18章 消去不可能
誰も傷つけない
生きている限りそんなの無理だ。
生き物は傷つけ傷つき生きるもんだ。
それは、どの生き物も同じだろ?
僕は今、意味もなく何も食べてない。
少し君を思い浮かべて、そっと
花の蜜を飲んでみた。
僕「こんなものが美味いのかぁ…」
僕はふわっとした風に顔を持っていかれ
上を見る、そこには青い空が広がっている。
この青い空の下で君はまたどこかで
飛んでいるのだろうか?
忙しそうにひらひら…
一生懸命にひらひら…
誰かを想いひらひら…
僕を忘れてひらひら…
僕の心は痛かった…。
もう好きじゃないのに、もう諦めているのに僕の心は痛みを忘れてくれない。
死んでしまおうか?
なんか楽になりたいや。
そう思っていたって思うだけ、
僕は臆病だから。
そう言えば最初の頃、君に
僕はいつ死んでもいいみたいな事
言っていたっけ…?
僕「僕はいつ死んでもいい
別に後悔しないよ
面倒くさいの嫌いだし
後悔ないように生きてる」
君「誰も死んじゃダメ
自分の命に権利に持ってる者
なんていないよ
全て与えられたもの
どうやって用いるかの選択肢の
自由はあるけれど
故意に終わらせる権限なんてない
だから苦しくても辛くても
その中で意味を見出だし学び
生きていかなければならない!」
僕「なぜそこまでして生きる必要が
あるのかわからないね
悲しみ憎むこの世界
僕は意味なんて求めない
愛も心も欲しくない
誰かの身体だけあればいい」
君「1番タチの悪い奴がいる
失敗や悲しみは確かに苦しいし
悲しい…けどそれを経験した分
他の生き物を幸せにできる
優しさを持ってるんだよ?」
僕「ふふふ…そんなのとうの昔に
忘れちまった
僕の心はだいぶ前に壊れたんだ」
君「大丈夫
心が壊れて悲しいも楽しいも
何もかんじられなくなったと
しても…いつか治って
立ち直れるから」
僕「僕の愛なんて小さいよ?
狭くて窮屈で縛られたままさ
きっと治らない」
君「自分の愛を広げないと傷つく
よりもずっと後悔しちゃうし
本当に愛したい者を愛せなく
なっちゃう
大丈夫 きっと解放されて治る!」
僕「君に僕の事なんてわからないのに
どうしてそんな事を言って
くれるの?
君は僕に何を求めているんだい?」
君「何も?辛い時に支えになれたら
それでいい
あなたがいつも笑顔で元気で
いてくれればそれだけでいい」
僕「…なんでそこまで?
なんか騙されてる感じがする
じゃあ完璧に愛してみてよ
てか僕から何が欲しいの?」
君「生き物っていうのはね?
不完全だから完璧は無理
でも不完全なりに完全に近づく
努力はできる
けど愛は自信の力だけじゃ無理
助けを頼る謙虚さも必要
私はね?ただ身近なみんなと
愛するあなたを守れる強さが
欲しい
その為に、精神的にも感情的にも
安定した私になりたいんだ」
僕「難しい…君の話す事はいつも
難しい
真実の愛は簡単にじゃなく
ちゃんと言うとすると君にとって
どんなものなの?」
君は不思議そうに見つめ、立て直す
ように真実の愛の定義を話す
君「あれれ?気持ちを伝えるのも
難しいね…
愛は真実の愛はね?
辛抱強く、親切で、妬まず、
自慢せず、思い上がらず、
自分の利を求めず、刺激されても
苛立たず、傷つけられても根に
持たず、真実の事と歓び
全てを信じ、全ての事に忍耐
します…
この気持ちが真実の愛よ?」
僕「んんんっ?
なんだそりゃ⁉
すっげぇつまらない!
僕の愛はそんなんじゃない」
君「じゃあ あなたは真実の愛って
なんだと思ってるの?」
僕「ん~…?
