ソックセン入城
三話更新の二話目です。
戦争中はコント少ないです。
いや、コントがメインじゃないですけど。
今日は女王様に呼ばれてソックセン攻め、詰めの会議となるよ。ボク戦いは嫌いだけど物語みたいでワクワクしてたのは間違いない。勝って兜の緒を締めようってセレナが言ってたから緊張して挑まないとね。兜の緒ってなに? ヘルメットのベルトのことかな?
このヘルメットはセレナ考案だけど丈夫なのに軽いから一般兵にも回せて大人気なんだよね。騎士が被るヘルムは全部覆っちゃうから重いし動きが悪くなるけどこれは帽子の延長みたいな感じ。動きやすいからボクも着けてるよ。
さて、テーブルで肩を揺らして待っていると女王陛下が入ってきた。立ち上がろうとする臣下を片手で押さえてボクのところに来た。ボクらは対等な関係になってるからね。
さすがにボクの戦果を知ってる人は微笑ましそうに見てるけど、知らない人や貴族主義な人は忌々しげだ。
パンを一個出して思いっきり窓から山に投げつける。キュイン、とも、チュン、とも聞こえる音のあと、ドゴオォォォォ…………という音が外から聞こえ、貴族たちは慌ててそちらの窓から外を覗いた。山は無くなっちゃったよ。人が居なかったらいいけどね。
「うんうん、いいパフォーマンスだな。愛しい人よ」
「あれえ? いつそんな関係になったかなあ?」
「我らはもはや盟友よ。さあ、始めようではないか」
まだまだ騒がしいけど会議は始まった。ボクがくちばしを挟んだらいい気はしないだろうから話だけ聞いて、疑問に思うことは参謀のセレナやモアリースト司教、ハスターくんに聞く。アイリスは、ね、寝てる! 起きろや。のんきちゃんか。
会議の内容はソックセン本城を攻めた際の攻め口や、撤退のライン引き、攻め落とした場合の報奨等の問題、うちとの同盟についても触れたよ。ボクはほとんど話を聴きながら資料を見るだけ。セレナやハスターくんはいくらか話に混ざっているみたいだね。
本城は一番落とせるのがうちだからまず城門を遠距離から破壊する。相手が土術等で回復する前に撹乱するように大火力を投げ込み続け、敵方が沈黙したところでまずは魔物たちを飛び込ませる。威圧のためだ。そして速やかに東門を内から攻め、開門させる。騎士団が飛び込みソックセン本丸を落とし、そのままニターナ王家直轄領として自治活動を始める。ボクらは北門を落とし、門に外付けの砦に乗り込んでそこで帝国を見張る。
会議はそんな風にまとまったよ。
そして翌日、実戦当日。
昨日の内からボクのパンを支給して軽くお酒も振る舞って、兵たちは士気が高い。酔いつぶれてるようなヤツは首だ。一般兵なら追放程度だけど隊長レベルなら物理で首が飛ぶね。今回は珍しくどちらも無かったけど。
「ルーフィアのパンの力なのか、指揮が末端までよく伝わるのだ」
「陛下、騎士の格好似合うね。可愛い」
「そうか、嬉しいぞ」
この人本当に若いよな。まあ十才くらい若返る薬を贈ったことはあるけど。この薬骨格には作用しないからいくら飲んでも十六から十八才くらいまでしか若返らないんだよね。怖いから封印してる。ムバウばあちゃんは進化しなかったら与える。
「それじゃボクは自陣に帰るね」
「ああ、開戦はフランベルジュ卿セレナ殿の花火が合図だな」
「うん、よろしくね!」
「武運を!」
よーし、いよいよソックセン本城攻めだ!
