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こんにちは、メリーゴウランド  作者: あると
第一章 誘拐先は異世界だった
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第三話 新たな動き出し

「魔王様、ご報告があります」


 とある地にそびえる城の一室で魔王と称される城の主に第二軍団長が焦った様子で報告を行おうとしていた。彼は先程部下のルイより謝罪と共に隊の全滅の知らせを受けたばかりである。話された内容はとても信じられるものではなかったのだがルイがボロボロのほか二名に背負われながら帰還したので信じるしかなかったのである。彼女が語るには敵は一人、しかしその一人に隊が壊滅させられたのだと言う。そしてその正体は精霊族、しかも見た目的には10歳程度なのだという。

 彼、第二軍団長のアン・サリエリュは敬愛する主にルイに聞いたままの情報を申し上げた。彼はとてもではないが顔を上げることはできない、そう思った。軍団長という名誉ある役職を与えられていながら部下をなくすなどあるまじき行為であったとともに主の悲しむ顔が容易に想像できたからである。


「....そう、か。君の部下がか。私は君の部下は粒ぞろいだと思っていたのだが。それをたった一人、それも精霊族の子供に壊滅させられたのか」

「申し訳ありません。私への処罰はいかようにしていただいてもかまいません」

「いや、それはいいんだ。領地を広げるためには少なからず犠牲が出ることは分かっているんだ、そうだろアン」

「....はい、その通りでございます」

「しかしそれが大勢、かえって敵はどこにも属していないような子供一人。しかも聖法を扱うのか。....もういい、下がっていいよアン。今はルイたちのケアをしてあげてくれ。謎の少年の調査は暗部に任せておく」

「は。慈悲深きお言葉、感謝いたします。......失礼いたします」


アンはそう言いその部屋を後にした。結局アンは主の顔を見ることができなかった。いや、見たくなかったといった方がいいのかもしれないが。


        *      *      *

「つまり、本当に俺がアリンを生き返らせたのね」

「そうだって言ってるでしょ、もう。本当に心当たりないの? 憑りつかれているって感じじゃなかったけど」


 俺が目を覚まして十数分、アリンが生きていることに戸惑いつつ、彼女が俺の体を操っていた何者かから聞いた話をおとなしく聞いていた。三つの話を聞いたのだが八割方分からなかった。俺に出会ったことがあると言っていたようだが前世の記憶はほぼなく、この世界で出会ったのもアリンと魔獣と奴隷商くらいである。このなかに、俺の体を乗っ取った何者かがいるとは思えない。しいて言えば魔物たちなのだがアリンを生き返らせる意味が分からない。


「俺に会った人たちの中にも心当たりはないしなぁ。というか回路? が開かれたってどういうことなんだろ」

「それはたぶん、魔術が使えるようになったんじゃないかな」

「えっ、まじ?! 俺魔法使えるの?!」

「そんなに驚くことかな? それと魔法? それは君の故郷の方言なの?」


 いやにさらっとした返答。魔法ってこの世界じゃメジャーなものなのかな。本当に絵本のような世界に連れてこられたんだなぁ。というか魔法が方言?


「どういうこと? 魔法って言わないの?」

「少なくとも私は魔法っていう言葉は聞いたことないなぁ。周りのみんな魔術っていう力を使っていたし」

「そうなのか魔法って言わないのか。それにしても魔術か....。なんでアリンは俺が魔術使えるってわ

かるの?」


 なに、何か俺から漏れ出してんの? その魔力というかなんというか。


「んー、これは獣人の本能というかなんというか、匂いでわかるんだよね。あぁ、この人魔法使いだなぁ、みたいな」

「ほえーすごいねそれ。それで、俺はどんな魔術が使えるとかわかる?」

「いや、それは分からないな。申し訳ないけど。それこそ、大きな街に行くとどんな魔術適正があるかを調べられるよ」

「へぇ、便利なんだね。アリンはしたことあるの?」

「便利なんだねって、みんな知っていることだと思ってたけど。本当に何も覚えてないんだね。私は昔したことあったけど」

「当たり前なのか......。アリンはなんの魔術適正があったの? というかどんな魔術があるの?」

「私は風と光の適性があったんだ。というか私たちの種族は大体みんな風と光の適性があるんだよ。それと、魔術にはいろいろあってね。火水風地の基本四魔術と光闇の例外二魔術、この世界の魔術が使える住人は大半はこの六つの魔術のどれかを使うんだよ」


