ルーフィアの力、そしてニターナと帝国の激戦
三話更新の三話目になります。皆さんのお陰でなんとか頑張れています。有り難う御座います!
ボクは虎男に瞬時に詰め寄ると襟首を掴み、
「やるんなら外でやれ!!」
風魔法をかけて一投、西のエルエーナ山脈の崖にまで大遠投した。距離? 五キロくらいかな? 地面が柔らかいから思わず足下に堅パン出したよ。
壁に見事にめり込む虎男。なんで分かったかって? ボクも追いかけてジャンプしたからだよ。風の魔術で飛んだようなものだけど。
「いつまで寝てんだ。雷魔法:雷球」
「グガガガガ?!」
「おら、起きろ。てめえどこのモンだ?」
「俺は……」
「興味なかったわ」
ガツン、と沈めるような顔面パンチ。いてて。石頭め。しかしコイツ、頑丈だな。まだ起きてきたぞ。
「な、なんでだ、四天王には通用したのに……」
「四天王じゃリンゴにもボクにも勝てないからねえ」
「それにしたって隔絶しすぎだろ……」
ぶつぶつよくしゃべる。回復の時間稼ぎなのがみえみえだ。ボクはメイスを背中から抜いた。
「おらあっ!!」
「グボアッ!?」
ボゴン、とまた山の地形変わっちゃうなぁ。叩きつけた。虎男は回復して突撃してきてボクはカウンター。十回くらいかな。なかなか折れないね。
こういう輩は歯向かえなくなるまで心をへし折らないと。さすがに四天王レベルはヤバい。
「……なんでだ……なんでだ……」
「にゃんでだろうね? にゃんにゃん!」
「俺は、猫じゃ、ねぇぐぼあっ!?」
もういっぱあつ。そろそろトンネル開通するぞ。しないけど。
「猫だったら良かったねえ?」
「ねこじゃにゃあああっ!!」
「猫だ!?」
どごん。うーん飽きてきた。攻撃のレベル上げるかなぁ。殺さないレベルで。泳がせときたいんだけど戦闘されるのも困る。
「今は一割くらいだけど何割までなら生き残れそう?」
「ば、馬鹿な、一割?!」
「君を投げただろ?」
「あ、あれは風魔法じゃ……」
「風魔法は空気抵抗をなくすための補助だねえ」
「腕力で投げたってのか……? 二百キロある俺を……?」
やっと脚がガクガク震えだした。無駄に心がタフなヤツは折ってしまえば立ち直れない。
「二割いくぞ~」
「ま、待て……!」
「おっらあっ!!」
ドゴオオォン、と、さすがに二倍だと威力がけた違いだね。土ぼこりが空まで上がる。これ十割出すと地形変わるなあ。……コヨリ姫のブレスって殴り返せないかな?
「ゲホッ、けほっ……」
「あらあら、一発であちこちヒシャゲちゃってまあ。大丈夫?」
「……ひ、ひいいぃぃぃ……」
「折れるにはまだ早いかなあ? おっらあっ!!」
ドゴオオォン、って、一発一発の威力が半端じゃないよね。これ上から下に殴ったらボク空に飛んでっちゃうよね。横か下からか正面から殴るくらいしか攻撃できないね。十分だけど。
「あが……げぷぅ……、ひっ、ひっ、ひっ……」
「二発で終わりかあ。二割は封印かなあ」
対一の戦闘じゃやりすぎ感あるわぁ。
『……レッドさん、退きなさい』
「ブレアくんお久しぶり~」
『ルーフィア殿、手加減してくれてもいいんですぞぉ~!』
「知らん」
とりあえずボロボロに心が折れた虎男の前でコーラを飲む。コップは携帯している。ゆらりと立ち上がった虎男はゆっくりと帰っていく。途中エルフらしき女?が現れてテレポートで連れ帰ったようだ。
あそこまでバキバキに心を折ったら引きこもるかもね。ちなみに虎男には精霊虫を着けてある。まあ攻め込む気あんまり無いんだよね。あいつらすぐ逃げるから。いろいろ片付けてからだ。
そしてソックセン城に帰還する。ワンジャンプだけど。足下に人がいなくて良かったわ。風魔法でコントロールするけど。
まあこれが今のボクの力だね。さあ、配給を再開しようかな。ちなみにニターナ主力は本丸に向かって進んでいる。ミドリちゃんたちゴリラチームは配給に加わり市民たちを綺麗にしていく。浄化もお手の物!
