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『金子太郎の異世界大冒険!』【2000文字制限版】

 俺は金子太郎(カネコタロウ)

 金太郎とかキンタと呼ばれる。

 しかし、それも遥か昔の話……と言ってもまだ三年しか経っていない――イヤ思い返せばもう三年か。


 ここまで本当に長かった。

 聖剣(勇者の剣)を捜索

 鏡盾(勇者の盾)を発見

 武者鎧(勇者の鎧)を製造

 証明書(勇者の証)を偽造

 ……本当に長かった。


 そう! 俺は間違えられ勇者として異世界に召喚された。

 金太郎(・・)でも桃太郎(・・)でも無く勇者(・・)

 ココは〝名が体を表す〟という(ことわざ)が無い世界。


 数々のキツイ事があった。

 最初の(モンスター)に出会った時……初期装備は木刀(ヒノキの棒)だけだった。

 殴れど殴れど手に負えず、子供の喧嘩みたいになった事を今でも覚えている。


 仲間をつのり倒して貰――戦う事になったが追剥ぎ(カツアゲ)により無一文(所持金ゼロ)になった。


 初めての野宿……凄く心細かった。

 食べる物もなく。ひもじい思いをしながら焚火をする。

 だがソレにつられて魔物(モンスター)が現れてしまう。

 もう戦う気力も無い。殺されて俺の物語……人生は終わるんだ。

 しかし、彼らは焚火を囲んで暖まると更には俺に食物(木の実)を運んできてくれた。

 心細い(こころ)を暖めてくれた。

 お腹を満たしてくれた。


 経験値もくれた……ホントいい奴らだった。

 魔物(モンスター)達が倒れていく。

 最後に残ったのは一匹のスライムだけ。

 ソイツは俺の肩にへばり付いている。

 もう十分だ……俺は強くなった。

 死屍累々《ししるいるい》となり朽ち果てた魔物(モンスター)達を見ながら黙祷(もくとう)を捧げる。

 出会った魔物(モンスター)達は俺の犠牲(経験値)になり天に召された。

 なんと愚かで浅ましい事をしてしまったか……しかし、これも現実。弱いものは淘汰(とうた)されるのみなのだ……俺は強くなった……そう、魔物達(同士討ち)のおかげで。


 以降、魔物の勇者(モンスタータロウ)と呼ばれる様になる……不本意だ。


 (さら)われたお姫様を助け出す事も出来た。

 黙って(コッソリ)キスをしたが目覚めさせられなかった……残念だ。

 その後、無事に()王子のキスで目覚める……近親〇〇だ。


 俺は今、後悔の念と共に多くの(しかばね)を乗り越えて魔王城の前に立っている。

 これが独り立ちというやつかな?

 ボッチじゃないよ? いいスライムも居るよ。


 魔王城に入った俺は仲間の魔物(モンスター)をちぎっては投げちぎっては投げた。

 ちぎられた魔物(スライム)は増殖を繰り返し(モンスター)を排除していく。

 そう、こんな激闘に耐えてくれたのはコノ相棒(スライム)だけだ!

 行くぞ相棒(スライム)! 魔王の元へ!


 俺の前に最後の障害である強敵(四天王)順番(・・)に立ちはだかった。


 最初の強敵(四天王)石化蜥蜴バジリスク

 奴の石化攻撃は鏡盾(勇者の盾)に反射され……石化した。


 二人目の強敵(四天王)は首無し騎士デュラハン

 俺はあっち向いてホイで勝利した。


 三人目の強敵(四天王)黄金竜ゴールドドラゴン

 俺は命の代わりに全財産ワイロを差し出した。


 ラスト強敵(四天王)は舌なめずりをして待っていた。

 苦労を重ねる俺を待ちに待っていた……らしい。

 途中で倒れないか心配で心配で堪らなかったと話す……色魔(サキュバス)だ。

 辛うじて勝利する事は出来たが失ったものは大きい……俺はやむを得ず魔物に童貞を捧げた。

 最後の悪あがきか『お前に魔王様を倒す事など絶対出来ない』と告げてくる色魔(サキュバス)だが腕に絡み胸を押し当てるのはヤメテ欲しい。

 童貞の味がお気に召したらしいが、今後はどうしよう……俺、もう童貞じゃない。


 そんな吸って揉んだがあり(魔王)の元に辿たどり着いた。


 (魔王)は巨体で浅黒い肌をしてツノが頭からせり出している。

 そして、体に似つかわしく大きな玉座に横たえていた。


「さあ勝負だ魔王! ココで合ったが三年目!」


 自分の十倍はあろうかという(魔王)に向かって駆け出す。

 その様子を微動だにせず見守る(魔王)

 俺は相棒(スライム)をちぎっては投げちぎっては投げと全面に配置した。

 部屋には配置する場所が無いほどにスライムであふれかえっている。


「さあどうだ魔王! この()面楚歌から逃れられるのか!?」


 (魔王)に向かって吠えた!

 しかし(魔王)は微動だにしない。


「チクショウ! 相棒(スライム)ごときじゃ反応にも(あたい)しないというのか!」


 攻撃の配置(フォーメーション)を終えた俺は身構え防御に専念する。

 そうして(魔王)からの攻撃を待ち構えた。

 今か今かと…………。


「あの~すみません魔王さん? 攻撃はまだですかね?」


 たずねてみるが〝まーだだよ〟と山彦の様には返ってこず沈黙がその場を支配する。

 そう、実は勇者が来るのを長く長い(あいだ)待ち構えていた(魔王)はその場に座ったまま老衰で死んでいたのだ。

 死亡推定時刻を確認しようと触れた(魔王)(ちり)となり崩れ落ちた。

 ソノ中から宝箱が産まれ落ちる。

 罠に掛かって死ぬオチが無い事を確かめソレを開けた。

 すると中から煙が立ち込め俺は召喚した時と同様に包み込まれ現世(地球)へと運ばれる。

 ちょっと待て! 俺の成果功績による凱旋(パレード)は!?

 確かに魔王を倒すと現世に戻れると聞いていた。


「ソレは今じゃないだろーー!!」


 そんな叫びもむなしく俺は現世(地球)へと返り咲いてしまった。


 そして、更に思い知るのだ……。

 異世界と地球での時間の流れの違いに。

 俺を待っていたのは無情にも七百年もの年月が経った元居た筈の地球《異世界》だった。


「チクショウ! 俺は浦島太郎じゃねえよ!! 金子太郎カネコタロウだよ!」

ご感想・ご意見いただければ嬉しいです♪


尚、2000字文学賞「転生小説」の応募中。

2440文字から2000文字に絞りました。

最後の最後にルビで文字数削除した苦労の鱗片が伺えるかと思います。


■追記■

質問が来たのでこちらで回答

Q:聖剣(勇者の剣)を捜索って結局は見つかったの?

A:捜索して見つかったのは鏡盾(勇者の盾)です。

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