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スキル授与の日

皆さんの応援が私のエネルギーになります! よろしくお願いします!



 あちこちから白い煙が上がる。炭になった家の柱が音を立てて崩れ落ちた。春が近いとは言え、かなり寒い日だったと思う。


 十年前のことだ。焼け野原になった故郷のカエデ村で、母親とはぐれ一人絶望して泣いていた時、薄いオレンジ色でエリの白いコートをぴっちりと着たお姉さんに、古い聖書、原典をもらった。


 お姉さんはやはり薄いオレンジと白のフードをかぶりコートのエリを立てていたから顔はほとんど分からなかったけど、銀髪にアメジストの瞳が覗いて、綺麗だなって思った。


 お姉さんはこう言った。「貴女が十年後に得るスキルは少し奇妙なものだけど、成長さえさせれば無類のチートスキルになる。頑張って」って。




 今日になって夢に見て、それを思い出した。ボク、ルーフィアもついに15の春を迎えた。


 この星では十五才になれば誰でもスキルをもらえる。昔、魔物に追い詰められた人類をあわれんで、女神様がスキルをくださるようになったらしい。


 古い聖書にはこう書いてある。


 スキルは平等であり、貴賤は無い。スキルは人格を現すものではない。スキルを育てることで神の救いがある。スキルは神である私より与えるものである。


 力あるスキルほど世を欺く名を持つ。強い名のスキルほど修練を要する。よって全てのスキルは均される。たゆまぬ修練を望む。


 なぜか後半の部分は新しい聖書では削除されてる。教会で色々教わったけれど新しい聖書はボクは好きじゃない。


 その事は今はいいだろう。今日ボクは、ボクたちの世代は、いよいよ女神様にスキルをもらえるんだから。


 ボクの家は昔から貧乏だ。冒険者だというお父さんには一度も会ったことがない。カエデ村が焼けてからおばあちゃんのいるここ、コノンの町に来たけれど、おばあちゃんも貧しくて、ボクらが来てから数年で、餓えて抵抗力がなくなったところで風邪をひいて亡くなってしまった。


 お母さんも去年、同じ死因で亡くなり、ボクは一人になった。二人ともボクにはしっかりご飯をくれたからボクは餓えなくてすんだ。けど、きっと二人とも無理をしてたんだ。結果ボクみたいな子だけ残って、申し訳なく思う。そういったら友達に怒られたけど。


 この町に来た頃はボクは男の子のふりをしていたので、逆にいじめを受けたりもしたけども、友達もいるので平気だ。可愛い女の子二人組。偶然にも同い年だから、今日一緒にスキルをもらうんだ。


 季節は春だし、きっと良い芽吹きがある。そう信じたいな。


「ルーフィア、そろそろ時間だわよ。今日は良いスキルをもらえると良いわね?」


「ルー、支度は?」


「できてるよ、もうちょっと待ってね」


 アイリス=フェイルノートとセレナ=フランベルジュ。アイリスはおしゃべりな女の子でセレナは身長が高い無口な女の子だ。二人は一見相性が悪そうだけど不思議とすごく仲が良い。その間にボクも入れてもらってる。


 今日もらえるスキル次第でボクはこの町を出ていくつもりだから少し申し訳なく感じる。


 おばあちゃんやお母さんが亡くなったこの町にいるのが少し辛いから、カエデ村に帰ろうかと思っている。いじめっ子もいるしね。ボクが女の子だって分かったら急にいじめられなくなったけど。146センチのチビなのは変わらないのになんでかな? ちなみにアイリスは168センチ、セレナは175センチもある。うらやましい。10センチずつくれてもいいよ?


「……ルーフィアの金髪もアクアマリンの瞳も綺麗よね」


「ええっ、アイリスの方が綺麗だよ!」


 アイリスは青銀の髪にブルートパーズのような青い瞳をしている。絶対そっちの方が綺麗だ。顔立ちも可愛いし肌が透き通るように白い。ファッションセンスもいい。二人とも一応男爵家だけど貴族なんだよね。白いワンピースに白いリボン、ツインテールが可愛い。青い髪に白が似合ってる。


 セレナも赤い燃えるような髪にルビーの瞳で飲み込まれるように美しい。良いなあ。ただ魔女みたいな三角帽子とぼろっちい黒いローブはどうなのって思うけど。趣味らしい。


「二人みたいにはっきりした色の方が好きだなあ。ボクの髪とか目ってくすんでるし!」


「それは淡いと言うのよ! 自信持ちなさい!」


「アイリスは昔からほめてくれるけどチビだし綺麗からはほど遠いと思う!」


(アイリスの初恋はルーだしね)


「セレナ、なんか言った?」


「なにも」


 そう? セレナってもともと声小さいけどよくブツブツ言ってるんだよね。聞いても教えてくれないし。


「さあ、教会に行くわよ。バカ男子たちより先に行ってぱっぱとスキルもらって帰るのよ! 変なスキルもらってバカにされる予感がするわ!」


「スキルはみんなに平等だよ! 大丈夫!」


「でもねえ、去年隣のお兄ちゃん香辛料召喚とか言うヘボスキルもらってたし?」


「あれも熊とか撃退できるすごいスキルだったじゃん! 売ったら儲かるし!」


「でもねえ……。絶対スキルが平等なんて嘘だと思うのよ」


 でも聖書原典の方に書いてあることが確かなら不遇っぽいスキルの方が育ちやすかったりするはずなんだよね。強い名前のスキルの方が育ちにくいらしいし。昔の勇者や聖女や賢者のスキルはすごい育ちにくかったらしいし。鍛え込んだら強くなるっぽいけど。


「とにかく、早く行くのは賛成。出掛けよ?」


「ええ、早く行きましょう。どんなスキルもらえるか楽しみだし?」


「なんでも良い」


「セレナ、もう少しこう夢を持たない? どんなスキルが良いとかないわけ? ルーフィアは?」


「ボクはみんなが餓えないスキルが欲しいかなぁ」


「なんでそんな消極的なのよ。二人とも勇者になるとか聖女になるとか考えないの?」


「めんどそう」


「いいスキルは使いこなすのが大変なんだよ?」


「だからそんなことないわよ。きっと私のスキルは超レアで見た目も良くなって身長も伸びて高位貴族に望まれるような効果で成長も早くて威力抜群でお金も稼げてあらゆる病を癒して敵をことごとく滅ぼすスキルよ!」


「高望みしすぎじゃない?!」


(期待しすぎたらハズレ引きそう)


 そんな風にボクら三人は仲良く教会に向かった。これでお別れになることは二人にはまだ話していない。






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[良い点] おばあちゃんとお母さんが、飢えからの病気で亡くしたルーフィア。みんなが飢えないスキルがいい、という言葉に一気にハートをつかまれました。 応援したいです。がんばれ!
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