 王道っていえば王道だなぁ。よく聞くようなものばっかりである。どの世界でも考えられる内容は同じなのかな。


「なるほどねぇ。大半、っていうことは残り少数は違う魔術を使うの?」

「そう。特異魔術と言われている、時・空間・虚の三つがあるんだよ。いわゆる強国だと言われている大国でもこの3つのどれかを使える人は10人程度しかいないんだ」


ほへぇなんかワクワクするようなロマンを感じる話だな。この世界の総人口がどれほどのものかは知らないけれど大国でも10人程度なのか。


「そんなに珍しい人もいるんだな。でも知られてないだけでいるんじゃないのかその3つの、特異魔術とかいうやつを使える人は」

「いやいや、世界の取り決めで新生児には魔術適正の有無を判定させるようにしているんだよ。これは例え奴隷や身寄りのない出身不明の子供であってもだ。たぶん世界としては危険分子を放っておくわけにはいかないんだろうね」

「獣とか、理性がない野生生物はどうなんだ?」

「んー本当に知らないことが多すぎるな。もしかして君、実は異世界から来たとかない?」  


 ギクッ。まさかアリンの口からそんな言葉が出てくるとは....。これは正直に話した方がいいのか?


「い、いやぁ」

「ま、ありえないか。確かに異世界人というのは数十年に一人の割合で確認されるらしいけど。こんなところにはいないもんね」

「え、そうなのか」

「うんそうだよ。まぁでもその人たち、人体実験の材料にされているらしいけどね。あくまで噂だけど」


ひ、ひぇ~~。言わなくてよかったぁ。なんだよ人体実験て、怖すぎるだろ。


「そ、そうなんだねぇ、大変だねぇ」

「噂だよあくまでも。で、話を戻すと、理性のない野生生物は基本的には魔術は使えないんだ。術を構築するだけの演算装置、すなわち脳が足りないからね。ただ、やはり例外は存在する。高位の生物、つまりドラゴンとかは基本四魔術を使えるんだ。まぁ滅多に人間社会には姿を出さないから大丈夫だけどね」

「ドラゴンまでいるのかこの世界には....。まぁそれはいいとして、じゃあこれから俺は都市に行けばいいのかな」

「そうだね。俺たち、だけどね」

「え? いやいやアリンは別に着いてこなくてもいいんだぞ? もう自由なわけだし」

「はぁ、君ねぇ名前もないのにどうやって役所に行こうっていうのよ。私がついていかなくちゃならないでしょ。しかも私は別人だったといえどあなたに生き返らされた身よ、周りの世話くらいさせなさいよ」

「は、はぁ。左様でございますか。ん? あれ? 貴女そんな口調でしたっけ? ツンデレ?」

「何言ってるの? ....いや、確かに言われてみればこんなしゃべり方じゃなかったような気がする。まぁいいや、誤差でしょ。それよりもツンデレって何?」

「い、いや気にしないんだったらいいよ。ツンデレも気にしないで」


 こう言っては何だがアリンはもっと可憐な少女だったように思う。どちらかと言えば口元に手を当ててフフッと笑うような子だった気がする。これも生き返りの弊害なのかな。完全に以前と同じようにはいかないのかな。


