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2章 幸福の王子様

君は僕の近くを

飛んでくれるようになる。


僕の巣の周りをくるくる

僕の周りをひらひら。


僕「今日も楽しそうだね」


君「うん がんばっているのだ」


会話を普通にできるようになる。

それだけでも、

嬉しかったはずなのにな。

僕はどうしてか

君の前では素直になれなかった。


それでも、君もいつしか

好意を持ってくれるようになって

僕の巣に遊びに来てくれるようになる。


「初めはなにもしない?」と

不安そうだったけど、

「なにもしないよ」と

うわべだけの言葉を並べた。


そして、君が神に祈りを捧げる時以外は

毎日少しの時間でも来てくれるようになった。


君は僕を見上げて少し上目遣いで話しかける。


君「いつも 寂しそうだね 

  何かあったの?」


僕「そんなことないよ 

  僕はいつもこんな感じだから」


君「そっか けど大丈夫

  話せる時がきたら話して

  くれたらいいよ」


僕「何を?僕には特に何もないって」


君「そう…?ならいいけど…」


黙って僕の顔を見つめる。


君「けどね…?

  話せない事がどんな事でも

  自分のタイミングで話して

  くれたら嬉しいな 

  私があなたから離れないって思う

  時が来てからでもいいから」


僕「…だから 何もないって」


僕はそう言いながら、目をそらした。


君「私は あなたの傷がどんなモノでも

  一緒に背負っていきたい」


僕「ははは 頼もしいな」


君「絶対…っ!私はあなたを

  包む闇から助けてあげる!」


僕「…っ!

  絶対って言葉…ホントは

  この世にはないんだよ…?」


愛していたんだ君の事。

けど、愛し方がわからない


僕のしてきた事、消したい過去、

醜い自分、話したら…


話したら、君に今のように

愛されなくなると思うと怖かった。

君がもう、僕の所に来てくれなくなると思うと凄く怖かった。


君は色んな話しをしてくれる。

自分の事、自分の家族の事、

色んな世界がある事。


僕は君の話しを聞くのが好きだった。

質問は多いけど…。


君「ここから出ないの?」


僕「僕はここからは出れないよ」


君「じゃあ私があなたの為に

  ここにいるあなたの力になれる

  ように少しずつ幸せの欠片を

  運んで来てあげるね?

  幸せの王子もツバメも徐々に自分を

  削り命を削りながらみんなを幸せに

  したんだ」


君はいい事を思いついたと

言わんばかりに

僕の方を見て笑った。


僕「…んっ…?」


君「ねぇねぇ 幸福の王子様って

  知ってる?」


君の純粋な思いを

最初裏切っていたのは僕…


君にただそばにいて欲しいから、

自分に嘘をつき自分を隠した。


僕は、君の優しさを利用してた。

ホントはあの時、君じゃなくても

よかった

寂しかっただけなんだ、

僕は誰からも愛されないから。

愛されたと思っても、

みんな最後には僕を裏切って

いなくなってしまうから。


そばにいてくれるのは、

いつも最初は誰でもいい

けど、君じゃないとダメだという自分を

作る、そして一緒にいてもらう。


もう、離れないと思ったら僕の

好きなように利用する。

僕の私利私欲を忠実に聞く、そう、

それは奴隷みたいな存在を欲しがる。


けど、もう辞めるんだ。

僕は孤独より強くなりたい。

君が僕を裏切らず、一緒にいてくれれば

それでいい。


君が溶かしてくれたんだ。

僕のこの心を、

僕の心は君がいてくれるなら

過去のような闇にはもう呑まれない。

もう、愛してくれる者を失いたくない。


君「ねぇねぇ どうかしたの?

  いきなりぼーっとしちゃって⁉」


僕「…ううん…何でもない…

  知ってるよ?幸福の王子様」


君から目をそらしながら、

僕は精一杯笑顔を作った。

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