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辺境伯の第六夫人! ~奥様たちは特殊戦闘員~  作者: フミヅキ
第一章 第六夫人の華麗なる日常
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第六夫人の華麗なる日常④

 エネリア砦の陣内では、鳥籠の中で萌黄色の口伝鳥が第五夫人キーリィの声を再生した。


『大将のデュラハンは片付けたわよ、レティシア』


 その一声にレティシアは笑顔で拳を握りこむ。


「さすがです! こんなに迅速に片が付くとは、さすがは偉大なる精霊使いにして最強の武闘家、キーリィ様です!」


『ふふん! 当たり前でしょう?』


 レティシアの称賛に満更でもなさそうなキーリィの声を萌黄の口伝鳥が伝えた。


「それではキーリィ様は兵の皆と残党狩りをお願いします。口伝鳥――若紫はハミア様たちの方に付いていくようハンドサインを出しておいてください」


『了解したわ』


 キーリィとの会話を終えてホッと息をついたレティシアに、車椅子のネイスが声を掛けた。


「レティシア、ちょっと気になることがあるの」


 普段は陽だまりのように優しいネイスの声に、若干の緊張が混ざっていた。


 ギザリア辺境伯の第一夫人ネイス・ヘラ・ギザリア。この世界で唯一公式に「ギザリア辺境伯夫人」を名乗れる女性だ。緩く波打つ黒髪に透き通るような空色の瞳、神秘的な美しさを持つ彼女だが、今は病のために顔は青白く見え、あまり体を締め付けないデザインの上品な白いドレスを身に付けている。


 慌てて彼女に駆け寄ったレティシアは車椅子の傍らに膝を付く。


「どうかなさいましたか、ネイス様」


「カードが……占いが……『不穏』のイメージをわたくしに告げています」


 厳かに告げられた言葉にレティシアは目を見開いたが、すぐに思案を巡らせる顔になる。


「敵将を討ち取ったのに不穏とは……。まさか敵は二段構えの作戦を……?」


 ネイスは不安げにレティシアの顔を覗き込む。


「ねえ、レティシア。わたくし、『未来のヴィジョン』を覗きましょうか?」


「いいえ。それはネイス様のお体に差し支えます。わたくしはネイス様の『目』の代わりを務められるよう王立アカデミーに通わせて頂いたのですから、ここはわたくしにお任せを」


「まあ、レティシア、立派になって……」


 胸を張るレティシアの緑色の瞳が輝くのを、ネイスは感慨深げに見え上げていた。レティシアは踵を返して萌黄の口伝鳥に向かって問いかける。


「ハミア様、マミア様! 戦況について確認させてください」


『戦況と言ってもな……。全体的に膠着状態が長く続いるが。なあ、あね様?』


 口伝鳥は第二夫人の妹マミアの声でそう答えた。


「例外はありませんでしたか?」


『ふむ。そういえば東方面の一角だけ我らが軍勢が押しているな』


 姉ハミアの言葉に、レティシアは眉間に皺を寄せる。


「気になりますね。見に行っていただけませんか?」


『いいのか、ここを離れて?』


「はい。何か気になるものが見えたら教えてください」


『わかった』


 ドラゴンはあっという間に東方面へ飛び、萌黄の口伝鳥は双子姉妹の声を再生した。


『あね様、何が見える?』

『魔物どもの死骸ばかりだ』


 竜への騎乗時、姉ハミアの視覚はドラゴンと同期している。最大限に集中すれば、遥か上空から地上の人間が持つ針の穴すら見通すとも言われるその視力を得たハミアが、人と魔物で溢れた戦場を見渡している。


『戦場は随時魔物どもの戦力補充がなされていたが、東方面はいつの時期からか捨て置かれていたようだ。この地ではすでに決着がつき、我が軍の兵士たちは各所の戦闘を補助すべく散っている』


「なるほど……逆に怪しいですね」


『む……? 魔物の生首が一つ転がっているが……鉄兜から覗く口元が動いているぞ……?』

 訝しむような口ぶりのハミアの言葉を聞いたレティシアは、緑の瞳をハッと見開く。


「なんてこと……! ハミア様、それ以上その生首を見てはなりません! 一度砦に戻ってきてください! 運んで頂きたい方がいます」


『わかった』

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