「そ、なら早く行きましょう。もうじき日が暮れるわ。早く街につかないと役所がしまっちゃうわ」

「それよりもアリンは腹ごしらえをしないとね」

「....お金ないけどね」


ぐぎゅるぅぅぅ~~~~~


 アリンはやせ細っており、見た目が不健康そうだったのでご飯の話題を出すと誰かのお腹の虫が鳴いた。俺はお腹がすかないので確定で彼女のお腹の音なのだが。


「....急いでご飯食べないとね。お金は、どうしようか」

「笑いたかったら笑いなさいよ///」

「大丈夫だよ、急ごう」


彼女は照れたようにこちらをにらんでくる。なまじ顔がいいだけに俺の頬が熱を帯びる。分かってないよね? もう薄暗くなってるし。


「....ここから一番近くの街はサイビッツ区。比較的穏やかで優しい人たちが住んでいる、という印象よ。過去に一度だけ行ったことがあるの」

「よく知ってるね。というか現在地がわかるのすごいね」

「月狼族はその名の通り月とかかわりが深い種族なの。月は空から世界を見守ってるでしょ? そんな風に私たちは感覚的に場所の把握するのが得意なの。正確にどこにいるっていうのは流石に分からないけどね。さ、行きましょう、30分ほどで着くはずよ」


 GPSかな? いくら種族特性と言えど何分ほどで着くとか分からないでしょ普通。もしかして彼女、気が付いてないだけで天才とかそういうたぐいなのでは。


「すごいねアリン。でもそのサイビッツ区についてもお金ないしどうすることもできなくない? ごはんや宿だってただじゃないでしょ?」

「ふふん、馬鹿にされちゃ困るわ。私が考えもないまま行こうなんて言わないわよ。大丈夫よ、大船に乗った気でいなさい」


 それ結構なフラグでは? あなた顔がいいだけで発言は負けヒロインだよ。



     *      *      *

「この人の魔術適正鑑定してほしいのだけど」

「はいかしこまりました。しかし、年齢的にもうしているはずかと」


 無事サイビッツ区に到着した俺たちは一際賑わっていた建物に入った。ここが例の役所らしい。なんというか、冒険者のたまり場みたいな所だ。じろじろ見られたから少し怖かったけれどアリンが堂々としていたから何とか表に出なかった。助かったし意外と彼女が肝が据わっていることに驚いた。


「いや、彼記憶喪失らしくて自分の事がよく分からないらしくて」

「左様ですか、ではお連れ様はこちらへ」

「あ、はい。....えーと何をすれば?」

「まずはですね、こちらの用紙に必要事項を書いて頂きます。その後に鑑定を行いますので、わかる範囲で書けたらもう一度こちらにお越しください。あちらにある水道は飲み水なのでご自由にお使いください」

「分かりました。行こうか、アリン」


 説明された通りに用紙に必要事項を書くためにテーブルへと向かう。冒険者たちの視線は感じるが先ほどより興味をなくしたのかこちらを見る人は少なくなっている。


「私は水汲んでくるから早く書いてなさいよ。もう結構限界なのよ、空腹で」

「わ、分かったからそんな顔しないで」


本当に限界なようで相当険しい顔をしていた。可愛い顔が台無しですよ。


「ここも、ここも、これも書けない。というかほぼ何も書けない。名前もないし出身地は別世界だし、身長も体重も分からない。性別すらも書けない。....唯一書けるのが配偶者の有無って。なめてんのか」

「お待たせ、書けた?」


 アリンが水を汲みに行って戻ってくるまでに書き終わろうと意気込んだものの何も書けないことに絶望していると、ついに彼女が戻ってきた。


「ごめんほぼ何も書けない。って、どうしたのその肉串」

「もらったのよそこのおじさんに」


 彼女の指さす方を見るといかついおじさんがいた。へぇ、あの人が。人は見かけによらないなぁ。


「戻ってくる途中にお腹なっちゃってね。恥ずかしながらね。冒険者のよしみでってことで」

「へぇ、そりゃ君の顔だったら得するだろうね」

「あらありがとう。というか最低限名前を書かないと鑑定できないわよ。....つくりましょうか名前、ここで」

「え、それっていいの? そんな簡単にしていいの命名って」

「しょうがないでしょ。まぁいやだって言うんならしないけど。魔術適正鑑定の情報は別に正式に保存されたりしないからそんなに悩む必要ないけど」


そんなに手軽にできるものなのこれって。健康診断みたいなものなんだな。まぁこんな美少女に名前を考えてもらえるならそりゃありがたいけど。


「そうなんだね。でも名前か。そんなに直ぐでないよ名前なんて」

「う~ん、ウエンティ、とか」

「ウエンティ、か」

「ど、どうなのよ。文句あるんだったら言いなさいよ」

「いやいやまさか!君につけてもらえるんだからこの上なくうれしいよ!」


テンプレみたいなツンデレとの会話になってしまった...。にしてもウエンティか。よく聞く名前ではあるけれどいい名前だよね。なぜか俺の中のイメージではウエンティは風系のイメージあるけどこれで炎の適性あったらおもしろいね。