まだわからない…
答えがわかったら言うよ」
君「ふふふ じゃあ答えがわかったら
教えてね?
ではここで問題です
この話しのきっかけになる
1番最初の話しはなんだった?」
僕「あれ?なんだっけ?ん~……?
あ…っ‼
僕はいつ死んでもいいよって
事だった‼」
君「せいか~い ほら?
今あなたの生きる意味が
みつかった!」
僕「………んっ???」
君「私にあなたの真実の愛の答えを
伝えなきゃいけないでしょ?
今はまだわからなくても
真実の愛の答えを探して私に
教えなきゃならない
これはあなたの大切な生きる意味
いつでも死ねなくなったね?」
僕「な………っ‼
むむむむっ!
答えなんてすぐにみつかるさ!」
君「うん
あれ?けど答えみつけたとしても
死んじゃうの?
私と一緒にいたくない?」
僕「いっ…いたい…」
君「じゃあ いつ死んでもいい事には
ならなくなったね
一緒にいよう」
君は悪戯な笑顔で僕にそう言った。
君はどうしてそんなに僕の心に
入ってくるんだろう…?
暖かくて、柔らかい、僕のどんな闇も
消してくれる。
あの頃は僕にとって、
君はそんな存在だった。
けど、今君はいなくなった。
僕の恐れていた事が現実になった今、
僕には何もない。
僕の生きる意味
君に真実の愛の答えを伝える事。
今、君に伝えられなくなった
本末転倒だね?
君がいた日々は夢か幻か?
君といた証拠を出せと言われても
目に見えるものでは何もないけどさ、
目に見えないもので言うなら
この胸に残る痛み、この頭に残る
記憶だけ。
そんなの悲しいじゃないか?
だから、僕は君の事が大嫌い。
僕のそばにいない君なんて大嫌い!
僕を裏切った君なんて大嫌い!
けど、君のそばで笑顔でいた
僕は好きだった。
君の優しさの隣にいる僕は好きだった
君と手を繋いで歩いた僕が好きだった。
そっか、僕は自分が好きだったんだ
君の事なんて初めから好きじゃない。
僕「ってね…バーカ
うるさいんだよ!
ホントに弱い蜘蛛め!」
君を嫌いと言いながら、ホントには
嫌いになれない僕を笑った…。
ねぇ…?
憎しみあって、傷つけあって
終わった君にさ
僕は何を夢見ているのか知らないけどさ
どうしても消えていかないよ?
さよなら、さよならと言って
同情を誘う僕ら。
歩幅も合わせられないのに
別れられなかった僕ら。
ありがとうと言えたなら、さよならが
できるのかな?
正直、何を試しても君が消えていかなくて困っているんだ…。
君と離れてから、君といた日々を
無かった事にしていた。
現実を見たくないから、苦しくても
知らないふりをした。
過去を振り返りたくないから
悲しくても前だけ見た。
僕の心を無視すればいいだけ簡単だ‼
なのに、なぜ君はずっと僕の心から
出ていかない?
毎日、毎日君を想う。
考えたくなくても、忘れようとしても
君の面影が離れていかない。
君の温もりを他の温もりで覆うとしても
隠せない。
君の匂いを消そうとしても、記憶に
残ってる。
君の笑顔を忘れたくても、目をつぶれば
まぶたの裏に甦る。
君の声を消したくて、耳を塞いでも
頭から君の声が聞こえてくる。
「ドウシタライイノカナ…?」
君への素直な気持ちを隠したまま
だからかな?
離れてからずっと1つ言いたかった
言葉を君に言っていい?
そしたら、君は僕からいなくなって
くれるのかな…?
僕「ねぇ…?大好きだよ…」
優しく風が通りすぎた。
あの頃のように、君の声は
もうしない…
虫達の飛ぶ音、
足音が少し聞こえるくらい
僕の周りは静かだった。
僕はそれからぼ~っとして
少し笑って空を見た。
……消えないね……。




