クラリス:ニターナと共に
可愛いクラリスさんのお話。
うん、テレポート先を間違えたかもしれない。
我の前ではニターナ女王テルナがスッゴい苦虫を噛み潰したような顔をしている。なんでここに飛んじゃったかな~。たまにミスをするからテレポートは怖い。いや、テルナ、そんな顔するな。しゃがんで見上げるのはなんなの?
ウンコ座りとか言う奴?
五才の頃のお前と庭園で遊んだ記憶があるし、そんなに仲悪くなかったつもりなんだが?
「どこの国に世界を滅ぼせる大魔王が目の前に現れて笑顔になれる国王がいるのよ!!」
「テルナならできるよ、頑張って」
「アホの子かああああッ!!」
すまん、なんかテルナには我はアホの子認定されている。まあ娘を探して敵国を彷徨ったり神と戦ったり自分の国を捨てたりルーフィアの嫁になったりとまあ、……我ひどすぎない?! アホの子だ!
そんなだから年の差はかなりあるが幼馴染みで友達で平和を誓ったテルナにこんなに嫌われてるんだろうな。ごめんて。
「平和は誓ったけど、魔王のおじさまなんで殺した。まあ新書派のせいで開戦になりかけたのは分かってるわよ」
「我が国のことながら複雑なのだがな、おかあさまを慕う魔族が多すぎて、我の旦那も人間だったし、ニターナと戦争したいって魔族は全くいなかったんだ。おとうさまが横暴だったのが事実の一つ。それでも開戦に向かいそうだったのは、お前らが我の旦那を殺したからだぞ?」
「う、それは私の力が及ばなくてすまなかったが……」
「いや、十五年前のテルナはいくつだ? まだ二十代じゃないか? なんの力もない娘に、そこは恨む要素は無いな」
「糞親父と糞旦那ね。本当にろくなことをしない男ども……」
ニターナの屋台骨がしっかり傾いてるのは間違いなく男どものせいだな。しかしまあ、……腹を痛めて生んだ息子全滅だからな……。我に何かができたとも思わんが。悲しいよな。我もリンゴが死んだら、こんな星滅ぼす、くらい言い始めるかもしれん。愛深き故の破壊衝動を我は否定できない。
なのでテルナには気を遣っているのだが。本人は気にしておらんな。相当に苦しんではいるはずだが。こうして顔を会わすことになって、なんと言うか仲間意識みたいなものが芽生えている。
「まあ大魔王の力はギリギリまで借りない方向で」
「うん、ずいぶん帝国は情けないのだな。まあ領土が広いから簡単には片付くまいが。ルーフィアがブレアと方を付けるつもりらしいからその時は介入すると思うぞ」
「あれにもずいぶん苦しめられたから一発は殴ってやりたいがな」
「小さな争いにはなりそうにないからな……」
最近はブレアとの戦いは大規模戦争ばかりだからな。我も力を振るったし。
「それで、戦況はどうなっている」
「うん、ものすごく申し訳ないけどアイリスがアンデッドや悪魔にものすごく相性がよくてな、今のところ魔王の仕事なんかないぞ?」
「……聖女がおかしい。あれなんか憑いてるの?」
「これが、熾天使のティファナやアークデーモンのローランドが言うには神子って奴だろうと」
「……オレンジのねえさまの力を使っているのか……。そりゃ誰も勝てん」
そりゃそうか、聖女が神に力を授かっていない方がおかしいな。そしてアイリスは特別だ。
狂気に見えて芯を外さないようにしている。たまに外すのが怖いが、……奴はぶっちゃけ、我の第二形態まではついてくる。なるほど。そんなバカ聖女に勇者や魔女がついてきたら大魔王もやられる。歴史が証明してはいるが。
怖いものだな、魔王を倒した歴史ばかり世界に残っている。我が、汚名を返上せねばなるまい。
綺麗な魔王? なにを言ってるセレナ。まあ我は過剰戦力になるのでこの戦場でもあまり動かぬつもりだがな。我が出て終わり、では他のものの功績を挫く。
我は後方から見ていることにした。だって問屋の仕事もあるもん。
「魔王がなんで問屋なんかしてるのよ……」
「セレナには魔王しかできない仕事と言われている。実際に我も死にかけている」
「セレナあああああッ!」
「はあい、なに?」
「なんで魔王が死にそうな仕事をしてるのよ!!」
「……不幸な現実? あんまりにも忙しすぎて他の人だと数日で死にかねないし、だからといってルーの目的を止めるわけにもいかない。八方塞がりのところにニートしてた魔王がいた。それで仕事させてみたらきっちりやるしアホの子なとこがあるから疑問も持たず死にそうになるまでやるのよね」
「鬼畜かッ!!」
「考えてみれば小さい真面目な体力だけは無尽蔵の子供に仕事させてる気がしてきた」
「そのままなんだよ! こやつ五才児とでも遊べるような奴なんだぞ!」
「うーん、でも頭は悪くないじゃん? 普通に老成したことを言ったりするよ?」
「魔族は長命だからぼんやりしているところはあるんだ。そこは可愛いのだがな」
我はなにを見ているんだろうな。すごい子供扱いされてるから怒った方がいいのか?
「もう、我は子供ではないのだ!」
「な?」
「ですね」
「あれ?」
間違ったようである。魔族が普通でないのは理解しているのだが。人間を激しく恨むような魔族はわりときびきびしていたが、普通に長命種というものは亀のようにのんびり考えている。
しかし戦時中なのにこやつらものんびりしたものではないか。セレナとか強すぎるからそれはいいんだが。いや、アイリスが一人敵を薙ぎ払ってしまって敵陣が沈黙。我らは備蓄を準備して移動しているのだがな。食料はハンバーガーやサンドイッチだ。トマサラサンド美味いな。ポテトが美味しい。我はこういうさらっとしたのが好きだ。魔王なのに肉はあんまり食べない。ハンバーガーは好きだけど。
南が制圧されたら我も魔王に戻ってもいいな。
ニターナと共に、テルナと笑いあったあの空間で世界を満たすのだ。
我は大魔王。世界の全てを総てやろう!
「またなんか厄介なことを考えてそうよこの魔王」
「テルナ様、この人普段はルーに猫みたいに甘えてる」
「もともと精神年齢幼児なのよこいつ」
「頭は全然悪くないのに不思議」
「魔族は成長が遅いのだ」
「何百才だよ!!」
戦況が動かなくて暇なのでまたお祭りしたいなあとか考えてる我はたぶん幼いのであろう。でもそう言うな、威厳が保てぬからな。
「威厳?」
「お前に威厳なんかあるものか!!」
「あれえ?」
無いらしい。
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