目覚めたらそこは
ゆっくりと意識が浮上した。
目を開けると石造りの天井が見えた。
その天井をぼんやりと見ながら目が覚める前に見た夢を思い出す。
あれは、ただの夢なんかじゃない。私の記憶。前世だ。
(そうか、私は転生したんだ。そしてどうしても好きになれなかった羽山。あつは、王子の生まれ変わりだったんだ)
そう思いながら横を向くと気を失っている羽山いや、王子か?
混乱してきた。あいつが前世を思い出して自分から名乗らない限り羽山と呼ぼう。
しかし、見れば見るほど王子そのまんまだ。
だんだん腹が立ってきた。
おそらく、ここは王宮にある儀式の間だろう。
前世では王族の儀式に使う間だと聞いていたが私達がここに転がっているってことは、ここは儀式の間というより召喚の間というのが正しいのだろう。
そして、私は羽山の召喚に巻き込まれたんだろう。
最悪だ。召喚に巻き込まれた上に召喚したのはあの国だ。
あれからどれくらい経っているのかわからないが、国が正常に機能していないのはまず間違いないだろう。
マトモな頭なら異世界からの召喚しかも思うに勇者とか呼ばれる類いの召喚だろう。
そんなのに巻き込まれるとか、恐らく送還の魔方陣はないだろう。
と、なれば今の私に魔法が使えるかどうかで、今後の選択肢が変わる。
魔力を意識して身体に巡らせて見ると。
よし、出来た。なら私は魔法が使える。魔力量も前世と変わらない。ならばやることは一つ。
(よし!逃げよう!)
誰か見に来る前にそっと逃げようとしたけど、複数の人の気配がこちらに近づいているのを感じて今逃走するのは諦めた。
今逃げられないなら、訳がわからないふりして情報を集めよう。
逃げるのはそれからだ。
人の気配が扉の前で止まった。
そして、一泊の間を置いて扉が開いた。
中に入って来た人達を見て思わず顔をしかめそうになるのを気合いで押さえ込んだ。
そう、中に入って来たのは剣が強い騎士団の男にリアルロリの聖魔法の使い手、前衛の男
ここに王女もいたら屑一行の全員集合だ。懐かしさのあまり同窓会が出来るね!
私はゴメンだけどね。
やって来た一行は召喚の間にいたのが少女といまだ気を失っているという二人いることに驚いていた。
が、やって来た一行は私ではなく羽山の方え近づき囲んで小さな声で羽山が目覚めるまで何かを相談していた。
その間私は完全に無視だった。これは多分声を掛けても無視されるか最悪殴られる。だから私も黙っていた。
結論から言おう。
まず、羽山はやっぱり勇者だった。
そして、私は巻き込まれたとかなんとか言っていた。
謝罪は当然なかった。しかも、私は巻き込まれただけの一般人だからなんの力もないとか言われて貴方を守るためだとかなんか上手いこと言って私にあの忌まわしい隷属の紋を私にしようとしていた。
全力たませば逃げられたけど、無力なふりをしているから私は喚いたのとが張り裂けんばかりに叫び手当たり次第に目につくもの全て相手に投げる。
狙いなんてほとんどつけていないから相手に当たらず周りに落ちていく。
たけど、叫び声が聞こえたらしい羽山は私のもとへ走って来て。止めてくれた。
勇者に言われてしまえば、逆らえないのか名残惜しそうな顔をして去っていった。
勇者が召喚されたんだから普通国王に会うんじゃないの?
そんな素振りも見せないまま王宮の部屋に案内された。
羽山は勇者として事前に部屋が用意されているけれど私は違うらしい。
私の部屋のある場所は男子禁制だと言われて案内役のメイドと私だけで着いていった。
ついた部屋は、部屋とも呼ばれない物置小屋だった。
いくら予定に無かったとはいえこれは酷くない?
「ねえ、メイドさん。私には物置小屋に見えるんだけど違うよね?いくらなんでも、物置小屋はないでし?」
「いいえ、見た通りです。こちらに案内するように言われました」
優越感をにじませてバカにしたようにメイドさんはそう言ったあともう用はないとばかりにメイドさんは去っていった。
しかし、どうしよう。こんなボロボロの小屋なんてどこからでも侵入し放題だろう。おまけに木造だから、さぞかしよく燃えるだろう。
中に入って一層そう思った。
メイドさんは明かりを置いていかなかったから普通の人なら真っ暗で何も見えなかっただろう。
私には関係ないけどね。
小屋の中は壊れた掃除道工とか折れた木剣とか案の定物置というより廃棄物置き場って感じだった。
とにかく、寝られるように窓の近くのガラクタを適当に退かしてガラクタから探してきたボロボロのシーツやボロボロの毛布を床に敷いて寝床とした。
お腹が空いたけど、夕食なんてくれないよな
ムカつくクソ羽山は今ごろ晩餐会でもしながら同窓会でもしてるのかね。記憶があるかはしらんがな。
もう寝よう。明日からは逃げるために情報収集に集中することにしよう。
おやすみなさい。
カタッ。キー。コト、コト、コト
音で目が覚めた。
いや、もしかしたら来るかも知れないとは思っていたけど本当に来るとは。
しかも、気配や物なれた感じ間違いなくプロだろう。
いやはや、まさか初日からとは何か私に恨みでもあるのだろうか?
恨んでいるのはこっちの方なんだが。
「こんな夜更けに何の用ですか?」
相手が一瞬止まったが気にした様子はなく
「いやはや、まさか誰かに気が付かれたのは始めてだ。それも、こんなお嬢さんに」
そう言って窓から入る月明かりにの元まできて見せた姿に少なからず驚いた。
「この国はここまで腐っていましたか。まさか、私を殺そうとする暗殺者が騎士をしているなんてね。貴方を採用したのはだれ?騎士団長?宰相?」
「教えると思うか?どのみち死ぬんだ知る必要ないだろう?」
次の瞬間、私に向かってごくごく小さな風の刃が放たれた。
咄嗟に横に飛んで避けたけど危なかった。
今の体は訓練なんてしてないから急な動きに体ついていかない。長期戦はまずい。
魔法を使ってでも一気に畳み掛け離脱しないとマシでヤバい。
避けた勢いを殺さずにそのまま窓に突進して肩から外に出る。
転がりながら起き上がりついでに魔法で小屋に火を放つ。
そして、そのまま後ろは振り返らずにひたすら走って前世で覚えていた抜け道を泣かば強引に通り抜け城をでた後も走ってその場を離れて路地に入る。
小屋を出るとき持ってきたスクールバックに積めこんでいたボロボロのマントを羽織り路地裏を進んだ今もあるかは賭けだったけどもそれはあった。
看板も何も出ていない一見しては何屋なのかわからない宿屋に私は入った。
とった部屋に入ってすぐに眠気に襲われベッドに潜り込んだ。
(ここの宿屋は安全だだから、だから明日の事は明日考えよう。
今度こそ、おやすみなさい)
まだまだ本題に入らない。
先は長いです。