に出てくる。やっと私たちも戦えるのかな?


 敵巨人の、どこかに行こうと言うのではないような、なにかを探してすりつぶしたいと思っているような。その不穏な動きは意味があるんだろうね。


 きっと、それは、ルーなんだろう、そんな気がする。許さないけど?


 ふざけるなよ。許すものか。私たちの大切な星を、死なせてなるものか。愛しいあの子をお前なんかにくれてやるものか。


 しかし、タイミングの悪いことにルーフィアが来てしまう。手の空いたテレポート使いがいたらしい。くそっ、責めるわけじゃないが本当にタイミング悪い。でもルーが来たらやっぱりそちらを気にするしかないね!


「みんな大丈夫? 怪我はない?」


 なんで貴女は女の子なのにそんな王子様オーラをしているの? もったいなすぎるわ。いや、むしろ女の子だから手当たり次第に妊娠させる、みたいなことになってないんだからそれでいいんだけどね。


 私は出会った頃からルーが女の子なのを知ってたのにぞっこんだったのよ。知らないでしょうけど貴女がアレスたちと戦ってたのを鼻血を流しながら見ていたのよ。自分が殴られようが気にしない。そんな女の子いないでしょう?


 でも、貴女は違った。勇者だった。英雄だった。救世主だった。


 もし、スキルが神の意図により与えられるのだとしても、私は恨みも嘆きもしない。そのスキルは、パンと水はまさにルーフィアのためのスキル!!


「戦況は?」


 ルーフィアが聞く。答えねば。なんか、マリオネットみたい? 服従してる? 全然違う。私はルーフィアに期待してる。安堵してる。それを許されないレベルで恋してる。


「ブレアがいくつもの術式を使い、敵対象、精霊を食らう者を弱体化させた。ブレアは敗退し、おそらく滅んだ。ニターナ軍は早めに引いたからダメージはほぼない。テルナ様はすごいわね」


「ブレア、死んだの? 敵はどれくらい強そう?」


「クラリスさんが渋い顔をするくらい」


「クラリスさんが?!」


 はっきり言って絶望的まである。ルーフィアがブレアの死を残念そうにしていた。たぶん話したかったんだろうけど、物語のようには進まない。


 そんな時に、ルーフィアのいつも肩から下げている鞄が動く。


「ピキーッ!」


 ライム?! どうしたの!


「イア、イア、ルーフィア!!」


 いや、スライム語は分からないけどはっきりとルーフィアって言ったわね。この子人語しゃべれるっぽいのよね。ハスター王子となぜか仲が良いの。なにポジションなのよ貴女。


 しかし、ことは動いた。およそ百メートルの巨人にそれに対抗するような巨体のスライムが発生したのだ。ライム、やる気だ。


 そこで動いたのは戦況だけではなかった。


「嫌だ、やだー! ライム、戻ってきて! そんな奴相手に死んじゃったらボクやだよおおお!!」


 女の子みたいに泣き叫ぶルーフィア。こんなルーフィアはまず見ない。いつもボーイッシュな王子様なルーフィアが、女の子のように。


 ルーが無理していたのはここだ。仲間を、家族を失いたくない。だからルーは前線で体を張っていたのだ。誰かに傷つかれるくらいなら、自分が傷付く。終始一貫してるのだ。


 でも、


 だからこそ、


 ルー、


 貴女をもう戦わせないために、私たちは命を振るう!!


「行きなさい、ライム! そんな奴飲んじゃって!!」


「ピギイーーーーー!!」


 奇しくも現れたその戦場は、名付けるなら「精霊を喰らう者対パンを喰らう者」どちらが強いかなど私は一切疑ってさえいなかった。


「ピギイーーーーーッッ!!」


 ライムは凄かった。物理的な存在ならば全てを喰らってやるとでも言うような。正直に言おう。ライムが敵なら王国の二つや三つ滅びるわ。


 スライムに滅ぼされた国なんて物語なら当たり前のように出回ってるけど、それが味方なのよ。想像を絶するわ。


 いつの間にかゴブ吉やミドリちゃんもそれを眺めている。そうか、この子たちのリーダーはライムだったんだ。だからこそ、ここまでまとまっていた。


 私も涙を流しながら見ている。ライム、どうか、死なないで、帰ってきて。そんな奴、私が焼いてやるわ。


「ライム、帰ってきてよお!」


 ルーの悲痛な叫びが続く。でも私とアイリスが押さえたらさすがに無理には動かない。


 抑えて。ライムにだって意地がある。ルーフィアを困らせる者は全て喰らってやる、そんな意地が。


「ルー、ライムは貴女に拾われて、とても感謝しているのよ。戦場には滅多に出ないけど、それは、ルーが悲しむのを知っていたからよ。はっきり言うわ。ライムは魔王と変わらないくらい強い。負けないわ!!」


「ピギイーーーーー!!」


 ライムが私の言葉に呼応するように叫ぶ。


 終わりを告げる者は、ライムなのか、精霊を喰らう者なのか。


 激しい戦いが始まった。


 ライムはまるで破壊神のようだわ。伸ばした触手を槍に変え、発射し、槍が貫いた部分は喰らい、自身の魔力とし、自身をさらに強化しながら敵と当たっている。


 世界を滅ぼしかねない魔王クラスのスライムの話しなんて呆れるほど世に溢れていたけど、私は今それが事実だと確信している。目の前で見ているのだもの。


 しかし、温存なんてレベルじゃないわね。確かにライムはあんまり戦場に出なかったけど、それはライムが弱いからじゃなくルーが過保護だったのよね。正直に言って、クラリスさんを除いたら、私たちの戦力第一位は、ライム、貴女ね!!


 ゴリラのミドリちゃんたちが隕石のようなスピードで手近な岩を投げ、援護している。やっぱりライムは私たちのダンジョンのエースなのだ。全員がそう認識しているのが分かる。


「ピギャアアアアアアアン!!」


「グボワオオオオオオオオ」


 相変わらず敵の鳴き声はダサいわね。ライムが圧倒的に押している!!


「きぱあああああッッ」


「ピギイ?!」


 かじった?!


 精霊を喰らう者がライムをかじった。だめだ! それ以上は!


 ライム、引いて!!


 私だけでなく全員が同じ思いで叫んだのだと思う。


 健闘はしたし勝ちの目はあったのだが、私はルーが壊れるのが恐ろしい。嫌だ。だからライム、早く帰ってくるのよ。


 あとは任せなさい。


 私を誰だと思っているのよ。


 破壊神の末裔、セレナ・フランベルジュ。


 安心していいわ。私の中の無限魔力が、今、目覚めたから。






 少しでも面白いな、続きを読みたいなって思ったら、ブックマーク、評価、感想をよろしくお願いします!


 評価はできれば☆☆☆☆☆→★★★★★でお願いします!_(:3」 ∠)_


 ライムは普通に負けないですけどね、ルーに愛されてるので無理はできないのですね。



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