昔話(クラリス)
クラリスさんは可愛いですね!
ね……?
ルーフィアダンジョンには『ルーフィアの執務室』という部屋もある。使われてないのかというと、かなり決裁などの仕事で使われていたりするよ。
今もボクはそこで仕事をしている。判子を押すか紅茶飲んでるのがほとんどだけど。書類もしっかり読んでるが?
セレナとかモアリーストさんやハスターくんの書いた書類に不可を付けることはまず無いんだけどね。みんなボクより賢いもんね。たまに頑張って「これってどーなの」って聞くとスラスラと説明されて許可の判子を押してしまう。
彼らは不思議と意見が噛み合わないことがないんだよね。なので会議でも否決がまず出ないらしいよ。まとまった国だなあ。……パンのせいかも?
「そういや魔王国の時クラリスさんの国家運営はどんな感じだったの?」
ボクは机にごろごろしつつクラリスさんに聞いてみた。魔王の政治とか興味深いよね。あとでちょっと後悔したが。
「ん、我の時か……聞いてもつまらないが本当に聞くのか?」
「え? 聞いてみたいけど?」
ぐいぐいと攻めるボクだが、セレナはすごく嫌な予感がしていたらしい。この先は聞くな、と、ガンガン警鐘が鳴っていたと。とっても嫌な顔してた。
「まず朝起きたら五人くらい魔族を殺します」
「まてまてまって! いきなりバイオレぇンスッ!!」
魔族血気盛んすぎない?! 朝からしなないで?!
「お昼までに百くらい殺します」
「魔族いなくなっちゃううううッ!!」
バイオレンス! ブラックよりつらそう!!
「毎日増えるから大丈夫だ。一万は増える」
「そして一万死ぬのね」
「まあ病死とか別の抗争でな」
まあ死因:クラリスが一番多そうだけどね。クラリスさんに会うのは事故みたいなものだね! なんだよ死因クラリスって。
「執務をします」
「お、普通?」
「視察先で魔族を二百体から五百体」
「殺すのね?」
「だってみんな襲ってくるんだもん」
もんって……可愛いかよ! 見た目十六才だからねえ。女子高生と言うらしい。高等教育はニターナでは昔からやっていて、今はカエデ学園でも取り入れてるよ。
ニターナは貴族しか入れないけどうちは平民も入れる。ちなみに中等部もあるよ。二年生が病気になりやすいらしい。く、右目が疼く! 右腕の封印が解けたら貴様も終わりだ……! なにも起こらないんだけどね。魔眼スキルは憧れらしい。
セレナの考えはたまに分からないんだ。なんか悪役令嬢とか悪役ヒロインとか言ってた。
ボクは悪役女王さ!
そういえばこの前捕まえた山賊の子供は専門の教育施設を作って入れられた。ちなみにカエデ市犯罪率がすごく低いから一人だけ。ぼっちを味わうがよい。先生が五人くらいいる。騎士ばっかりだから逃げられないだろうね。まあ死刑でなくて良かったよ。さすがに子供を殺すのは気分悪い。
クラリスさんは襲ってきた奴はその場で死刑ですよ。ばいおれんす!
戦争が日常風景なんだ、魔王国……。子供に見える種族もいるから襲ってきたら躊躇しないらしい。この人は親殺しもしてるんだよなあ……。
人生が血塗れだったのね。
「今はパンを売ってるだけだからとても平和だ。忙しいけど」
「どーもすみませんでしたあッ!!」
ある意味で戦争よりひどいよ。休憩もお昼以外ないしお昼もないことがある。仕事は二時までだけどね。なので上がる時にまかないを食べる人が多い。ケーキで済ます人もいるね。もともと一日二食の人が多いから問題になってないけど。
労働時間四時間で週三休みなのに騎士の三倍お給料もらえたらハードでも辞めたくないよねえ。自由時間多すぎ。まあ仕事中はフルマラソン並みだけど。
その四時間プラス前後二時間で一千万個パンを作るボクは何者なんだ……。
「刺客は寝る前に多くくるんだ。疲れてると思うらしい。寝てる間は四天王が追い払っていた」
「四天王コヨリ姫以外戦闘能力低くない?」
「まあ強いと命を狙われるからな」
「前も言ってたねえ」
前の、火の四天王バーナン弱すぎ問題だ。あっさり部下に殺されたみたいだし。まあコヨリ姫にはどうあがいても勝てないよね。
「なんでコヨリ姫を四天王にしたの? 強すぎない?」
「押し掛け四天王なのだ、奴は」
「押し掛け女房的なっ?!」
なんかコヨリ姫は前から四天王の称号に憧れていたらしい。クラリスさんより年上なのだとか。思春期の病は千年経っても治らないらしい。
「そして政務なのだが」
「ノリがメルフィーナ伯爵だよ?」
ちょっと空気感が似てるけどね。勇者と魔王の真面目ボケバトルかあ……。他のとこで争おうよぉ。いや争わなくていいや。
「工事とかが進まないので現地に行くと住民が襲いかかってくる。千人くらい」
「また殺したよこの人!」
「普通に襲われたら殺すだろ?」
首をかしげるクラリスさんも可愛いけどさあ。話し合おうよぉ!
「魔族の識字率は十パーセントくらいだからな」
「教育しろお!」
原始人みたいな奴らだよ、魔族。そりゃ毎日襲われるわ。
「魔族は教会を持たないからな……教育もほとんどは家庭教師だし、貴族しか学べない……」
「なんて脳筋種族なんだ……」
そんなんじゃ警備兵とかのシステムも整ってないんだろうなぁ。法律もほとんど知られてなさそうだ。毎日戦争っていうのもあながち間違いじゃなさそう。
魔王国もこのままじゃ終わらなそうだなぁ。レグイーナンさん魔王できるのかなあ。
「まあレグは四天王よりは強いからな。新しい四天王も募るだろうし」
「全員貴族だよねえ。なんか四天王が弱いの分かる気がするわ」
喧嘩なんてほとんどしないんだろうなあ。魔王様は殺しすぎだけど。
「そういえばなんでお父さん殺しちゃったのさ? 奥さん人間だったのになんで戦争を?」
「かあさまを殺そうとしていたのは人間ばかりだったからなあ。不思議な人だった。魔族には愛されていたな。言葉が分からない魔族にすら」
ずいぶんと愛されキャラだったみたいだね。聖女だしなあ。
「とうさまも人間の首脳の腐ったのを殺したかったらしいが、戦争となると一般兵や騎士から死ぬ。腐った奴らは喜ぶだけだ。口減らしができて武器が売れるからな」
「それで意見の不一致ね」
「……そうなる」
悲しいすれ違いだね。お父さんは愛深きゆえに許せなかった、盲目になってしまったんだね。そして戦争を始めると簡単には止められなくなる。
「カエデ女王国から全ては変わる。信頼しているぞ」
期待されるのはもう仕方がないよね。一年で大国を作っちゃったんだから。
「まあ、平和もついでに目指しますかね」
そして、飢えのない明日を。
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