26章 運命
空を見上げて、僕は微笑んだ。
僕「今日の月は紅い月だなぁ
今日は僕の運命の日だ」
こんな話しも君としたっけ?
僕「今日は紅い月だ⁉
紅い月は罪を犯した者達が
浄化されて生まれ変われる
時なんだよ‼」
君「ざんね~ん
あの紅い月は太陽と空気との
蜃気楼みたいなもので
その条件が重なると紅く
見えるだけなんだよ」
僕「えっ⁉そうなの⁉
むむむむむむっ!
いいじゃないかぁ…
そう信じていたって…」
君「ふふふふふ
ごめんごめん
可愛いんだから」
紅い月は闇の世界では「運命」
と呼ばれていた。
その見る者によって意味も役目も違う。
神の王国に住む紋白蝶には現実的な
ものにしか映らない。
闇の世界と神の世界の価値観
生きる物事は全て違っている。
恋をしていたから、そんな事全然
気にしていなかった。
恋は盲目…
恋をすれば周りが見えなくなると
言ったものだな。
遠くに神の王国の虫達が、血の跡を
追って来るのがわかった。
僕「ふふふ…」
僕は少し笑い、紅い月を
ぼ~っと眺めた…。
僕「バーカ…
この世に罪なんてないんだから
お前らごときの罰なんて受けねぇ‼」
こんな汚れたくだらない世界に、
罪なんてホントにあるんだとしたら
この世界丸ごと罪のようなものだ。
神だって罪、神の王国も罪、
見てみないふりをするどちらでもない
中途半端な国も罪。
弱さが他の者より強く、闇に堕とされた
欲望だけの僕らも罪。
けど、それじゃ神も
どうしようもないだろ?
だったらこの世に罪なんてない。
僕は追ってくる神の王国の者達に、
僕らの愛が汚される前に命を絶つ。
胸の辺りにある、
血の跡に牙を突き刺す!
この気持ちのまま
心が止まってしまえと。
死ぬ時に紅い月の光に照らされて僕は昔を思い出す…。
この胸の辺りの消えない血の跡。
これは僕が昔、愛した者に裏切られ
その者を殺して食べた。
そして、僕は後を追うように
心を刺して死んだんだ。
空っぽになって生まれ変わった僕は
闇の世界に堕とされた。
ずっと残る心の闇、傷痕と共に。
そっか、だから僕はこんなに
臆病だったんだね
僕「紅い月よ
僕に何を浄化させた?
また繰り返してしまったよ」
僕は全てを思い出す。
あの巣から出られなかった事も
そこに強い愛の跡があったから。
異常に愛の裏切りに怯えていたのも、
嫉妬に狂う自分が嫌いだったのも
全て僕の忘れていた記憶のせいか?
昔、愛した者を食べた蜘蛛…
それは僕…
そっか…僕が地獄蜘蛛だったのか…
あんなにめんどくさい蜘蛛だと
馬鹿にしていたのに、僕だったのか。
君は気づいていたのかな?
僕の胸の跡を見た時に黙って何か
考えていたもんね。
そういうのは勘がいいね?
だから、離れたのかな?
けど、思えばキリがないよね?
愛の答えなんてどこにもないんだから。
その時の決断が正解!
地獄に堕ちていく…
深い深い本物の闇の世界へ。
もう離さない、君との愛も一緒に
この最後の愛に溺れ、
もう戻れなくていい…。
君を愛した僕の愛
今も悲しく残ります
君と僕の争いの許せない愛の色は
真っ赤に染まる血の色でしょう…?
愛を重ねた成れの果て
涙なんて生温い
愛の形がもし、この世にあるのなら
真っ赤に染まる
愛した者の亡骸でしょう…?
けど、僕は愛した者を食べたい訳じゃないよ?
僕を信じさせ、愛させたのに僕の通りにならない、裏切り傷つける。
好きだから自分のものにしたい。
君と一緒になりたい、離したくない!
けど、結局ずっと一緒にはいれずに
僕から離れようとする。
そばから離れないと言ったのに。
約束を守らないのは許さない!
どんな理由があろうとも…‼
どんなに相手が何を思おうとも…!
僕「僕の言う事は絶対だ‼」
なのに、愛したけど言う通りにならない
だから、食べるしかなかったんだ。
そう、全部君のせい
僕じゃない。
君が言う事を聞いていれば
こうならなかった。
自由も奪わなかった!傷つけなかった!
ねぇ?そうでしょ?
僕を好きだと言うのなら全てを愛せ。
中途半端に手を出すな
助けたい?可哀想?不憫?
笑わせるな!お前らごときに
綺麗事の愛しか知らないお前らに
何がわかる?
「真実の愛」は神の王国にしかない?
馬鹿げてる。
もしも、そんなんだったら神が
1番の私利私欲の化身じゃないか?
神から離れたら生きていけない
天罰が下る。
神の世界に行けなくなる。
そうやって、脅して信者を作って
楽してるだけだろ?
少なからず、生き物は神を崇め信じてる。
少なからず、生き物は神に恐怖を
植えつけられている。
神は絶対、完璧だと全知全能だと
思っている。
ただ、生き物はそうやって絶対という者
がないと不安で仕方ない。
この世界はみんな弱くて、孤独、不満を
感じているから。
その中で愛というものは神が最初に
与え、神が最初に取り上げたもの。
神は生き物を完全には作らなかった。
完全に作っていれば争いなんて
起きなかったのに。
僕は思う
神は生き物を、愛を作っていないんじゃ
ないかと。
そもそも神なんていないと。
神が生き物を作ったんじゃない!
生き物が神を作ったんだ。
愛は、本物の愛は、
生き物それぞれ違うから
僕の愛し方、僕の考えが異状と思われても仕方ない。
正義は生き物それぞれ違うから
自分の正義が正しいと思っても
違う生き物には悪者、間違いだと
思われても仕方ない。
運命はそれぞれ違う。
ごめん…紅い月よ
僕はこういう考え方でしか
愛し生きられなかった。
生まれ変わっても…
どれだけ間違いを繰り返しても…。
この愛に罪はないんだ。
だから、罰もない!
間違いだって、もうないよね?
ねぇ…?
僕の愛した紋白蝶よ…。




