最終章 「真実の愛」
出会いというのはとても不思議で、
恋というのはとても運命に近い。
巡り合わせというのは凄い縁で、
愛というのはとても奇跡に近い。
好きになっても、相手が好きになってくれるとは限らない
好きじゃなくても、相手が好きになってくれるかもしれない。
それは自信になったり、
私利私欲の欲に負けてしまったり
それぞれの特別な感情が生まれたりする。
好きになる事も、好かれる事も凄い事。
この世で全然違う人生を、生き方を
してきた者が、互いの何かに魅力を感じて好き同士になれる事は、とても不思議で本当に1番凄い事。
神も、運命も、愛もそれぞれの
生き物に必ずあるものなのに
誰も見た事がない。
けど、形がなく目に見えないのに
みんな信じてる
疑いと不信を抱えながら。
ほんと不思議だよね?
この世は矛盾の連続だ!
この世は答えのないものばかりだ。
それを知っていても、それを悟っても、
ここ(世界)でそうやって生きてしまう。
意味がなくても、意味を見出だし
生きていかなければならない。
神はいない、運命はない、愛はない…
そうすれば生きる意味もなくなる。
だから、生きているなら
それを信じなきゃいけないのかな?
まぁ、せっかく生きているのに、
絶望だけ見てもつまらないもんね。
生きているなら望みたい、希望を見たい、それは普通で当たり前の事だ…
夢を見るくらい誰だって出来るんだから、誰だって希望を持つ事が出来る。
神を信じなくても、運命を信じなくとも、愛を信じないのは可笑しいね。
僕はホントはね?
闇にカッコつけてただけなんだ
誰かに相手をしてほしくて
愛してほしくて、闇に堕とされた
だけなんだ。
結局、寂しかっただけなんだ。
どんなに理屈を並べても
ホントはただのワガママなだけだった。
それじゃあ、きっと「真実の愛」なんて
手に入る訳もなかった。
そして、君もそんな感じだったから
僕らじゃきっとどこまでいっても、
蜘蛛と紋白蝶じゃなくても、
もし、あの時まだ一緒にいれたとしても
絶対生まれない愛だっだと思う。
僕は死んだ…
地獄に君と共に堕ちた。
もう、戻らない。
深い深い闇の世界は真っ暗で寒くて、
紅い光に導かれ、僕の意識は薄れていった…。
太陽が弱く優しく光り、寒い風が
通り過ぎる。
空気は澄んで、鱗雲が浮かんでいて、
夜になれば綺麗に月が輝く。
そこに、一匹の大きな蜘蛛がいた。
その蜘蛛は、葉っぱが色づいた木の下の
木の葉の下で目を覚ます。
蜘蛛「んっ…!
…っいってぇ~…
頭がすっげぇいてぇ~‼」
蜘蛛は周りを見渡して、深呼吸をした
蜘蛛「あれ?なんだっけ?
ここはどこだ?
僕は誰だっけ…?」
とりあえず、蜘蛛は近くにあった
木に登り巣を作った。
ふぅっとため息を吐き、少し落ち着き
ぼ~っと空を眺めた。
蜘蛛「まぁいいかぁ…
木から落ちただけだろ
頭痛かったぁ」
夜になり、お月様が空に昇る
その日は月が紅く光っていた。
蜘蛛「おっ!
これが闇の世界の紅い月か
初めて見たような
見た事あるような…?」
蜘蛛は紅い月を見ながら、少し笑った。
巣の上で、ぼ~っとしながら蜃気楼の
ように見える紅い月を見ていた
蜘蛛「闇の世界の紅い月
運命ねぇ~?
僕にはただの赤く光った月に
しか見えんがね?
特別なようには見えんがね~」
蜘蛛は紅い月に話しをかけた
紅い月が、話しをかけてきた気がした
紅い月「キミはそこから
まだ出れないの?」
蜘蛛は普通に言い返す
蜘蛛「出れないも何も今はまだ
出ないだけだ
出たい時に出て
いたい時にいる
僕は自由な蜘蛛だよ?
何を言ってるんだ?」
気のせいだったのか、紅い月はそれ以上
何も喋らなかった。
蜘蛛は、その場所に飽きたから
違う場所に行く事にした。
蜘蛛「よし!次はどこに行こうか?
向日葵の丘?
綺麗な泉がある場所?
