リンゴ:魔王
今日も朝夕の二回更新になります。明日からは一回の予定です。
我が魔王を名乗っているのはルーフィアを守る覚悟を示すためである。よって殺しはルーフィアのかわりに我がやる。ルーの心が痛むのを見ておれんからな。
今回はかあさまの部隊の副長だが、そのうち一軍を率いれる将となりたいものであるな。
現在村を襲っている精霊兵や悪魔たちを駆逐して回るのが我らが任務である。村は破棄させ、拠点の町へと送り込む。町の名前も決めねばなるまいな。
村をまたひとつ発見。やはり掠奪にあっておる。許せぬのだ。この時期に一気に掠奪に走るということはこやつらはハングリー伯爵と繋がっている可能性が高いのであろうな。
「そこまでである! 土術:土筍砲!」
「ぐばっはあああッ!?」
デーモンくらいは雑魚である。我が露払いをしてやろう。どうやら奥に大物が潜んでいるようであるが……かあさまが負けるはずがない。
魔王、それは並みの魔物一万体でも捻り潰す最強の存在。そうでなければ魔王などと恥ずかしくて名乗れぬ。我はプレッシャーを己に課すために名乗っておるがな。
「土術:ゴーレム作成:ストーンゴーレム!」
地面に手を当てて地下深く、硬い天然石のゴーレムを数体産み出す。土術のポイントは強固であり、重いことだ。炎術や風術とは戦い方が違う。殲滅より一騎討ち。いかなる攻撃も防御も重さで叩き潰すのだ。
「さて、我も行くか」
かあさまが動くとだいたい一瞬で終わるからな。四天王クラスでもひと撫ですれば消え去るのみ。
「光術:選択、前方四十体:追尾閃光斬」
「ほら、終わったのだ」
前方に蛍のような光が複数浮かんだと思うと、そこから糸のように細い光が走り、文字通り光速で敵を切り裂いていく。かあさまはでたらめに強すぎるのだ。我が魔王を名乗るのはまだまだ早い。これは覚悟の問題であるが。
ゴーレムによる制圧域の拡張により村の安全を確保する。どちらかと言えば我やアイリスは防御偏向型の戦闘スタイルだ。セレナやかあさまのような派手な戦い方はできぬ。
しかし確実に制圧していく。デーモンの攻撃くらいでは天然石は砕けも、ましてや溶けもせぬ。そしてこちらから殴れぱぺしゃんこである。ルーほど強くはないが。
ルーのあのサイズであの破壊力は本気でヤバい。うちのゴーレムどころかミスリルゴーレムでもスクラップにしそうである。
ゴーレム作成はビビの専売特許なので我は全方面で中途半端であるな。ちなみに土術には回復術もある。
「土術:地竜剣!」
土術で作り上げた大剣を振り回す。これの良いところは土壁とかなら貫通できるし砕けても一瞬で再生するところか。
「くそ、あのチビ強いぞ!」
「一斉にかかれ!」
「ぐわあああっ!!」
我も魔族である。基礎的な身体能力はルーにも匹敵する。そう言えばルーの攻撃スタイルは殲滅にも使える。なんかずるいのだ。我もメテオは使えるが味方も巻き込むから使い勝手が悪い。破壊力は負けぬのだが……。
もうひとつある奥の手も反動がキツい。城を焼き尽くすような戦いはできるのだが一対一がほとんど。防御力と膂力任せの殴り合いだ。まあ土の精霊でコートしている我の肌に傷などつかぬがな。
「おりゃりゃあ!!」
「ぐぼあっ!?」
頭を重さに任せてかち割っていく。我の武器は重さよ。体も土の精霊で大地に縛り付ける。これはルーにも真似できんからな。
「ほりゃあっ!」
「ぎゃぶっ!!」
どんどん叩き潰し、薙ぎ払っていく。一対一なら負けるわけにはいかぬ。……ルーやかあさまには勝てんが?
ルーのパンメテオ:大陸崩壊砲のアイデアでメテオを転がしてみるのもいいか。なんでもやってみねばならぬ。クリスタル製の新製品作って売りまくるかな。レベルをルー並みにあげるのだ! いつの間にか抜かれて離されておるし!
