アンナ:デーモンエンペラー
ラスボス登場です。
カエデ女王国、ニターナ新女王国の連合軍による侵攻が止まらない。まあ人同士が争う分には私はなにも困らない。むしろ喜ばしいまである。糞に集るウジ虫どもが滅びてもなんの痛痒も感じぬ。
人間はこれほどに愚かなのだ。いい加減神には、かあさまには実態を認識してほしい。知恵だけあっても生き物は醜くなるだけなのだと。知恵なき者、文化なき者の方が、よほど美しいと。
犬や猫の方が可愛いし、おかあさまだって犬や猫は好きじゃないか。人などよりよほど可愛い。
この国の皇帝、コレダはまだまだ余裕を見せているが、すでに国土を半分削られている。次が最終決戦となろう。分かっているのやらいないのやら。
どちらにしてもこの男の運命は決まっているが。
「それにしても、やつらの進軍は速すぎではないか? カジェルが失敗したのは間違いなかろうが」
「アンデッドの特性上、味方兵士の士気は下がりますし、そもそもタフさが売りのアンデッドが弱点の聖属性と炎属性の天才に追いたてられ全く機能しませんでしたから」
あのセレナとアイリスという二人の天才だけでもアンデッド兵は終わっていたが、ニターナ女王テルナのスキル軍神が想定よりはるかにヤバい代物だった。軍隊戦争において最強のスキルと言っても過言ではない。
もはや奥の手を使うしかなかろう。ぶっちゃけて言えばクレモットが滅んでもさして痛くはない。
しかしこのままではかあさまが許してはくれまいな。
「ベレベはいるか」
「こちらに」
「例の物の準備は?」
「すでにできております」
「なんだ?」
私がベレベとやりとりしていると皇帝が不思議そうに訪ねてきた。一応了承は取っておくか。
「皇帝コレダよ、人をやめても世界を支配したいと思うか?」
「どうした、アンナ。私の希望など知っているだろう。戦乱に喘ぎ、餓える民を無くすためにも、一刻も速く大陸を統一する。それが私の望み。そのための犠牲などこの身であれ厭わぬ。それは変わらない」
クレモット皇帝もまた、この世界の餓えを許せぬ一人だった。皆同じだな。しかし世界の周期は変えること叶わぬ。葉が枯れねば実は生らぬ。世界の輪転は全てが意味を持っている。不幸なれど人が手を結べるなら超えれるのだ。それが試されているのだと気づけばいくらか楽になるものを。……それができぬから猿なのだ。
「よく言った。ならばこの世界最高の技術をお前に施そう。なにか言うことは?」
「戦場はどうなっている。どうなる」
やはり戦場の兵たちのことを思うのか。しかし帝国の皇帝という身分ではなかなか一般兵まで気を使えぬからな。こやつが偉大な皇帝なのは間違いないのだが。しかし時が悪すぎたか。
「敵はカジェルを捕らえ、ブレアの新技術とデーモンエンペラーの捜索を始めている」
「デーモンエンペラー? 新技術とはなんだ? 報告は受けてないが?」
「デーモンエンペラーにブレアの技術が渡れば最終的なブレアの目的が叶うほどの結果が導かれると考えられているようだ」
「デーモンエンペラーが我が国にいるのか?」
「いない」
デーモンエンペラーなどいれば私が分かるからな。ただ、デーモンエンペラーはいないが、
「デーモンエンプレスならいる」
「は?」
「ベレベ、デーモンロードよ、核となりこの魔石に宿れ」
「は、デーモンエンプレス、アンナ様」
「なに?!」
私とベレベは二つの大国をそれぞれ支配していった。この大戦争も計画のうちにすぎぬ。神に人の愚かさを見せつけ、人の世を諦めてもらうために。神は我らのみを見てくだされば良いのだ。それは大天使たちも同じ気持ちであるはずだ。
神ほど尊き存在が人ごときに煩わされるなどもっての他である。なにが祈れば与えられるだ。なにが神は死んだ、だ。お前らのごとき小物の願いを神が叶える意味がない。神は不正を行わぬ。神は常に平等だ。生物全てに魔法を与えることもスキルを与えることもするが個人になにかを与えたりはしない。平等だからだ。
だが私は思うのだ。命など平等に無価値だと。存在する意義など無いと。我らデーモンや天使たちのような完全な者だけ仕えていれば良いのに。
だがそれでも我らがかあさまが望むなら、世界は形あるまま回るべきだとも思う。人こそがそれを歪めているが。
私としては多くの人間は神に見捨てられるべきだと思っている。しかし優しきかあさまが人々を見捨てることはしない。それを傍目で見ている我らがどれほど悲しいか。さもしい人ごときには分かるまい。
皇帝よ、お前を世界最強の存在にしてやろう。お前が望むように。
どうか、人の世を滅ぼしてほしい。
「さて、ベレベを伴ってこのブレアの最後の魔石はデーモンと精霊を融合することに成功した。最終段階に移る」
「あ、ああ。なにをするつもりだ?」
「こうするのだ」
生意気にも膝を組み玉座に反り返るように座る皇帝。その心臓を魔力の弾で私は撃ち抜いた。吐血する皇帝。胃か肺に穴でも開いたか。
「ごぶっ……?!」
「これにてアンデッド、精霊、悪魔の三つの要素を混ぜ合わせることが成立する。……まったく、ブレアは恐ろしい男だな、このような邪法を完成せしめたのだから。……さあ、目覚めよ皇帝。死霊術:不死者生誕」
「ぐ、ぐおおおおお……」
「ブレアの魔石よ、今こそその力を示せ。精霊と悪魔と死者を、融合せよ」
「お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
魔石はゆっくりとコレダの心臓に埋まっていく。悪魔である私が儀式の補助をしている以上失敗はない。
いま、ここで最強の生物が生まれる。
「仕上げと行くか。わが魂を食らえ、最強の魔物よ、さらに上へ。神には人も悪魔も愚かであると断じてもらえれば良いのだ。あの方を悲しませぬために、これで終わりとする!!」
「ぐ、ぬおおおお、アンナ、いったい、どういうつもり、だあ!!」
「貴様は最強の生物となる。この世界の生物を、人の種を滅ぼせ!! 神を煩わせぬために!!」
「う、ぐおおおおおおっ!! 貴様は、最初からそのために……」
「愛しき物のために、生きるものが命をかける。至極自然でまっとうであろうがッ!! さあ、行くがよい、『精霊を喰らう者』!!!」
皇帝は苦しみ、のたうつ。しかしそれが収まった時、アンナは皇帝に喰らわれ、
クレモット皇帝の城は、地図上から消えた。
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最終局面でえす!