ん~?まぁとりあえず
決まらないからフラフラ
どっか行くか」
蜘蛛は別に何も持っていないから、
そこから身軽に出ていった。
蜘蛛はのんびりノコノコ歩く、
弱い太陽に背伸びをし、あくびを
しながら。
山を歩き、谷を歩き、大きな湖を超えて
向日葵の丘を通り過ぎて
また、巣をはり、かかった虫を食べたり
食べなかったり、
誰かを愛してみたり
愛してみなかったり自由に歩いている。
そこに、大きな高い山を見つける
蜘蛛「おおお!でっか‼
ここに登れば獲物もたくさん
捕まるし世界を全て見下ろせる
空にも近いから
いい気分でいれそうだ」
蜘蛛はそう思い、大きな高い山を
えっさほいさと登る。
そして、高い山を登りきると、
そこに小さな蜘蛛が大きな木の隅に
巣をはっていた。
その小さな蜘蛛は、巣にかかった
獲物を逃がしていた。
蜘蛛は、それを見てビックリして
思わず声をかける
蜘蛛「何してるの?
獲物を逃がしちゃって⁉」
彼女「…別に…」
蜘蛛「なんか寂しそうだね?」
彼女「そんな事ないよ
私はいつもこんな感じだから…」
蜘蛛「無理してない?
どう見ても寂しそうだ」
彼女「何が?
特に何もないよ…」
大きな蜘蛛は目をキョトンとさせた。
そして、何を思ったかこんな言葉を
言った。
蜘蛛「ここから出れないんでしょ?」
彼女「…っ⁉なんで?」
蜘蛛「なんとなく…大丈夫
どんなに辛くても時が経てば
この世は悪くないものさ
きっと立ち直れる!
ひとりぼっちでいなければ」
彼女「私はいつもひとり
…それでいい」
蜘蛛「なにかあったの?」
彼女「別に…過去の事なんて
忘れてしまった」
蜘蛛「…傷つけてしまうくらいなら
自分が忘れてしまった方が
楽だから?」
彼女「…っ⁉
そうっ…だよ…」
小さな蜘蛛はビックリした顔をした
大きな蜘蛛は何かに気づいた。
蜘蛛「…君は世界が違う者に
恋をしたね?
とても辛い恋を知ったね?」
彼女「……っっっ⁉
ど、どうかな?
別に何もないよ
何も考えずにバカだから
こう見えても楽しく生きてるよ
今もここを動けずに…」
蜘蛛「…そっか
それが君の精一杯の強がりなら
今はそれでいい
話してもいい時がきたら
話してよ?
話すだけでも少しは楽になれる
はずだから」
彼女「………」
蜘蛛「どちらにせよ僕らは獲物を
食べないと生きていけないよ?」
彼女「…ふふ…そうよね」
小さな蜘蛛は、空を眺めて
ぼ~っと思いにふけていた。
そんな時に彼女の巣にまた
虫がかかった。
彼女は慌ててその虫を糸からほどいて
また、逃がした
蜘蛛「また逃がした…
食べないと死んじゃうよ?」
彼女「別に食べる為に糸をはっている
わけじゃないから…」
蜘蛛「…ここが君の居場所だから?
蜘蛛だって傷つけたくて
傷つけているわけじゃない
もんね…」
蜘蛛は、なぜかこの小さな蜘蛛の
気持ちがわかった。
彼女はビックリした顔をして
蜘蛛に質問をする
彼女「あなたは出れたの?
心の闇から?」
蜘蛛は彼女が何を言っているのか
わからなかったけど、悟ったように
答えた
蜘蛛「僕は蜘蛛だもの
出るも出ないもないよ
自由に好きに生きている
きっと何かが終わったんじゃ
ないかな?
きっと君も何かが終わる時が
くるよ」
蜘蛛は誰かに言われたような言葉を
彼女に言った。
小さな蜘蛛は、何かを考えながら
思いにふけていた。
なんか寂しそうに…
蜘蛛「ねぇ…?
よかったら君の隣に巣を
作ってもいいかな?
たくさん歩いてきたから
疲れちゃってさ」
彼女「…んっ?べ…別にいいけど…
私達は蜘蛛だから
どこに巣を作ろうが
自由なんでしょ?」
蜘蛛「そうだね ありがとう」
なんか知らないけど、
蜘蛛の心の闇と似ている感じの
彼女を放っては置けなかった。
そして、蜘蛛達は隣同士お話しをしたり
ぼ~っとしたり、月を見上げたり、
とりあえず一緒にいた。
そうして少しずつ仲良くなり
時間が流れていった。
鈴虫が鳴いている
綺麗で切なさ残すその声は、
どこかで聞いた事のある鳴き声。
ゆっくり時間が流れる夜に、
紅い月が珍しく現れた
彼女「今日は紅い月だね
闇の蜘蛛が唯一信じる運命
その紅い光は過去の罪を浄化
させ生まれ変わらせてくれる月」
蜘蛛「そうだねぇけど僕にはなんか
そんなものには思えないん
だよなぁ~
ただ、蜃気楼のようなもので
紅くなってるだけな気がする」
彼女「えっ⁉そんなわけないじゃない
私達が紅い月を信じなくて
何を信じるのさ⁉」
蜘蛛「そんなにビックリしなくても
僕はそうだなぁ…
僕の信じるもの…
ねぇ…?
