テルナ:スキル:軍神
テルナ様とかクラリスさんとか人妻が可愛いおはなしですね。
いよいよカジェルを追い詰めるわけだが、生け捕りにしようと思っている。理由はいくらかあるが、こちらの掴んだ情報によると、どうやらカジェルはブレアの研究を盗んだらしいのだ。みすみす盗まれたのはブレアらしくない気もするが、それがかなり不味いものなのは分かる。
ルーフィアに挑むとか冗談じみた目標を掲げているがアレに勝つつもりなら生半可な物は作っていまい。軍隊に当てられるとさすがに大量の死人が出る。それは困る。どこかで退避するべきだ。ただ、逃げるというわけにもいかぬ。
敵陣のアンデッドたちの数が減っている。敵の兵が残り少ないなら良いが、なにか嫌な予感がする。
「……巨人です!」
「む?!」
敵陣にいきなりぬうっと巨体が現れる。どこに隠れていたのか十メートルほどの巨体。しかも一体じゃない?!
巨人って作れるんだ? どう見ても考えても地面から生えてるんだが? 五体、六体、まだ増えるのか!!
「私、行く?」
「セレナは温存だ。私が仕留めてやろう。我が兵が」
「できるの?」
「ふふ、特別に見せてやろう」
さてさて、楽しくなってきたじゃないか。巨人狩りだ。
「スキル:軍神」
スキル軍神は自分の配下にある全兵士の意識をリンクさせるというとんでもないスキルだ。ルーフィアのパンの仲間意識を増大させるような効果は凄いが、これはそれを三つくらい上回る。例えば誰かがピンチなら五百メートル離れた味方が援護するようなことができる。誰かの攻撃魔法を他の誰かの位置から放ったりできる。一斉突撃が号令無しにできる。全員の魔力を共有できるため無駄がなくなる。連携は完全に取れるというわけだ。
「:鶴翼の陣:一斉射撃!!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!』
左右に直角に広がった部隊による一斉大規模魔法射撃だ。堪るまい?
「巨人、一体撃破!」
「続いて、二体目を撃破!!」
「我が軍が優勢です!」
「巨人からの投石攻撃!! 結界師の術を被弾箇所に展開!! 受けきりました!!」
全員の魔力が使えるので攻撃も防御も思いのままだ。優秀な魔術師が一万人いると思えばいい。連携が絶対的に取れている、な。
「これは、王のスキルね」
「すさまじいわねえ! さすがに女王は格が違った!!」
「そう誉めるな」
「大魔王に対抗できるな」
「できんわ!!」
十万くらい優秀な兵がいたらできるかも知れんがさすがに集まらん。どうでもいい雑兵なら集まるが。そんな非道な徴兵は考えてない。無駄に飯を食われても困る。やられて逃げ出されるのも困る。訓練されていない兵士は使えない。
「それにしてもカジェルはどこを目指してるのか分からんな」
「それはルーフィアがブレアに言ってたな」
「やっぱり気が合うな。また飯でも誘うか」
ルーフィアも政は苦手でもお祭りは好きだからな。戦勝を祝えるかと言えばまだまだ全く予断を許さない。
「敵巨人、六体目を撃破! どうしますか!」
「一旦帰陣せよ。エリクサー飲ませとけ」
「了解しました! 補給班準備!!」
下っ端の新兵まで口に出す前から動いている。この機敏な動きこそ軍神の効果だ。人間の戦ならまずは負けない。カエデとかは無理だが。カエデはタレントが多すぎる。
「この軍神、私とかアイリスとかクラリスさんも入れられる?」
「臣従してないと難しいが同盟関係ならなんとかなるかもな」
「やっぱりこのスキルも練度やレベルが絡むのね」
「およそすべてのスキルがそうだろうな」
だいたいルーフィアのスキルなんて明らかに戦闘スキルじゃないじゃないか。鍛えてこその最強だ。
「敵陣に動きは見えません」
「偵察を続けろ」
「はっ、カジェルは領内に確実にいると思われます!」
「奴を発見した者、捕らえた者にはそれぞれ賞金百万グリン!!」
「通達します!!」
さてさて、敵はまだ奥の手があるはずだ。どう来るか。
「大巨人発生! 敵の身長は五十メートルを超えています!!」
「来たか。ふふふ」
パチリ、と扇子で左の掌を叩く。予定どおりだし、ヌルい。
「各方面に伝達せよ。十分に休息を取った兵から中央に集めよ。結界班には無理をさせぬよう。魚鱗陣を展開せよ。魔砲準備!」
スキル軍神は兵さえ揃えば無敵のスキルともなり得る。そして勝てば勝つほど強くなる。なので小出しにして当たることもあるのだ。戦術としては下策だがな。そもそも各個撃破などさせぬ。すべての兵と意識が通じているゆえにできる、囮が無傷で帰る囮戦略も思いのままだ。
「スキル軍神、恐ろしい!」
「スキルは皆、平等であるな」
セレナはなんか信長っぽいとか言ってるが、誰だよ信長。私以外にも軍神はいただろうが。
さて、敵の大物はこちらを睨んでいるようであるな。馬鹿め。
「スキル:軍神:魔力を収斂せよ、太陽爆裂!!」
「ほう」
魔王がなにか感心したように呟く。……こいつのことだからこの程度ひとりでもできるんだろうなあ……。まあこれなら巨人を焼けるはずだ。
狙いは当たり、巨人の肩は吹き飛び、その巨体が揺らぐ。でくの坊を焼くだけの簡単なお仕事だ。
「構え、ってーーーッ!!」
太陽爆裂を連続して放ち、巨人を削り殺した。……大魔王がニタニタしてるのが気持ち悪い。あんたなら楽勝なんだろうな。
さすがに大巨人をのしたら敵の攻勢も止まった。兵たちをシラベル伯爵領都へと侵入させる。ほどなくしてカジェルとシラベル伯爵を捕縛した報が届く。
「でかした!」
「これで一つ戦局が終わる」
「やっと一息吐けるわね! ルーフィアも呼んでご飯にするのよ!」
「では、そろそろ迎えに行くか」
ルーフィアもこの戦場に呼ぶのか。まあさすがにここで一旦は侵攻を止めて今後のことを考えねばならぬが。
半日ほど待ってようやくカジェルは我らの前に現れた。貧相な爺さんだ。てっぺん禿げてるし白髪だしチビだし痩せてるしみすぼらしい。髭は無いが歯は抜けている。
こいつには聞いておかねばならんことがある。
「ブレアから盗んだ研究はどうなったんだ?」
小男を若干嘲るように聞いてやったが、その答えは私が恐れるのに十分なものだった。
「ワシも盗まれたわ……恐らく、帝国に」
帝国の宰相、アンナ=スフレイン=バレット公爵。……なにをはじめる気だ?
一通り情報を引き出したのち、カジェルは極刑を前提としてしばらく投獄しておくことになった。
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個人的な能力を足すわけではないですけど、全体をまとめあげる軍神はある意味最強のスキルなのです。