「そう、ならいいけど。じゃさっさと書いちゃいなさいよ。身長は150cmくらいじゃない? あと体重も、あなた細いから40kgないくらいでしょ」

「なるほどなるほど。生年月日も適当で、出身地は....」

「そうねぇ精霊族が多いのはここの近くにあるガナン区の近くだから、ガナン区でいいわ。そこで私と初めて出会ったことにしときなさいよ。あとはー」


 そう言って思案顔でアリンは用紙をのぞき込むために顔をこちらに寄せてきた。やめて!そんなに近づかないで!好きになっちゃうから!


「うん、これでいいわ。それじゃ受付に行ってきなさい。私もこれ食べ終わったら向かうから」

「あ、ああ。分かったよ」


 俺の心の戦いとは打って変わってさっぱりとした対応をしてきた。そんなにさらっとしなくてもいいじゃん。俺がかわいそうだよ。


「あの~これ、書けました」

「はい、お預かりしますね。....あら、ガナン区出身なんですね。私の母もそこの出身でしてよく私も行くんですよ。自然豊かなところですよね」

「え、えぇ彼女と初めて出会ったのがそこでして」

「あ~なるほど。あそこは魔術適正鑑定できませんしね~。だからこちらにいらしたんですね」


 受付嬢が気さくに話しかけてきたのだが、申し訳ないけどガナン区知らない!自然豊かなところなんですね、情報提供ありがとうございますお姉さん。


「ふふふ。では、もう準備は出来ておりますので、こちらの水晶に手を軽く乗せてくださいね」

「分かりました。こ、こんな感じですか?」


 まさかの水晶で審査する感じだった。まさに魔法、じゃなくて魔術が一般的な世界の定番だなぁ。なんというか古き良きって感じかな。


「そうですそうです。では鑑定していきますね、力抜いてください」

「はい。どれくらいかかりますか?」

「10秒ほどですので、すぐですよ」


 意外にもすっと終わるようで安心した。これで数分かかるとか言われたらどうしようと思ったけれど杞憂なようだ。


「....はい、終わりましたよ。ええっと、あなたの適性は....え?」

「ウエンティ、どう終わった?」

「あぁ、うん。今終わったところ」


鑑定が終わったタイミングでちょうどよくアリンがこちらに歩いてきた。それはいいのだがちょっと待って、受付のお姉さんがめっちゃ戸惑ってんだけど。なに、もしかして特異魔術持ちだった? ワクワクすっぞ。


「え、ええっと。落ち着いて聞いてください。あなたの魔術適正は....」


やけにもったいぶってくるお姉さん。なになに気になるんだけど。あれだけ騒いでた冒険者たちもここぞとばかり静まり返っている。ゴクリ....


「まず、あなたは万能魔術師(オールラウンダー)です」

「....? それはどういう」

「すごいじゃないウエンティ!基礎と例外魔術の六つすべて使えるのよ!なかなかいないわよそんな人!」

「ちょ、ちょっと待ってください!そこじゃないんです!」

「? どういうことよそれ。すごいじゃない十分」

「そうなんですけど、そうじゃないんです。ふぅ、実は、あなたは特異魔術の三つ全ても使えます」

「え」

「え」

「「「「「え?」」」」」


 まってまって、特異魔術って滅多に使える人いないんでしょ? 盛りすぎじゃないそれ。確かに期待はしたけどそういうことじゃない。俺は別にもりもりにしろって言った覚えはないの!


