帝国領、視察
ハングリー領はグラット領になっています。
冬の間にボクらの土地となった北、セメレーナ伯爵領(うちに降った時に約束していた地位を与えたよ)の視察や測量、検地をすることになったんだ。
ボクらが作業するわけではもちろんないけど、視察に入るのはとても重要だ。無条件降伏とはいえ彼らはボクらに降ったわけだから文句は言えないし、そんなひどいことなんかするわけがない。
今の大国は占領した地域から掠奪するのが常みたいなところがあるんだ。それはニターナでもそうだよ。
ぶっちゃけて言うとうちでもそうする人がいた。一回はカエデ女王国法では占領地域の掠奪を禁止していることを丁寧に説明するよ。聞かなかったらミンチにする。……不敬罪って知ってる? ボクも身内に乱暴はしたくないんだ。
ボクのパンを一週間も食べていればこの国の構造が分かる。ボクが飢えを無くしてるからこの国は成立しているんだ、もちろんそのままにしないのは先述の通りさ。新しく食料生産を進めている。
まあ食料生産に拘泥してるのはむしろセレナだけどね。うーん、ボクはセレナを信用してるよ。ミスなんてボクもいっぱいする。セレナを罰する損失の方が大きいんだよねえ。それに失敗しないんだよね、セレナ。頼もしい。
「私、失敗しないので」
「頼もしい!」
まあこのセメレーナ伯爵領の役割はクレスタール公国との貿易なんだけど。
冒険者の国、クレスタール公国。その国は帝国から独立した武力の土地。その国は北国にあるにも関わらず、魔石による結界で常春の国になっており、燃料としての魔石を得るために冒険者の活動を推奨し、保護している。
その上位冒険者のほとんどが母国、守るべき土地として集い、保護している。敵に回したらダメな国だ。帝国相手に独立しているのは伊達ではない。
そんな国に取り入ろうとしている。そのための地盤を固める意味でボクらはクレスタール公国に阿っているわけだ。……まあどちらが上かはあえて言わないんだけどね。うちをつまんない国にしたくないし。
暴力ではなくて貿易で支配するよ。
セレナは、お金を好きか嫌いかは別にして、力として分かりやすい指標にはなる、って言ってた。暴力を使わない威圧だ。つきあった方がメリットがあると確かに思えるものね。
お金もやっぱり道具なんだよね。善悪は使う人によって変わるんだ。
帝国において領地となった旧ハングリー(現在はグラット)伯爵領は防衛を固めているけど、ついでに帝国支店というか、こっちにも問屋を設けた。
クラリスさんの他にもテレポート使いの人が仕官してくれたので送りまくるよ。……ブラック度が増したよ。
うーん、いやね、定型文というか、サラダサンド、タマゴサンド、ハムサンド、ノーマルのハンバーガーのみを量産する、みたいなのはそんなに苦労はないんだけど、生産速度に運搬速度が追いつかなくなる。専門的なメニューが入ってくると逆に生産速度が下回るんだよね。……まあ商売は難しいって話だけど。
なので特殊メニューが高くなる。困ったもんだねえ。
どうせ飢えを解消できるなら美味しく解消して欲しい。
さて、セメレーナはリンゴたちが入って開拓してるのでボクらはグラット領周りを調べるよ。
グラット領は代官に入ってもらってる。ぶっちゃけニターナに攻められるとヤバイけど、逆に重要人物を置かないことで信頼を示す効果があるらしい。やっぱり専門家のモアリースト司教やハスターくんには敵わないわ。
さて、セメレーナの開発はいずれの話として、まあもういろいろ着工はしてるんだけど、現在のセメレーナを見ておきたいのとセメレーナに設けたルーフィアパン店支店でサービスしようと思ってやってきた。
最近は本店でも定番メニューの日と、ボクが新メニューを出す日で分けて、その代わり店の休日を無くする方向で動いている。ボクが死んだら全部潰れるんじゃ困るから一からボクのパンを再現する研究所を作ってある。
飢えを無くするために、小麦やお米を寒冷地に適応するように品種改良をしている。セレナによるとニーガタという寒い地方ではお米は育たなかったらしいけど、今では米所になっているらしい。それは品種改良の結果なのだとか。
塩水に種籾を沈め、沈んだものを苗床で苗にして、田んぼに埋めていく。
白米って美味しいんだよねえ。ボクはご飯だけで食べられる。お味噌汁もあるといいね。
味噌とか醤油はセレナが一所懸命研究してるよ。どこから知識を持ってきてるのか謎だけど、本当にセレナって天才なんだよね。自重してないだけとか言ってたけど、意味は分からない。
セメレーナは普通の町よりは大きい。やっぱりクレスタールとの貿易はかなり儲かってるんだね。クレスタールには海もあるし。ここにルーフィアパン店の問屋を設けたからさらに発展するだろう。ボクは一日に三千万個のパンを出す工夫に迫られたけど。
とにかく運搬してくれないと。積むだけならできるんだけどさ。今は箱に詰めて出すようにしている。紙術とかいうスキルの人がいてダンボールなる箱をたくさん作ってくれるのでそこにパンを詰めて運ばせるルーティーンができた。
これでボクは一時間早起きしてクラリスさんと一緒に問屋に通うようになった。従業員は遅番主体で朝はゴブたちにやってもらう。思った以上にゴブって働き者なんだよね。なんで自然界のゴブはあんな荒くれなのか不思議なくらい真面目。やっぱり学問は大切だね。
セメレーナには神殿もあるし、教会もいくつもあって勉強ができるようだね。
ここには病院と劇場とかの娯楽施設を用意したらいいかな。要望は目安箱で受ける。学校も一応作るけどね。
カエデ市の劇場を先日見に行ったら小さい男の子が何人も妻をめとって悪魔を倒すお話を上演してた。モデルはボクらしい。やめて?!
セメレーナは活気のある町だ。無条件降伏については町の人たちは好意的に見ている。彼らは戦わなくてもボクらが守るからね。対価に少し高い税金はもらうけど。
まあうちの高い税金が今までの半額以下だったのは笑ったけど。帝国取りすぎだわ。なので商売を始める人が増えたよ。
税金は安くすればいいというものじゃないんだよね。社会保障とか公道の整備とか、騎士団を派遣しての治安維持とか、とにかくお金がかかる。それを賄うのは税金だからね。
税金が安すぎるとかえって不安になるとか、国政を始めなかったら分からなかったことだよ。
セメレーナは服飾関係の店も道具屋や宝飾品店も多いし、豊かな町のイメージだった。
セレナはこれでも開拓のアイデアがあるらしく現地の伯爵さんにバシバシ指導してたけどね。
ほんと助かる。またデートしようね!
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