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その19

◇◇◇◇◇ その19


「大統領、あなたは狂ってしまった。」

 某国大統領執務室で、補佐官が大統領に銃を向けた。


「狂ってなぞおらん。あのままではこの国は国際社会から孤立し、生きていけなくなってしまっただろう。なんとかせねばと考えていたところに女神様の救いの手が差し伸べられたのだ。その貴重な手を握らずにどうするのだ。こんなことは二度と起きはせぬのだぞ。」


「ふん、その代わりにこの国は女神の思うように動かされることになる。それはあのにっくき日本の言いなりになることと同じではないのか。」

 補佐官は拳銃を突き付けながら叫ぶように話した。


「この国は本来日本の女神様の恩恵を受けて栄えた国なのだ。それを反故にしたばっかりに周囲からいいようにされて今はこの様ではないか。女神様におすがりする最後のチャンスなのだぞ。それがわからないのか。」


 大統領はあの時確かに女神様に魅了されて、条約に調印した。だが、この国は本来女神様の庇護なしにはやっていけない国であることはわかっていたはずなのだ。それが、大国の甘いえさにまんまとつられて、庇護を抜け出して500年、翻弄されるばかりでちっとも発展することができなかった。今が本当に良いチャンスなのだ。


「ああ、あんたの考えはわからないね。あんたのやろうとしていることは国を売ろうとするのと同じじゃないのかね。」

 補佐官がそう言い終わると、大統領執務室の扉がばんと大きな音を立てて開けられた。外から大勢の兵士が整然と入室し、大統領に銃口を突き付けた。補佐官が指示する別動隊が執務室の机を探し回っている。

「よし、見つけたぞ。」


 補佐官が手にしているのは、某国全軍に命令を下せる暗号器のキーであった。

「このキーがあればミサイルを発射することができるのだ。我々の勝利だ。」

「おおーっ、やったぞ。願いはかなったぞ。」

 兵士たちの歓声に押されて、補佐官はさっそくキーに暗号を入力する。


「よし、予定通り、日本国宮川村に向けて、ミサイル攻撃を開始する。ここには低重力装置があるとの情報を入手した。そんなものが日本やA国の手に入ってしまえば、国際情勢が一気に決まってしまう。そこで、このミサイルで一気に吹き飛ばしてしまうのだ。」

「補佐官、ばんざ~い、ばんざ~い。」


 歓喜の声が大統領執務室に響きわたる中、補佐官はミサイル発射管制システムへのアクセスキーを暗号器によって生成する。このキーを用いてミサイル発射ボタンを有効にした。

「やめろ、そんなことをすればこの国そのものがなくなってしまうぞ。」

 大統領は必死に説得を続けるが、補佐官の耳には入らない。


「発射。」

 補佐官は短くつぶやくとボタンを押した。遠くの日本海にはミサイル発射装置を搭載した潜水艦が浮上する様子が執務室のモニターに映し出される。浮上した潜水艦は上部にあるミサイル発射ハッチを1本だけ開いた。しばらくすると内部より煙と炎が上がり、1本のミサイルが上空へと飛翔する。


「やったぞ。もう誰も止めることはできない。補佐官ばんざーい。」

 執務室は歓喜の声であふれており、

「もうこの国は終わってしまった。ミサイルを国土に向かって打ち込めば、他国が侵入する絶好の口実をあたえてしまうことすらこの連中にはわからないのか。」

 大統領はモニターに映し出されるミサイルの飛翔映像を見つめて力なくつぶやいた。


「びーっ、びーっ、びーっ」


 生徒が所有しているスマートフォンが授業中にも関わらず一斉に警報音を発し始めた。アラートJである。大型の台風や地震などの自然災害により被害が出そうになっている時、某国などがミサイルを発射して日本近海に着水しそうな時などに警報を発するシステムである。


「緊急警戒速報、某国が日本に向けてミサイルを発射したと思われます。落下警戒地域は、関東、中部、東海、日本海、太平洋です。対象地域のみなさんは直ちに屋内に避難し、机などの下に入って身を守ってください。」


 自衛隊及びA国の早期ミサイル警戒迎撃システムが直ちに起動、迎撃ミサイルを発射する。


「後、10秒、5,4,3,2,1、接触します。」


 ミサイルの存在を示すレーダ上の赤い点は残念ながら消滅せずに移動を続けている。


「・・・・破壊に失敗しました。」


 発射から到達までが短すぎて、迎撃ミサイルによる破壊は失敗した。


「ミサイル目標予測地点はC305/X201、長野県宮川村付近です。到達まで後15分です。」

 迎撃司令官は絶句した。今まで何回か飛来したミサイルは全て洋上に落下した。また、爆発した気配はなかった。しかし、今度は違う、確実に弾頭を搭載している。しかも弾頭が通常弾頭である保証はどこにもない。


「宮川村には静奈様が、女神様がいる。そんなところにミサイルを落となんて絶対に許されないのだ。」

 ミサイル発射の詳細をモニターしている総理大臣は官邸内に響き渡る大声で叫んだ。

「女神様をミサイルごときがどうこうするなんてことができるわけはない。」


 総理大臣は直ちにM機関に通じるドアを開けた。そして、M機関長の佐藤に命じる。

「女神様を安全な場所に避難して頂くことを最優先せよ。」


「はっ、女神様のお傍には今井村長と東谷がついております。女神様は宮川高校校庭地下の核シェルターに避難したと今井村長より連絡が入りました。後10分でミサイルは宮川村に到達します。」


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