なんでもニターナ主力軍が本丸に着いたらソックセン伯爵は市民に捕らえられていたらしい。後で一発股間蹴飛ばしてこようっと。
「はーい、野郎ども、飲みたかったらパンを配れ~」
『イエス、マム!』
「素直~」
テーブルを何台も出して流れるようにパンを積む。全員後ろに物資を回していく。全員に十分な量が行き渡ればいいけど。問屋でもテーブルをいくつも用意して積んでいく方法を使ってるけど量がすごく多いから運び手がすごい人数になってる。積み上げた端から馬車に積み込まれて精算、その流れが完璧にできてるから一日に一千万さばけるんだ。
いや、さすがに限界だからね? クラリスさんが差配してくれてるけどあの人は頭も良いからね。時々変なことするけど。一応王様だし世間知らずなのはあるね。
「フルーツジュースも配るよ~。子供から回してあげて~。大人もそろそろ飲みたいか? じゃあ配れ~」
「ルー、こっちを手伝いに来たのだ」
「リンゴよろしく~」
どうやら北の本丸、ニターナ軍が接収を完了したようだ。代官が置かれて、統治が始まるらしい。激戦だったな~。一方的に蹂躙した気もする。うちも被害出たからなあ。虎男はヤバかった。ゴブにかなり死者が出てる。灰になったら蘇生もできない。
あんなのがこれからはどんどん出てくるんだろうな。気を引き締めなきゃ。目から汗が出るよ。
………………(ニターナ女王テルナ視点)
ソックセン城城攻めはカエデ女王国軍からの吶喊で始まる。最初の一撃であるエンシェントドラゴン、コヨリ姫の威容に多くの者は恐れをなしたが、それが味方だと知る者たちは逆に顔を輝かせた。私は輝かせていたと思う。
「陛下、お顔がだらしないですわよ」
「うへへ、あれ味方なんだぜ」
「確かに頼もしきお姿」
子供の頃から私に仕えている補佐官のメイサは気心の知れる唯一の相手だ。もう一人侍女がいたのだが、先立たれてしまった。彼女の残した二人の子らがカエデ女王国を支え、いずれニターナを飲み込んでくれるなら、それはそれで勝利だ。
ニターナ王国の最後の役目はカエデ女王国を支え、最後には上手に負けること。
「ハングリー伯爵の、帝国の動きはどうだ。動きそうか」
「すぐにでも出陣する体勢を整えています。本陣はすでに北八キロほど、北ソックセン平原に構えております。迎え撃ちますか?」
「当然だ。今回もうちが主戦として動くがカエデ女王国にも援軍の要請を」
「直ちに」
一国の軍が一伯爵の軍に、精霊兵だらけとは言え後れを取るわけにはいかぬ。カエデ女王への援軍要請は無視をしていないという宣言のようなものだ。彼女たちをこれ以上前線には送れぬ。
私は昔からこういうのが好きなんだが、だから息子たちがいじけた気はしている。しかし私のスキルは『軍神』だ。これはもう性格と言う他に無い。女神様は絶対その人の望むところにスキルを与えてる気がする。不平を言う者もいないではないが、そういう奴らのスキルランクは推して知るべしだ。
鍛えればすべてのスキルは神に通じると言われている。ほんの一ランクを上げるだけで世界は変わるのだ。
「さて、むこうさんも準備ができたことであろう。魔法兵、砲撃準備!!」
陣形はすでに完成している。軍神スキルにより末端まで指示がよく届く。最近はルーフィアのパンで精度がはね上がっている。もはやひとつの生命体だ。
敵方は一気に攻め入ってくるがギリギリまで耐える。八キロも走って戦えるか、阿呆が。敵はギリギリまで攻めてくるが、鍛えていない農民兵はすでにクタクタの有り様だ。
「構えよ! ってー!!」
ドガガガガガ、と細かい魔法が飛び交う。雑魚はこれで、一掃だ。
「大型魔法、準備!!」
「大型魔法兵、ターゲッティング!」
「準備できました!」
「エリクサー補給隊、待機!」
「構えぇ、ってええええ!!」
私の合図で上からはメテオ、下からは大津波と火山爆破。精霊兵たちが突出していたところへと殺到する。多くの敵が潰され、流され、焼かれていく。
「どうだ、ルーフィアだけではないぞ!」
「ふふ、誠に我が軍は精強ですわね」
大地を揺るがす戦闘は続く。
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普段は淑女なのに戦争となるとハッスルしちゃうテルナ様可愛い。




