年越しの祭り
ルーフィアって年上好きだよねえ。間違いないわ。
帝国から女将軍ハフェーネさんが降ってきた。ふわふわな薄いピンクのウェーブがかかった髪が可愛い。目もピンク。少女漫画の主人公か!
ちなみにセレナが少女漫画好きでイラストがすごく上手かったりする。少女漫画の本場はニターナだけどね。ニターナ旅行して聖地巡礼するのだ、と騒ぐ女兵士は多い。リンゴもはまっている。
戦争が終わったらニターナ学園とか巡ってみたいよね。それは置いといて。
なんかハフェーネさんはアンデッドがキモいので帝国を捨てました、とか言ってる。兵士たちの家族とかはすでに呼び寄せているらしい。騎士の家系の者が多いので人質の心配はないということだ。この人行動力あるな。キスしよ。
「素敵……」
なぜキスしたボク。頭おかしいわ。可愛いからしたくなったのさ。
「だんながはれんちなのだあああ……」
「リンゴ、耐えるのだ。選んだ相手が悪い」
魔王女と魔王に悪い旦那扱いされる女の子がいるらしい。ボクさ!
あんまり名誉ではないね。
「飯はいくらでも出すよ。食べておいき」
「あ、有り難う御座います!!」
こうして冬の局所戦闘はさらっと終わった。
冬が深まり、さすがに雪でアンデッドすら行軍できないとなって、ボクらは年越しの祭りと新年の祭りの準備をすることになった。
冬のお祭りは屋台も夏祭りとは違うものになる。ボクらはセレナが作ってくれた冬用の着物と肩掛けをもらった。ふわふわして可愛い肩掛けに鮮やかで厚い着物がいい感じだ。魔石懐炉をお腹に入れてるので汗が出るくらいだよ。
まずは煮物から食べよう。おでんの屋台があるよ。芋煮とかもある。セレナによると芋や一部の葉野菜、大根やカブなどの根野菜は冬でも生産できる貴重な食料らしい。輪作というのにも使えるんだとか。春にはマメ科植物を植えて、麦を植え、夏野菜を育てていく。
……いや、セレナ、なんで農業までできるの?! 君の知識どこから出てるの?! ボクもわりと本の虫なんだけどなあ?!
セレナって本当に万能だよねえ。まるで未来から来たみたいだよ。セレナえもんと呼んでいいらしい。意味は分からない。
まあ冬のお祭りだね。なんか山車とかいう派手なお神輿を担いで町の人が大通りを練り歩いていく。派手だねえ! 寒くないのかな?
屋台はたこ焼きやイカ焼き、焼き鳥や猪串とかもあるね。リンゴが用意したドラゴン串の店もある! 食べよ! どらごん!
ドラゴン肉は脂肪は少なめだけど旨味が強い。鶏肉に牛脂の甘さが加わったような味? 食感は牛肉をさらに柔らかくした感じ。
ドラゴンやクラーケンなんかの大型生物は魔力で体を支えているので倒された瞬間に吹き出す魔力でタンパク質が分解されて旨味が増すらしく、大型なのに大味にならないのだそうだ。セレナ、本当になんでも研究してるね!
セレナの知らない世界なんて無いんじゃなかろうか。後世で大賢者って呼ばれてそう。
冬はゲーム系の屋台が少ないのかなと思ったらクッキー割りとかくじ引きとかは普通にあるね。氷像とかの展覧会もあったよ。
動く氷像とかいて面白い。お姫様みたいな綺麗なスノーゴーレムの女の子とかいてすごい盛り上がった。奥さん増やしていい? ダメですね。最近一人増えたばっかりです。
いや、奥さんじゃないよね。ないよね? 奥さんの基準分かんないけど少なくとも女の子は奥さんもらえないよね?
「旦那が冷たいのだ! 氷像のように!」
「ルーフィア、僕らを妻と認めるんだ!」
「魔王の娘は妻じゃないね。あと男の子は妻じゃないね。旦那でもないよ?」
「旦那が冷たいのだ! 氷像のように!」
「え、これ無限ループする感じ?」
逃げまあす。ふう、妻たちの圧がすごい。妻じゃない。
うーん、なんかダンス会場とかもあるらしい。そういえばニターナは冬の社交シーズンで主だった貴族は王都のタウンハウスに集まって社交をするらしい。テルナ様もダンスが億劫とか言ってた。マナーとかうるさいんだろうな。ボクは田舎娘だからそんなとこ行きたくないんだが何故か貴族令嬢に絶大な人気らしく、来てくれと言われた。
タクシーさん(転移スキル持ちさん)に頼んで送ってもらうので雪とかは関係ない。
あ、冬のお祭りでも花火はやったよ。大人気!
王都でもやるらしい。テルナ様も見たいんだって。
「諸君、帝国との戦いも激化している現在ではあるが、アンデッドなどの出現で浮き足立つ者もあるだろうが、今、ここには我らの強力な同盟者がいてくれる! 盛大に呼んでくれ、我らが盟友、ルーフィア女王だ!」
なんか貴族的じゃない呼び出し方されたぞ?! まあ行くけども!
ステージの脇、舞台袖からボクはそそそ、とテルナ様に歩み寄る。ちょっとヤケになった。
「はーい、ルーフィアだよ! みんな、帝国との戦い大変だよね、ボクが極上の酒をおごってやろう!!」
『うおおおお!!』
「ルーフィアさまあ!」
「すてき! だいて!」
「おっさんキモいですわ! 私も抱いてくださあい!」
「なにこれ乱痴気騒ぎ?!」
貴族の皆さんがなんか貴族的じゃない反応しています。戦争が続きすぎでおかしくなったんですね、分かりません。分かりたくもありません。あ、抱きつかないでね、おさわりダメですよ?
……女の子は可愛いからいいか。一番さわってくるのテルナ様だが?
「筋肉はついてないな? これでどうして世界最強の打撃力を出せるのか」
「レベルアシストに身体強化にドーピングまでしてますからねえ」
強くなれば正義! まあ神のスキルの産物なんで健康も損ねないんだけどね。
「えーと、変なとこ触らないでくれます?」
「よいではないか、よいではないか」
「どこの変態悪代官のジジイ?!」
健全な淑女の女王様のはずである。まあいつもは猫をかぶってるんだけど。
冬だけど王都だけあってたくさん人が集まってるね。ビュッフェ形式でご飯を食べる。お皿はご飯を食べるテーブルに戻して新しいお皿にご飯を盛る。基本的には暖かいものと冷たいものは一緒に載せないんだけどシェフのこだわりで熱々の料理に冷たいソースとかいう取り合わせもあるようだ。
味は全部美味しいね。ちなみにボクが作ったローストビーフのハンバーガーとかも置かれている。ボクのパンは一部高級料理の扱いになってるようだ。原価はゼロなんだけど。さすがに一個に銀貨一枚(三千円相当)は払いすぎだと思うんだが。まあボクは儲かるけど。
「今年はいい年で終われた。感謝する」
「王子も王女も国王もズタズタになってる気がするんですけど?!」
「なあに、縁戚なんぞいくらでもいるからな、どこかの公爵の息子を王にするさ。新書派が片付いただけで荷が下りたと言うもの」
「それならいいけどねえ」
戦争のない世界を目指して戦争をする、恨みも買う、当たり前だと思う。それでも、平和な世界は訪れるだろう。
死んでいった人たちの命を「無駄死にだ」と笑うような人間には、ボクはなりたくない。
また、新しい年が来る。平和へと、一歩近づいて。
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キャラ多すぎて管理しきれないけど、普通に周りの人たちって入れ替わりますよね。寂しいけど。




