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1章 小さな紋白蝶

恋に間違いってあるのかな?


全ての事に意味があるというけれど、

終わった恋に意味なんてあるのかな?


僕には、まだわからない…。



僕は、自分のテリトリーだけで

生きていく強い強い傲慢な蜘蛛


自分が絶対の誰とも共存しない

自分だけの世界で生きている。


他の世界になんて興味はないし、

テリトリーに入ったものだけを

食べて生きている。


君は、自由に色んな世界を見て

生きている弱い弱い臆病な紋白蝶


自分の信じた神とみんなと共存する

世界で生きている。


色んな世界に興味を持ち、

色んな世界を飛んで、

色んな花の蜜を吸って生きている。


僕は他の虫達を犠牲にして生きている。

君は他の虫達と仲良く、

誰も傷つけないように生きている。


こんな僕らが恋に落ちる事なんて、

最初から間違いだったのかな…?



ある日、僕は空をぼーっと眺めていた。

流れる雲、光る太陽、飛んで行く虫達を

横目にぼーっと。


僕「お腹すいたなぁ~ 

  今日は何もかからないなぁ」


糸を張って待っているだけ


ここでは僕が1番。

逆らう者なんていないし、

この糸に引っかかればこっちのもの!


後は、弱るのを待って

縛って食べてしまえばいいから

他の虫達の事なんて考える

必要なんてない。


この小さな世界は全て僕のもの

僕はここでは「絶対」なんだ。


色んな世界があるだろうけど

知ったこっちゃない


けど、ここに入ってくれなきゃ

僕はずーっとひとりぼっち

な~んにもない。


虫達は言う


虫達「あそこに近づいてはいけない」


僕「バーカ うるさいんだよ 

  弱い虫達め!」


そこにひらひら小さい紋白蝶が

飛んでくる


明るい感じでみんなと仲良さそうに、

笑顔を振りまいて

それを僕は横目で見ていた。


なんか一生懸命でひらひら

なんか忙しそうにひらひら


僕「偽善者め バカみたい」


と、思いながら君に興味を持っている

僕がいた。


今日もせかせかしているな

今日は思い詰めてるな

今日は笑顔だな

今日もなんか一生懸命だな


見ているとなんか羨ましくもなった。


気づくといつのまにか毎日君を

目で追うようになる。


僕「可愛い声しているなぁ 

  あーやって話すんだぁ」


「君と話してみたいな」

そう思った。


僕は君に話しかける。


僕「大変そうだね 大丈夫?」


君は普通に答えてくれた。


君「ちょっと大変 けど大丈夫」


そして、たわいもない話しをした。


それから、ちょくちょく話しをして

少しずつ仲良くなっていく。


けど、君は僕の顔を見て

話しをしなかった。


下を向いて、ちらっとたまに

僕の目を見たと思えば、また

下を向いて楽しげに恥ずかしそうに話しをしていた。


僕はそんな君を少し可笑しい子と

思いながら、なんか可愛い子だなぁっと思って話しをしていた。


話してるうちに不思議な気持ちが

芽生えた。

君に好意を持っていた。


この好意がなんなのか

確かめたくなって僕は君を誘う。

けど、なかなか君は僕の誘いを

受けてはくれない。


神様の教えとか、勉強で忙しいと。

上手にはぐらかされている感じがした。


神様?

僕は君に何を言っているのかと

聞いてみた。

僕は君が神の王国から来たのだと

その時初めて知った。


それでも僕は君と一緒に話しをしたいと

何度も誘った。


君はやっと少しならと来てくれた。

とても嬉しかったのを覚えている。


誰もいない

夜の木の上でお話しをたくさんした。


とても話しやすくて、なんか面白くて

変なものが好きで、変わり者で、

見た目の清楚な大人しそうな感じとは

違う、活発で無邪気な子供のよう。


凄く楽しかった。けどもう、

君を誘う事はしないと思った。


僕とは違い過ぎるその光の感情は

僕には少しキツかった。

この1回で僕は満足、後は君とまた

ちょくちょく話す関係でいい。


と、思った矢先君からも誘ってくれる

ようになる。


こんな、真っ暗な僕といて

楽しかったのかな?

そう思いながら、誘ってもらった事が

嬉しくて僕は君といる事が多くなった。


光の感情は僕には強すぎて、

心が痛くなって少し苦しかったけど

それ以上に、君といる事が楽しくて

僕は痛いのを我慢してでも

君といたいと思った。


君と一緒に居られる時は全ての痛みを

忘れたふりをした。


今までテリトリーに入る者

全て食べてきた。

けど君だけは、なんか違う


自分以外の事なんて、興味もない僕が

君の事がもっと知りたい

そう思えたんだ。


君の見た目、小さくて可愛い姿、

透き通る綺麗な声、明るく面白い子。


どんな僕の適当な言葉にも

ちゃんと考えて答えてくれる所。


こんな僕を一生懸命

知ろうとしてくれる所。


そんな君を想うと、とても暖かく

僕の凍った心が溶けていく気がした。


けど、君の事も、君の過去も、

君の心にあるドロドロしたモノも

あの時、僕は気づけなかった。


僕は分かったふりをしていただけで

ホントは何ひとつ、

分かっていなかったんだ…。


結局さ、僕の想う気持ちと、

君の想う気持ちが最初から

違っていただけなんだよね?


僕の求める君と、君の求める僕が

違っていただけなんだよね?


けどね?

そんなの最初から分かっていた。


愛してるから、いつかはお互い

分かり合えると、想い合えると

信じているだけ無駄な事くらい。


そりゃそうだ。

最初から自分の思う気持ちを

相手に近づけようとは

お互いしていなかったんだから。


僕と君には、そんなの出来や

しなかったんだから。


君は、蜘蛛が危ない生き物だと

知らなかったのかな?

僕は、紋白蝶が僕とは生きられない

事を知らなかったのかな?


なのに…


「ホントは君と出会った時から

 僕はもう君を好きだったのかな…?」

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