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秋の夜長のこんな日は ー彼岸ー

作者: ナチュラル9

初めて宿した子どもを天国に還した1週間後、永遠の愛を誓った男が逃げた。



何度打っても既読のつかないLINE。

何かあったのと何度も聞いたメール。

してはいけないと思いながらした電話。


全てに返事がなかった。  


どう、して?



そして、私は、狂った。




「あなたの順番になりました」


機械的な音声アナウンスが携帯から聞こえる。


ああ、やっと話せる!そう思うと、今まで四方に散り散りに飛んで落ち着かなかった心に灯りが燈る。先生、早く話したい、先生!


「こんばんは。○○です。今日はどういったご相談の内容でしたでしょうか。」


ああ、先生、私です。やっぱり彼から連絡がないんです。どうしてなんでしょうか。彼の気持ちは今、どんな感じなんでしょうか。


「う~ん、少し視てみますね。では、深呼吸を3回した後に彼のことを思い浮かべてください。」


はい。わかりました。スー・・・ハー・・・。


「彼は、まだあなたのことを愛してますよ。けれど、今、彼の家庭が大変で・・・・3か月後には落ち着いていそうだから、連絡を取るとしたらその辺りでしょうか。」


そうなんですね、、彼の奥さん、大変な人だって聞いてるからそのせいかも。先生、時期は、もっと、もっと早くならないんでしょうか。連絡引き寄せをまたやっていただきたいのですが。


「わかりました。今、彼の無意識と貴女を繋げていますよ・・・・1週間ほど待ってみてください。」


ありがとうございます!いつも頼りにしています、○○先生!


ピッ。プツッ。



1週間、、それも長すぎる、、もっと、もっと時期は早くならないかしら。あ、この先生、連絡引き寄せってプロフィールにあるわ。もしかして、この人なら!


ピッピッピッ。




電話占いに頼るようになって半年。未だに彼から連絡はない。気持ちが狂いそうになるとこうやって電話を掛けている。もう電話に費やしたお金は50万を優に超えた。


電話を掛けると、その時だけ気持ちがスーっと晴れる。

彼はきっと私に戻ってくる。1時間も経たないうちにもしかしたら連絡があるかもと期待に胸膨らむ。



そして、連絡は、いつもない。既読もつかない。涙は枯れ果てた。



もう、今月はお金をかなり電話に使ってしまった。もうやめなきゃ。電話なんて彼から来ないんだから。やめなきゃ、やめなきゃ。


ピッピッピッ。


これで最後、最後だからー。




「こんばんは。南朱雀です。ご相談内容を教えてください。」


ちょっと暗い話になるんですけど、半年前に中絶をして、1週間後に彼と音信不通になったんです。彼は既婚者で、、、。


「そうですか。それは辛かったですね。・・・子どもさんはとても良い子ですね。男の子だったのかな。もう上の世界に行ってますよ。」


・・・!なんでわかるんですか?私も、私も、、男の子じゃないかって。子どもは、私みたいな、中絶した子より男の気持ちばかり気にしてるこの()()()を恨んでないですか?


「・・全く恨んでないですよ。それに貴女のことを心配してます。」

  


子どもは、なんて・・?




()()()()が僕のことで悩み苦しんでることも」

「深く愛してくれていることも」

「お母さんの気持ちは僕が1番よく知ってるよ。」


「・・・だから、もう、自分を赦してあげて。」




枯れたと思っていた涙が、幾筋も頬を伝った。


子どもの命を奪った罪悪感を抱えきれなかった。あの子は、産まれてきたかったに違いない。私が、殺した。身勝手な自分。私は生涯赦されることのない、罪人。



そんな私を、あの子は、赦して、くれるの?


その時、ふわりと誰かに抱きしめられたかのように身体が暖かくなった。





「先生、ありがとう、ございます。子どものことを占いで言われたのは初めてで、、。今はちょうどお彼岸だから、明日供養をしたお寺に行ってみます。子どもは、喜ぶでしょうか。」

 

お寺に行かれたら喜びますよ。そして、お子さんは、貴女が幸せであることを、いつでも1番に願ってますよ。




長い長い暗闇のトンネルの先に、光が見えた。


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