死ぬ前に
「もう、いいの。私、死んで生まれ変わりたいの。」
そう言って柵に手をかける彼女を止める方法は、何か、何かないだろうか。必死に俺は頭を働かせる。早くなんとかして彼女を止めないと。今までも彼女が傷つくたびにろくなことはできなかったけれど、本当に今ここで止めないと。焦っていつも以上にうまく考えられない。彼女の言葉が頭の中で繰り返し流れる。
『…死んで生まれ変わりたいの。』
これだ。彼女は生きることをまだ諦めていない。
「なあ、少し、死ぬのは待ってくれないか?」
彼女をできるだけ刺激しないように、緊張しながら声をかける。
「どうして。もう、この世界で生きていたって仕方ないの。あなたも私の人生が死にたくなるほどだって知っているでしょう。」
「ああ、知ってる。だから待って欲しいんだ。生まれ変わりたいんだろう?それなら、準備をしてからにしないか?どうせなら、生まれ変わったら『チート』をしたくないか? 死ぬのは少しだけ先延ばしにして、一緒に、異世界の予習をしよう。」
これは、異世界についてあれこれ考察して現実逃避をし、幼馴染みをこの世界に引き止める話である。