「す、すす、すごいじゃない!!やっぱりウエンティは私を助けただけのことはあるわ!」

「う、うーん。よくわからないなぁその判断基準。実感わかないけど、本当なんですかその鑑定結果」

「はい、間違いありません。あと、もう一点」


 まだあるんですか。今度は何ですか、もういいですよ。


「それがその、もう2つ、この水晶では鑑定できない魔術を観測しました」

「??? どういうことそれは。鑑定できないって、それこそその水晶の故障じゃないの?」


俺よりも早くアリンが答える。確かに、俺はこの世の全ての魔術系統に適性があるからもう鑑定も何もないんじゃないのか?


「いえ、そういうわけではないようです。魔術自体は観測されています。ただ、それがなんの系統でどんなものかがさっぱり分かっていません。こんなこと初めてで....」

「それは、俺はどうしたらいいんでしょうか? ただよく分からない魔術が使えるって言われてもどうしようもないんですが」


よく分からないで済まされたら困るのだ。ある日突然暴発されても困るし、なにより身近にいるアリンを傷つけでもしたら溜まったもんじゃない。  


「はい、それはですね、魔術局本部に行ってもらうといいかもしれません」

「魔術局本部?」

「え、そんなところまで行かなきゃいけないの? 遠いわね。まぁ仕方ないか、分からないんだったらより大きなところに行けばいいものね」

「ご理解ありがとうございます。本部の方にはこちらから招待状を書かせていただきますので、準備が整うまでこの街でゆっくりしていってください。もちろん宿などはこちらで手配しますので」


俺がポカン、としている間にどんどん話が進んでいく。魔術局本部? どこそれ。より大きなところって感じだから大都市に行くのだろうか。


「やった!よかったわねウエンティ、宿も用意してくれるって!」

「それは良かった。いい加減布団で寝たいよ」

「あ、あとそれとですね。特異魔術保持者には支給金が出ることになっておりまして.....こちらになります」


支給金? なにそれ。そんなふうに考えていると受付のお姉さんは後ろのスタッフルームから何やら麻巾着を持ってきた。なんかこれもありがちだなぁ。


「うわ、こんなに貰えるのね。まさかとは思ってたけど、これは予想以上だわ」

「予想以上? もしかしてアリン、これ狙ってたの?」

「い、いや? そういうわけじゃないけどね? あなたについて行きたかったのは本心だし」


ホントかそれ。2本の尻尾がブンブン振れてるけどそれ、金貨とか入ってんの?


「だってほら金貨20枚も入ってんのよ?! これなら美味しいものも綺麗な服も豪華な宿も、当分は豪遊できるわ!」

「そ、そうなの? 金貨の価値がよく分からないけど君が嬉しそうならいいよ」


 当分豪遊、ということは金貨一枚で元の世界でのいくらくらいなのだろうか。金貨一枚を1万円とすると20万円だが、それでで当分の豪遊は厳しそうだがアリンは年齢的にも子供っぽいからそれくらいでもいいのかかな。


「では、つつがなく手続きが取れ次第宿の者にご連絡いたしますので、それまでは楽しんでいってください」


そう言ってお姉さんはいつ書いたのか、宿の場所の書かれた紙と紹介状を渡してきた。


「ありがとうございます......あのこれ一室なんですが」

「はい、お二人はご一緒に泊まられますよね?」 

「い、いやその」

「なによ、私との部屋が嫌なの」

「違う違う。ま、まぁいいか。すみません、大丈夫です。ありがとうございます」


 有無を言わせぬ目でアリンがこちらを見てきたので渋々了承する。まぁ、牢屋の中でも二人だったしいいか。


「はい、ではお気をつけて」


 そういう受付のお姉さんに見送られて俺たちは役所を出た。冒険者達は俺の魔術適性に驚いたように未だに議論をしていた。



そして宿に着いたのだが.....。


「なんか豪華そうだねここ。朝食と夕食はついてくるらしいからここで食べようか」

「そ、そうね。私もこんなに豪華なところだとは思わなかったわ。ちょっと物おじしちゃうわね」


 あの冒険者達の中にいても堂々としていたアリンがまさかの物おじ宣言。庶民派だなぁ意外と。

 そんなこんなで俺はこの世界に来て初めてベッドで就寝することができたのである。

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