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セレナ:ルーに会うために

 みんなが大好きな、炎しか使えないセレナのターンですよ!




 城では執拗なセクハラがあることが予想されたので現状の確認と能力の強化のために色々と素早く動くことにした。


 まず、王族に発言できる人、王族とカリン教教会の上位の神官で、そのうち、司教様と話してみた。


 名前はロクセト=モアリースト。名前からしてどうも帝国より北の国、クレスタールから来た人らしいが、かなり王家に顔が利くらしく、王に直言しているところも見た。


 裏はあるかも知れないが、今は利用させてもらう。基本的に今の王家と教会は信用していない。


「モアリースト司教、話を聞いていただけませんか」


「おや、貴女は炎術スキルの方……フランベルジュ殿ですね? いいスキルを賜りましたね」


 ふむ、原典派っぽい。これだけで信用はしないけど。


「よいですが、個室はよろしくないでしょう。中庭に行きますか」


 女性とは同じ部屋に二人きりでは入らない。こちらの貞操の心配もあるが聖職者ゆえ生臭と思われるのを嫌ったか。どちらにしろグレーな言葉。下心はない、今は、か、聖職者の立場にしか興味ない、か。純粋な心配は半分あればいい方か。だからグレー。


「風スキルの盗聴は?」


 ここは盗聴でも聞こえないように小声で聞くしかない。拡声できると困るが。ランクが上がれば音すら焼けるんだろうか?


「我々のように怪しい坊主は盗聴防止魔道具を持っておりますので」


 モアリースト司教はおもむろにそれを取り出した。怪しんでいいと。確かに企みはあると。そしてその今見せた盗聴防止魔道具は確かに本物で、すでにオンにされている。食えない。中庭に移動する。


「オフに。……なかなかにいい天気。風も気持ちいい」


 魔力使用反応なし。魔法の盗聴はない、が、オープンスペースなら読唇は可能。聞き耳系スキルならこちらが分からない可能性もある。これは気をつけるしかない。


「ほっほっ、じじいになると日向ぼっこが恋しくなりましてな。わざわざお付き合い有り難い。……オンにしましたぞ」


 ひとつ頷いて返す。周りから見ている者がいればじじいを否定せず頷いたように見えるだろう。不敬だ、謀略を練る知恵などないただのバカな小娘だ、と、見ているものがいれば思うだろう。だといいな。


「聖女様は日和が暖かくなれば外に出たいと」


「ほほう、なにゆえですかな?」


「貧しい人を探し(・・・・)救いの旅をしたいと。外が恋しいのもあるようで」


 人を救う旅、を人を探し救う、と言い換える。伝わっているはずだ。じじいめ口角が少し上がってる。わざわざこちらからは見え、向こうが他者からは影になるような計算までしている。そして乗ってきたということだ。ちなみに外に恋しい人がいる、まで読んでると見た。できれば城の虫除け頼む。


「それならば、急ぎたいと思うかも知れませんが暖かくなってから、私もご一緒しましょう。なに、仮にも司教たる私が見張りに、おっと、同行すると言えば否やとも言えますまい」


 このセリフ、聞かせてる。……タヌキめ。どこから盗聴防止を切った。いや、私ならミスがないと踏んだか。過信するなら貴方の女神様だけにして欲しい。はっきりと外に行くという目的は伝わってしまった、が、悪くはないという判断か。暖かくなってから、も、その時期にこのじじいに予定があるんだな? 見張りなどと、わざといい間違えたのは私がよりバカに見せられるようにだと踏んだ。読まれ切ってる。


「とても助かります。それまでは彼女の従者としてみっちりと鍛えることにします」


「それがよい。ならば遊んでいる暇はありませんな、聖女様もですな」


 みっちりと修行させる、と予定を入れてしまえば王族も下手に手は出せない。男爵家の子女でも扱いを悪くすれば貴族全体の不信感を買うのもある、その上で私たちは遊びに来たのではない、と示せば問題は起こらないだろう、という読みだろうか。あと、私が聖女様を彼女に言い換えたのもバレてるしこれも、爺さんは暗にたしなめている、通じないこの娘はバカ、と見せるため。私の方は聖女を彼女と言い換えたのはアイリスを聖女にしない意思表明だ。