ボクはカエデ女王国軍本陣に置かれた椅子にどっかと腰をかける。いつも前線だから珍しいね。
「セレナ、作戦概要」
「まずはコヨリ姫による水平射撃で城壁、城門を消し飛ばします」
「終わってない?!」
「まあ町まで吹き飛ばせませんから威力調節の関係で少し時間がかかります。その後ゴブ吉たち制圧部隊が本城内に突撃。風のウィレィノーストにより水のリナレア、土のビビを運ばせ三人はそのまま現地で指示出し。四天王は魔物たちにも人気が高いので士気も上がることでしょう」
「いいねえ、戦争っぽい」
「嫌いなのでは?」
「人が死ぬのは嫌いだけどね」
戦争は好きじゃないけど軍略は面白いよね。特に人の解説聞いてると楽しくなるよね。
「その後は北上した後、東門を目指します。ちなみに掠奪は許可していませんが……」
「問題が?」
「ゴブリンたちが自ら綱紀粛正を徹底しているようです」
「ゴブリンってなんだっけ?」
不潔で村を襲ったり子供を拐ったり女の子を襲ったりではなかったかな?
うちのゴブは風呂好き清潔で子供に人気があり女の子に求婚されて困ってるってメスゴブリンが泣きついてきたり……あれえ?
うちにおかしくないところなどどこにもなかったよ!
ドゴオォォォォ……という音で現実に引き戻された。コヨリ姫による水平射撃が行われたようだ。ちなみに前線司令官はクラリスさん。実質魔王軍。こういう時なんて言うんだっけ、セレナ。
「なーむー」
「なーむー」
意味は絶対的な信仰だってさ。ようするにお祈りするからボクにはしないでね、みたいな感じ? え、違う?
そのまま魔法が降り注ぐ。ゴブリンメイジ部隊だ。戦争で幾度も前線で使ってるカエデ女王国軍魔物部隊は進化しまくってる。精霊兵を蹴散らしてきた軍隊だぜ。弱いわけがない。
「この後は突撃か。みんな、命を大事に!」
『命を大事に!』
「全軍、とつげええぇえきッ!!」
『ウオオオオォオオオオオオオオオオオオッッ!!!』
カエデ女王国軍全軍、魔物部隊、騎士三軍、ボクらも雪崩れ込む。およそ全兵士の三割、一万近い軍団だ。怖かろう。そのまま全軍で東門へボクは後方部隊と残る。ついにソックセン入城っ、と。
掠奪は禁止したが逆に城壁や壁の修復を後方支援部隊がやっている。うちの物資ほぼ無尽蔵だしな。怪我をした市民たちには治療とサンドイッチやジュースの配布を行っていく。善政を意識してもらおう。
一般市民は攻撃も掠奪もされないのでポカンとしている。後方支援部隊が配給を始めると中央通りが人で溢れた。ボクはその場で出張ルーフィアパン店だ。
「ありがたや……」
「カエデ女王様が仁君とは聞いていたが……」
「うまい! お母さんうまいよこれ!」
「さ、酒とかも飲める感じ?」
「飲みすぎるんじゃないよ?」
ビールも出してやろう。酒が飲めると聞いておっさんたち全員大はしゃぎだ。樽を待ってこさせて全部一回で満たす。
「飲むのはいいけど働きな。パンを配れ、後ろにも」
『よっしゃあああ!!』
よほど困窮していたのかみんな涙を流しながらサンドイッチを食べている。ボクはテーブルにどんどんパンを山積みにし、市民たちが協力してそれを最後尾まで運んでいく。スラムから出てくる人たちにも邪険にせず、サンドイッチやハンバーガーが配られる。いきなり食べても神のスキルは胃にも優しい。
皆が満たされ、ボクも満足してきたところで東門で爆炎が上がった。
「陛下、ウィレィノースト様が重傷です!」
「なに?!」
ボクはその場を蹴って東に向かう。一旦群衆から離れ、次の一飛びで町を飛び越える。
余談だが配給を止められたソックセン市民は臨時ルーフィア軍を名乗って本丸に襲いかかったらしい。子供から年寄りから奴隷からスラムのヤクザ者まで。
「ウィリーちゃんは?」
「エリクサーありますから全快です。今はビビ様が即席ゴーレムで戦っています。リナレア様も負傷、治療中です!」
「んのやろお……」
ボクがこれほど怒るのは初めてかも知れないね。潰す!
ビビさんが向こうに回しているのは、真っ赤に燃え上がる虎の男だ。地獄ででも修行してきたんか。
ぶっ飛ばす!!
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しばらくは戦争戦争です。応援よろしくお願いいたします! セレナはちょっと気取ってます。




