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貴方は死なないで

前回の続きになります。

 売られた先は王宮。主は第二王子。

 王子と言うか王宮、王族は腐ってた。

 腐っているのは、知っていた。でも、ここまで腐っているとは思わなかった。

 連れていかれた先の第二王子の離宮は奴隷が沢山いた。

 そもそも、この国は奴隷を持つことは違法ではないけれど推奨もされていない。

 むしろ、奴隷を持っているのは眉しかめられる事であり労働力として持っている者は使用人を雇うことさえ出来ない貧乏者と嗤われるくらいだ。

 なのに王子が奴隷をそれも離宮で働く者の保々全員が奴隷であるなんて誰が予想できるだろうか?

 きっと、労働環境は最悪だろうと思った。


 私は下働きとして離宮で働き始めた。

 予想してた通り環境は最悪だ。上にいけば少しはマシになるだろうけど、出世しようとは思わなかった。

 上にいくには媚を売って自分も屑になる必要があるからだ。

 それに私にとって下働きは悪くなかった。

 食事はほとんど無いし休みも無いけど、私は街で培った様々な技術があるか洗濯も掃除も皿洗いも食材の下処理だって大して問題ではなかった。

 そんな日々が一年続いたある日。

 とうとう、魔王の復活の知らせが入った。

 だかまあ、奴隷の私には関係ないだろうと思っていた。

 王子から呼び出されるまでは。


 「お前に勇者である、この私の魔王退治に同行させてやる。這いつくばって感謝しろ」


 これが王子の第一声だ。

 (感謝しろ?ふざけんな!なんで、お前の盛大な自殺に付き合わなきゃならんのだ!ゴメン被る!)

 って言えたらどれだけ良かったか。

 しかし、ただの奴隷に拒否権はなく無言で頭を下げ退室した。


 そこからは、怒涛の日々だった。

 まさに毎日が死と隣り合わせの状態でバカな王子が自分は勇者だと吹聴して周り

 あっという間に魔王退治に旅立つことになった。

 メンバーは第二王子。騎士団一の実力者の剣士。聖魔法が得意の魔法使い(リアルロリは反則だと思う)。索敵なんかを得意とする前衛。王子に惚れとかなんとかの理由で加わった攻撃特化の魔法使い。ぷらす私だ。


 魔王討伐の旅は、順調とは言えないけど悪くはないと思う。

 勇者と言われると疑問があるけど、魔道具や魔武器で底上げしているので苦戦する程じゃない。

 ただし、私の扱いを考えなければの話だけど。

 あいつら、私を同じ人間だと思ってない。

 殴る蹴るの暴力は当たり前。魔法の的にだってする。荷物持ちはさせられるし馬車での移動だって私だけ徒歩だ。

 おまけに、王子は魔法使いや王女がいるのに私にも夜の相手をさせる。それに乗っかって他のヤツも。お陰様で私はボロボロだ。


 旅の途中疑問に思った点がある。

 魔物は確かに知能が低いし言葉も通じない。こちらを殺そうと攻撃してくる。

 けど、その中に殺されるとき自分は魔物ではなく魔族だと。殺さないでくれと無抵抗の者がいた。

 彼等が本当に魔物ではなく魔族という一つの種族なのだとしたら此方がしていることは、ただの虐殺ではないのか?そう思った。

 そして、その考えは間違ってなかった。

 魔王城で魔王と対峙したとき、こちら側に気付かれないように城の者を避難させているのがわかった。

 王子達は問答無用で魔王に攻撃していたけど、魔王は違った。


 何故、攻撃するのか。何故、無抵抗の者まで殺すのか。何故、幼い子どもを殺すのか。


 王子の答えは簡潔だった。

 お前達が魔物だからだ。人間を襲うからだ。


 魔王の先に襲ってきたのはお前達だ。我等は魔物ではない。魔族という一つの種族なのだ。


 魔王の悲しそうな言葉に王子達は耳を貸さなかった。

 だけど、私には届いた。届いてしまった。

 王というには少し若すぎる少年と青年の中間。深紅の瞳を悲しげに細めていて何故だか目が離せなかった。彼は間違いなくこの争いを嘆いている。

 だからだろうか、魔王の方が間違いなく強いはずなのに防戦一方なのは。

 王子は攻撃がなかなか決まらないことに苛立った。そして、私を見ると嗤って命令した。

 魔王の動きを止めろ。

 一瞬、抗おうとした。けれど途端に身体中を走った激痛に抵抗を諦め命令された最低限の行動をした。

 魔王の前に身を投げ出したのだ。

 武器を何も持っていない私を前に魔王の動きが止まった。そして、その止まった一瞬を王子は見逃さなかった。

 いや、その一瞬を王子は待っていたのだろう。

 まさか、私ごと魔王を剣で貫くとは思わなかった。

 剣が引き抜かれ私と魔王は倒れた。

 魔王を倒したと喜んでいる王子達。そんな私達を驚愕の目で見ていた魔王は自分も死にかけているとゆうのに私を憐れんだような目で見た。


 その瞬間思った。

 嗚呼、この人を死なせてはいけない。私のせいで自分も死にかけているとゆうのに私を憐れんでくれるこの人を死なせてはいけない。 

 そう思ったら不思議と魔法が使えるような気がした。

 旅に出てから許可なく魔法を使うことを禁じられていたのに今は魔法が使えると思う。

 実際、魔法を使おうと魔力を身体に巡らせるとできた。隷属の紋が命令違反で私を止めようとしている。けれど、痛みは感じなかった。死にかけて麻痺してるんだと思う。好都合だった。

 私は魔力どころか、どうせ死ぬんだと思って残っている自分の命も注いで魔王を彼を癒した。

 ただ足りなかったのか、傷を癒すことはできたけどしばらくは眠りにつくだろう。 

 私を見る彼に微笑んだ。


 『貴方は死なないで』


 伝わっただろうか。王子達が私を罵倒しているが構わなかった。

 私は最後に彼を癒すことができて満足だ。

 ざまあみろ腐れ王子。

 そう思ったのを最後に私の意識は闇に沈んだ。

次から、現代に戻ります。

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