「魔族はレベルが上がりづらいからな。優秀な種族なのだが」
その優秀な種族の四天王が機能しておらぬ。人族は成長が速い。お母様は何百年生きておったかな……。それでもルーに追いつかれそうなのだ。ただ最近問屋の仕事でレベルが上がりまくっておるらしいが。商売でレベルを上げる魔王ってなんなのだ。
「おっと、アークデーモンとやらを見つけたのだ。我も少し戦ってみたい」
「ピンチになったら助ける」
魔族の文献には悪魔との戦争の歴史が刻まれておる。はるか昔のことではあるが魔族は長生きゆえ、情報が残っておるのだ。
それによると上位悪魔は大規模な攻撃魔法により破壊能力に優れ、物理は貫通しダメージは通らず、魔法も高い抵抗力を見せる。
反面体力は低く、あまり動き回ることもない。防御に絶対的な自信があるゆえに。死をもたらすような魔法も得意だが魔力が拮抗していれば抵抗は容易い。テレポートなどを戦術に組み込むものも多い。
見かけが魔族に近いために魔族と偽って亜人や人族を襲い、魔族を戦争に叩き込むことが多かったため、世界中で悪魔と魔族が別のものであるということはしっかりと伝えられているそうだ。魔族はいい災難であるな。
だからまあ、魔族の悪魔嫌いは筋金入りなのである。我はルーの道を妨げるものを殺す。そのための魔王である。
土の大剣にルーフィア特製上級聖水を染み込ませる。……酒の匂いがするが、これ本当に大丈夫か?
「ふん、魔族の小娘が。お前たちなど我らがおもちゃになっておればいいものを」
「戦場で無駄にしゃべるのはバカと決まっておる。ふんっ!!」
「ギャ?!」
とまどっておるな。……効いてよかったのだ。でもこれ絶対聖水じゃない。かあさま、聖水飲まないで。かあさまにもルーが渡していたらしい。美味しそうだ。
「これは神酒だな。うまい」
「……やっぱりか」
「き、き、き、」
「もんきー?」
「うきゃっきゃー!!」
「猿だ、かあさま、猿がおるぞ」
「可愛くないな。殺そう」
ざんこく! かあさまはさすが魔王である。
「まあここで仕留めるのだ。覚悟!!」
「お、おのれ!」
これでも四天王なら変身が必要になる程度には強いか。我もしばらくぶりなので変身してみるか。全身の魔力を圧縮し、周辺魔力を一気に引き込み、自分の魔力紋を刻みつけて術式化する。簡単に言えば自然の魔力を自分の支配下に置くのだ。それにより我の目は白目まで赤くなり、角は上に立ち上がり、牙が伸びる。爪も伸びて頑丈になり、魔力が体に紋様となって現れる。
我の第二形態、チギリ姫。全身に渦巻く魔力が物理攻撃に魔法の特性を加え、万能攻撃に至る。
「この姿を見た以上は逃げられぬと思え」
「……くっ! バカな、魔族の限界を超えて……」
「我は魔王である。跪け」
軽く右フックで爪を立てて引っ掻く。顔が五つに割れた。
「あばっ?!」
弱くないか? まあ第三形態はいらんな。
「強くなったな、リンゴ」
「ルーほどではない」
なんとか傷を修復したアークデーモンを観察する。さすがにタフだな。回復力も尋常ではない。生物には真似できまい。だが、弱い。大剣を構え、現在の魔力を注ぎ込み強度を高める。
「では、逝くがよい」
「ち、ち、ち、ちくしょおおおおおお!!」
「土術:大剣舞闘法:剣崩し」
上空に舞い上がり千を超える剣の群れを幻視するような高速の突きを雨のように叩き込む。あっという間にデーモンはミンチになった。
「ミンチよりひどいまであるな」
「うむ、討伐完了であるな!」
終わったのであとは部下に任せて、我らはルーと合流するのである。イチャイチャするのだあ!!
「え、誰?」
変身を解くのを忘れていたのである。引かないで。
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リンゴ強い。