真実の愛って知ってる?」
彼女「聞いた事はあるけれど…
あれは神を信じる者達が
ただ夢を語っている
神の王国にだけあると言われて
いた
ただの幻想でしょう?」
蜘蛛「僕はね?
神は信じないし
紅い月も何にも見えない
けど真実の愛は3つの世界に
あると思う…」
彼女「あ…あなたは変わっているのね⁉
真実の愛なんて信じる
闇の蜘蛛がいるなんて
思わなかったわ」
小さな蜘蛛は不思議そうな顔をして笑った。
蜘蛛も、何を言っているんだろう?
と、思いながら彼女に素直な気持ちを
伝えた
蜘蛛「神の王国、中立の国、闇の国
その中にちゃんと真実の愛は
必ずきっとあるよ」
彼女「ふふふ
そんな自信満々に
蜘蛛が愛を語るなんて」
楽しそうに小さな蜘蛛は笑う
蜘蛛「おおお!笑うなよ~
それぞれ信じる者は
違うの~」
彼女「面白いなぁ あなたは
私の悩んでいた事が
小さく思えてきたよ
あなたといると
とても暖かい…」
そういうと彼女は、優しい向日葵の
ような笑顔で、大きな蜘蛛を
上目遣いで見つめていた。
蜘蛛「じゃあ僕は君の太陽に
なろうかな
暖かい道しるべになれるような
闇に差し込む光のような!」
冗談まじりに蜘蛛は、照れた顔をして話した
笑う彼女もそれに乗って冗談まじりに話す
彼女「闇の蜘蛛同士が光の話しを
するなんて…わかった!
じゃあ私はあなただけを
見つめている向日葵になる!」
蜘蛛は、嬉しくなり小さな蜘蛛に
特別な感情が生まれた。
蜘蛛「なっ…⁉
笑ってくれたと思ったら
そんな事言ってくれるなんて…
なんか凄い嬉しい‼」
彼女「あっ…‼
なんか恥ずかしくなって
きちゃった…
あなたといると
どうも自分がおかしくなる
自分の心が乱される」
小さな蜘蛛は顔を真っ赤にした
蜘蛛「それをこの世界では
恋というのだよ」
蜘蛛は、悪戯に彼女に話す
彼女「ば…バーカ!
ねぇ…?私の事どう思う?
…好き…?」
彼女は下を向いて自信なさげに呟く
蜘蛛「ホントは凄い優しい子なんだと
思う 可愛くて小さくて…
けどね?好きではないよ?」
彼女「…っ!…そうだよね…
こんな汚れた醜い私なんて…」
蜘蛛「うん!好きではない!
僕は君が大好きなんだ!」
彼女「…っ‼
バッ…バーカッ‼」
彼女は、安心した嬉しそうな顔で
ポロポロ涙をこぼした。
彼女「今度 意地悪したらあなたを
食べてやるからね⁉」
蜘蛛は笑いながら、小さな蜘蛛を
後ろからギュッと抱きしめた。
そして、振り向く彼女と優しく
唇を重ねた…
蜘蛛「ねぇ…?
このまま君のそばにいても
いいかな?」
キスに照れた可愛すぎる彼女に
そっと呟いた。
小さな蜘蛛は少し黙って、
思いにふけてから、強く何回も頷いた。
出会いは、とても不思議だ!
もう誰も愛さないと思っても
好きな者、守りたい者、生きていれば
きっと出会える。
誰かが言っていた気がするんだ。
「出会いは不思議だね」
僕は、時間が過ぎれば過ぎるほど
この言葉が何故か思い浮かぶ。
彼女と出会って恋をして
初めは彼女が放って置けなかった
だけなのに、彼女を好きになり、
一緒にいたいと思った。
それから時間がまた過ぎ、
白い世界がやってくる。
ひらひら舞踊りながら、
白く冷たく舞い降りてくる綺麗なものは
一面を白に染める。
蜘蛛は小さな蜘蛛と木に穴を掘り、
中に入り寒さを凌ぐ。
彼女は、蜘蛛の胸の中で暖まっている。
蜘蛛は彼女の温もりで暖まっている。
彼女「あれ?
胸の辺りに血の傷の跡が2つ…
薄くなっている血の傷の跡と
凄い深くある血の傷の跡がある」
蜘蛛「ああ…そうなんだ
なんか多分前からあるんだよ」
彼女「ふふ 私達は蜘蛛だもの
心に傷の跡くらいあるか
私はあなたにどんな事が
あったんだとしても
好きに変わりはないよ」
蜘蛛「ありがとう 何だろう?
君となら安心した真実の愛が
見える気がする…」
彼女「ほんと?嬉しいな!