 それにしてもこの司教はそれほど重要人物か。聖女を連れまわせる立場の人間などそうはいまい。


 なんにせよ分かったことがある。このじじいがタヌキだと分かったのが一番だが司教がタヌキじゃない方がおかしいのでこれは予測通り。次にこの爺さん最初から城を出る予定でこちらを利用する気なのだ。タイミングが良かったということもあるか。あと、この爺さんは聖女を必要としてはいないらしい。謀略に巻き込みたくないのか、この爺さんの謀略なのか。恐らくは両方だ。新聖書の宣伝役は要らない、彼女がそんなものになるのは可哀想だ、と。


 こちらにも都合がいいし最初から利用する気だったのはこちらだ。ここは仕方がないところ。どのみち外に連れだせば炎術で「敵のみを焼け」と命じれば監視も焼けるしこの爺さんも敵なら焼ける。


 こちらのスキルは把握されているのでもしかしたら未知の対応策を講じられる可能性はある、が、どのみち聖女巡業となれば命は守られる。


 いや、ルーなら「原典で言われる通りに修練した者の女神様のスキルが妨害されるはずがないよ。自信もって行こう」などと言うに決まってる。あの娘は本当に原典とスキルのオタクだから。


「くすっ」


「おや、なにかありましたかな?」


 私はこの場では策など練れないバカな女なのだ。これでいい。


「私も彼女と同じく、外が恋しいのです」


 彼女と同じ人が恋しいのです。


「はっはっは、相手が人なら焼きもちを焼かれますなあ」


 うげ、読まれた。


 まったく、タヌキ爺さんめ、これは八割くらいは信用できる。裏でなにをするかは知らないが、お互い利用しあう関係は、むしろ健全か。


 次は訓練だな。


「最後に良い息抜きができましたわ。それでは訓練に行ってまいります」


「どうか思慮深き貴女に女神カリン様のいと深き寵愛といと強いご加護がなにとぞありますように、謹んでお祈りいたします」


「有り難うございます」


 警戒を怠るなってことね。それは、長い別れの文言、だ。軽い別れなら「女神様のご加護を」でいい。わざとここで使わない言葉で注意を促してきたんだ。タヌキめ。




 訓練。渋るアイリスの首根っこを猫のように……掴みあげようとしたらレベルが足りず引きずることになった、が、とにかく連れてきた。


「春に巡業があるかもしれない。鍛える。女神に会えるかもしれない」


「はあ? 女神になんか会いたくないわよ。巡業? やだやだ、鍛えたくもない。城で遊ぶ~」


 これが本物のバカです、みなさん。春の巡業で抜け出して貴女の女神のルーに会えるかもしれない、が伝わらない! おバカ!


 本気で鍛えてもらわないと困るし、監視役にルーのことを絶対知られるわけにはいかない。必ず足がつく。だから隠してるのに。


「貴女が唯一無二絶対と信じてる女神に会えるのよ?」


「…………?」


 さすがにつきあいが長い、眉と口が一杯に曲がってるけど、勘づいたか。だけど答えまでたどりつけるか。


「うそお、あの(・・)女神様に会えるの?!」


「そうよ、やる気になった?」


「もちろーん! やるやる~! 女神様に会えても誰にも教えないんだから! ハアッ!!」


 え、なにこの娘。ルーのことになったとたんに完全に気づいたしなにその術の出力。攻撃術の光術使ってるし、かもしれないって言った理由まで見抜いて追っ手が来たら殺す気ね?!


 ルーが喜ぶのはたぶん治癒術や盾になる結界術よ?


「女神様は治癒術や結界術を望むと思う。私もいる」


「そっかそっか。そうだよね!」


 なんという物分かりの良さ。お、恐ろしい。恋する乙女が全次元一恐ろしいと知った。まあ殺すのは私がやる、アイリスの罪は減らす、という私の気持ちは伝わらなかったらしい。


 私もルーに会うために、頑張ろう。


「炎術:追跡火球!」


「ハアアアッ!!」


 無詠唱はすごいけどタイミングを仲間に知らせるために詠唱省略でも術の名前は言いなさい!




 ちなみに三バカはさっそくメイドの可愛い娘を集めて宴会じみたことをしている。城で目につく使用人がほとんど伯爵家子女以上なのを知らないらしい。怖い話だ。あいつらは放置で良いだろう。……鮮やかに自滅するものだな。






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[良い点] セレナさんは頭も使える! こういう『きつねとたぬき』なターンも大好きです。 司教様もついてくるのか……どんな旅になるのやら。 なんだか珍道中になりそうで楽しみです!
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