帝国との開戦
アンデッドが味方の国って嫌じゃないですか?
……カエデ女王国にもいました!
来たよ。雪が積み始める中、帝国軍が。ニターナと南でにらみあってるのによく兵隊だせたなあ、と、思ったら、アンデッドだった。全部アンデッドだった。
いいかい? ボクも女の子なんだ。アンデッド怖いよぉ!!
ジュルジュル体液流して緑色のカビが所々に生えてて目は白く濁り歯は抜け落ち肉は腐れ落ちて骨が見え、内臓がはみ出して、死んでるのに迫ってきてかぶりついてくるんだよお!!
ぎゃああああ!!
「セメレーナを破棄しよう」
「決断はやっ! いや、逃げてどうするの」
セレナは平気らしい。火葬にすればすぐ済むとか言ってる。男前……。
「きゃああああ! 近寄ってくるんじゃないわ脳ミソの髄まで腐った生ゴミより臭い最底辺の存在するだけで害悪なゴミクズゾンビどもがあああ!!」
アイリスの毒舌にゾンビたちがしょぼんってなった?! そしてアイリスの浄化で消えていく!
『来世は綺麗になりたい……』
アンデッドたちが浄化されて昇天していく!? さすがに聖女は格が違った!!
「大陸崩壊砲!!」
正直パンをアンデッドにぶつけたくないんだけど、早く片付けたいからね、仕方ないのだよ。
ぶっとべやあー! うせろー! 消えろおい!
「あー、キモい。アンデッドキモい」
「荼毘に付す!」
セレナの爆炎でアンデッドはたちまち焼けていく。スケルトンもゾンビもレイスも関係ないね!
「ルーを怯えさせる者は、何人たりとも許さない……」
ボソッとセレナがなにかを呟いた。お怒りモードだよ。表情変わらないから付き合いがない人は分からないけど、呼吸とか浅くなるし少し目が細くなる。赤い髪が魔力で暴れるのもあるね。
ボクに怒ってたりして? まあそういうことはあんまりないんだけど。愛されているからね!
あー、恥ずかし。それにしてもただのアンデッドだね。ボクもさすがにメイスで殴りたくはないからデンジャラス聖水で蹴散らすよ。デンジャラス神酒!
酒に溺れるがよい! ハハハ。
「ルーの能力が万能すぎる件」
「ホントよね、誰よ不遇スキルとか言ったの。神に愛された最強スキルだわ! 生活がブラックになるのがマイナスだけど!」
朝から晩まで自宅から戦場までひたすらパンを作ってるからね! ブラック、ブラあック! つらい。
とにかく帝国が攻めてきたのは間違いないのでカウンターの兵を並べておかないと。アンデッドが主体なので聖職者部隊をエルフのゼファーさんを中心に作ってもらった。セメレーナ防衛軍だよ!
「そういえばセレナ、冒険者の国クレスタールとの同盟ってどうなってるの?」
「話はハスター王子が持ちかけている。セメレーナを私たちが押さえている以上、すぐにまとまると思う」
「うちの大臣たちは動きが速いよお。頼もしいね!」
「任せて」
お、久しぶりの照れセレナです。表情は変わらないけど頬は真っ赤ですよ! 可愛いですね奥さん!
誰だよ奥さん。なんかその辺のおばさんと談笑した。ボクには人たらしの才能があるらしい。細かいこと気にしないからかなあ。
とにかくアンデッドの数が多い。どうもあちこちで起こってる戦争のせいで死体はたくさんあるみたいです。キモいよー。
「とにかく焼いていく。戦争として攻めてくる以上向こうにも治安維持や占領のために生きた人間の軍隊が少なからずいるはず。そこまで押しきる」
ボクらは圧倒的な戦力を、見せつけるだけだ!
……………………(クレモット帝国のある女将軍視点)
皇帝陛下から奪われた西の領地、セメレーナとハングリーを取り戻すように命じられた。正直に言って寝耳に水である。敵がどこか、どれほどの規模か、情報はまるでない。バカなのか?
さすがにその辺りは宰相のアンナ殿が教えてくれたが、敵は今までほとんど敗けはない。無理攻めを避けての撤退はあるが敗走と言うには被害がまるでない。これを逃げただの敗走だのと言う奴らは戦がまるで分かっていない。こんなに鮮やかな敗走があるはずもない。ただの戦略上の撤退だ。それを敵側の私が見ても分かる。
強い。カエデ女王国がこの一年ほどで勢力を大国と言えるレベルに引き上げたのは聞いている。しかしこれほどまでなのか? 有用なスキルを持った人材が山ほど集まっているのを感じる。
手を出してはいけない国だ。が、主権国家としてむざむざと降伏することもできまい。我らは帝国なのだ。
砦に入る。ここでさらに気分の悪いことが。皇帝陛下の書状を携え、陰気そうなジジイが面会に訪れた。
カジェルと名乗ったそのジジイは先陣を切ることを許されているらしい。まずは敵の戦力把握と冬でも戦えるアンデッド兵の有用さを示すのが目的らしい。
正直に言おう、私も女だ。アンデッドはキモい。
どこから集めたのか万を超える死体が砦の下を蠢いている。私泣いて逃げても許されるんじゃないだろうか。敵前逃亡は死罪だが味方前逃亡なら許される気がする。むりか。
そしてそのアンデッドの大群は、一時間を持たずに消え去った。なにしに来たお前。カジェルはニタニタ笑いながら帰っていった。なにしに来たお前。
アンデッドでは明らかに分が悪かった。燃やされ、聖水を津波のように浴びせられ、すべて消えた。……ぶっちゃけキモいから消えろ、という女性の叫びが聞こえた気がした。分かるう。
まるで役に立たないまま消えたカジェルであるが、戦端を開いてしまったのは間違いない。冬に差し掛かるゆえ敵も無理攻めはしてこないがこれだけ戦力が違うとなると普通にカウンターでこの砦くらい取るんじゃないか?
そう思ったが攻めては来ないようだ。
正直に言って皇帝のぞんざいな扱いにもアンデッドの群れにも辟易している。アンナ様は苦労なされるだろうが、正直私はカエデ女王国に降るのも悪くなくない?とか思っている。部下がついてきてくれるかなあ。そう参謀に話したら大賛成です、と笑顔で言われた。参謀の方がカエデ女王国について調べ尽くしていたらしい。
カジェルも帰ったし、軍監がいるわけでもない。信頼の置ける女兵士に書状を持たせてセメレーナに走らせた。
噂通りならカエデ女王が我々を粗末に扱うことはないだろう。……よく分からないが無類の女好きらしいし。女の子だよね?
こうして、私は一槍も交えること無くカエデ女王国に降った。
飯が腹一杯食える。夢のような国だった。降ってよかった!
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ぼちぼち書いていきます。