私には真実の愛がどんなものか
わからないけど」
彼女は、下を向きながら嬉しそうに
けれども、わからないから
不思議そうな顔でいる。
そして、思いついたように蜘蛛に
質問をする。
彼女「あなたにとって
真実の愛って何?」
蜘蛛は、真実の愛の答えを見つけていた
けど、誰かにその答えがわかったら
教えると約束したような気がしていた
から、今まで胸の中にしまっていた。
蜘蛛はきっと、愛する者へ伝える為に
答えを探していたんだ!
と、思い彼女に教えてあげた
蜘蛛「僕は頭が悪いから誰かみたいに
難しくはわからないけれど…
真実の愛は性格、考え方、
生き方…
どの世界でも違うのは当たり前
だから、合う合わないじゃない
かといって我慢でも忍耐でもない
ただ愛する者とどんな事が
あっても一緒にいたいか
相手が自分とどんな事があっても
一緒にいたいか?
何があっても互いに想い
一緒にいれる事
ずっと一緒にいる事
それが死ぬまでずっと続いてこそ
きっと真実の愛になるん
じゃないかな?
と思う…あれれ?なんか変だな
言葉にすると上手く
伝えられない」
彼女は優しく微笑む
彼女「うふふ そんな事ないよ?
あなたの真っ直ぐで正直な気持ち
あなたの言葉でちゃんと考えた
真実の愛は何よりもきっと
真実な答えだよ?」
そこに、年老いた夫婦がゆっくり
ゆっくり手を繋いで寄り添いながら
歩いているのを見た
蜘蛛「あっ!ああいう感じ!
僕はあれが真実の愛だと思う!
一緒でなければ乗り越え
られないもの!
わからないものを共有しながら
ああやって寄り添い
生きてきた証とか形はないし
誰も認めてはくれないけれど
お互いだけの心にあるような
優しい愛しい気持ち」
彼女は、蜘蛛の指差す方を見つめ
その老夫婦を見て話す
彼女「いいね
おじいちゃんとおばあちゃんに
なっても仲良く寄り添って
手を繋いでいるなんて」
蜘蛛もその形を見ながら答える
蜘蛛「きっとたくさん色んな事が
あったんだと思う…
大変な事、辛い事、悲しい事…
けど離れるなんてしなかった
あれが僕が思う真実の愛だ!」
彼女は満面な笑みを浮かべ
そして、少し不安げに蜘蛛に言った
彼女「…ねぇ…?
あなたの考えた真実の愛の
答えを私も一緒に信じて
みてもいいかな…?」
蜘蛛は、太陽のように明るく、
優しく微笑んだ
蜘蛛「もちろん」
彼女は、向日葵のように蜘蛛を
見つめて優しく微笑んだ。
長い白い世界は終わり、
外に緑の息吹が漂い始めた頃、蜘蛛達は
外に出た。
蜘蛛が偶然、たどり着いたこの場所は
中立の国で1番高い山だったらしい。
そして、蜘蛛達の住んでいた
愛を見つけ、愛を育んだこの木には
なんか見た事あるような、懐かしいような
満開の桜の華が咲いていた…。
この世界は、神の国、中立の国、
闇の国の3つの世界がある。
神の国では神が、闇の国では
紅い月(運命)が信じられていた。
中立の国では、どちらも信じる者も
神だけ信じる者も、運命だけ信じる者もいた。
そこに闇の国の異端児
深い深い闇に堕とされた大きな蜘蛛
がいた。
その蜘蛛は、もちろん神なんて信じない
闇の国で、唯一信じられている紅い月
(運命)も信じない。
その蜘蛛が唯一信じているもの…
それは、この世界で神も運命をも超える
という、たったひとつだけの希望
「真実の愛」を信じていた。
虫達はバカにしたように言う
虫達「蜘蛛が真実の愛を信じている?
全てを食べてしまう
あいつらが?
何を血迷っているんだ?
不憫な闇に堕とされた
失くしてしまうだけの
闇の蜘蛛のくせに⁉」
大きな蜘蛛と小さな蜘蛛は、それを
聞いて笑って言い返す
蜘蛛「バーカ!うるさいんだよ
彼女 見た目、生き方、過去を
差別する事しかできない
自分を守る事しかできない
バカにする事しかできない
弱い者達め!」
「僕らの言う事は絶対だ‼
生き方はさまざまでも
目的地にたどり着けたらそれでいい」
不安だからじゃない
自信がないからじゃない
嘘をつきたいからじゃない
蜘蛛達が、感じる、信じるものが
ただ絶対の愛だっただけ…
神にバカにされようが、
運命に呆れられようが、
蜘蛛達はきっと
おじいちゃんとおばあちゃんになっても
手を繋いで「真実の愛」を信じている…。
あっ!そうそう3つの世界以外に
世界がもう1つあるとしたら
蜘蛛達の作ったこの闇の世界を…
「愛の世界」とでも名付けようか…?




