序章 闇と光
ここは、神を信じる神の王国と、1番大きい中立の国と、全てを喰らう闇の国の3つの世界がある。
神と闇の世界は1番異なる世界で、
この2つの世界の者達は
どんな事があろうと愛を作る事を禁じられていた。
考え方、生き方、育ち方、何もかも違う世界。
こんな神と悪のような世界では解り合えるはずはないと、闇は悪、神を信じる者は善と距離をとって生活をしていた。
1番上にある神の王国は、神に信仰を持ち、神を心から信じる世界。
神の為だけに生き、神の教えを広め、
同士を集め神を絶対とし生きている。
闇の国は、どこにでも存在する。
心の闇が大きければ大きいほどそこに
闇の国は生まれる。
小さいものから、大きいものまで誰もが持つ闇の心に墜とされた者達の世界。
自分達を絶対とする。
その中で1番罪深き者は、命を全てを喰らう蜘蛛である。
その真ん中にある、神は信じるが信仰はしない、かといって闇の国にも墜とされてはいない者達の世界を中立の国とした。
神の王国の者達からすれば、神という存在は何よりも凄い。完璧な存在。
苦しみも悲しみも辛さもない神の世界、
ホントに神を信仰した者達だけが
神の王国からそんな世界に連れて行って
くれるという教えを信じている。
その他に神の王国には、神の世界とは別に「真実の愛」というものも信じられていた。
「真実の愛」はこの世にたった1つだけ。
見つける事は困難で一生かかっても見つからないかもしれない。
だが、その力は神をも超えると信じられていた。
そこに、神の王国に住む孤独と貪欲を抱いた紋白蝶がいた。
紋白蝶はどうしてもその愛が欲しかった。この満たされない心の為に…
寂しい思い、過去の愛の後悔、失う怖さ、彼女は心に闇を抱えていた。
同じ頃、闇の国に墜とされた孤独と傲慢を抱いた蜘蛛がいた。
愛など信じない自分だけがよければいい。
過去に縛られ傷つき闇に墜とされた者。
全てを喰らい罪を罪とも思わない
自分を絶対とし生きる蜘蛛だった。
蜘蛛は、自分とは違いすぎる世界の者が嫌いだった。
闇の世界で信じられているのは「運命」と呼ばれる罪を浄化してくれるという紅い月だけ。
信じた者だけにしか愛を与えない
信じさせ神と崇められているだけで、
自分では結局何もしない神なんて
1番嫌いだった。
神の王国の者なんて自分がなく、神ばかり頼りこの世界の辛さから逃げようとする者ばかりで大嫌いだった。
その神の王国では、私利私欲な感情は罪とした。
その中で最も罪であることは愛に溺れる事。
「真実の愛」ではない自分の快楽に溺れるだけの愛を大罪とした。
心に罪の欲を持つ神の王国の異端児、
紋白蝶の心の醜さ、私利私欲の孤独を埋めたいというものは
皮肉にも闇の蜘蛛の考えに少し似ていた。
その中で紋白蝶と出逢ったのが、闇の世界に墜とされた蜘蛛。
彼はとてもワガママで自分の世界だけしか信じない、可哀想な蜘蛛だった。
その蜘蛛に愛を教える事で、自分の探しものがみつかると紋白蝶は思った。
蜘蛛は彼女を不信に思いながら、彼女の暖かい優しさ、優しい笑顔、神の伝えたという綺麗な言葉に心を開いていく。
蜘蛛は、そうしているうちに彼女を誰よりも愛し、彼女が欲しくなった。
蜘蛛の自己中心的な愛、強欲過ぎる愛の前に、求めていた愛を探す紋白蝶は、その蜘蛛の闇の深さに自分の守っていた世界を壊されていく。
何度も離れようとするが、離れられなくなっていく。
自分の守っていた神を信じるいい子な偽善者な自分も壊され、神を完璧に裏切る
道を選ぶようになっていく。
紋白蝶も、そうしているうちに蜘蛛を愛していった。
ここまで強く私を必要としてくれる。
感じた事のないここまで心を乱されるのは「真実の愛」なのだと思った。
蜘蛛も誰も信じられなかったのに全てを諦めていたのに、ここまで心を乱されるのは彼女を強く愛するからなのだと思った。
お互い感じたこの愛のおかげで自分の罪、孤独、後悔が一瞬でも消えていくのを感じていた。
そして、お互いの身体と身体で愛の快楽、慰めに溺れていった。
そうしていると、一瞬でも苦しみも悲しみも辛さもなくなっていく気がしたから。
その愛というものは、「真実の愛」ではなくホントはそれだけの悲しき愛だった。
ただ、神の王国と呼ばれる場所からきた紋白蝶。
神を信じない自分の闇の世界で生きる
蜘蛛。
その愛を神の王国は許さない。
闇の蜘蛛になぜ神の王国の紋白蝶が?
神の王国は神の名の元に怒りをあらわにした。
紋白蝶から蜘蛛への感情を消し、蜘蛛を消そうとした。
お互いに一緒にいたいと願ったがそれは
許してはくれない
この愛は間違いだと…
紋白蝶はいなくなった
誰よりも愛していたはずなのに、誰よりも信じたかったはずなのに…
紋白蝶は蜘蛛を裏切った。
蜘蛛のワガママ、強欲を我慢してきた紋白蝶は、自分の事ばかりの蜘蛛を許せなくなっていた。
ホントに好きだと言ってくれたなら一緒にいようと決めていたのに、彼は所有物のようにしか愛してくれない
その事が、発端だった
蜘蛛はそれに気づけなかった
自分が自分がと
紋白蝶の優しさに甘えていた
それよりも、彼女が裏切った事を許せなかった
その後も、裏切られる事、失う事ばかりが怖くて、彼女を責め愛せなくなっていた
そうして蜘蛛と紋白蝶は、互いの過去の過ちが許せなくなり、醜い欲望が強く生まれる。
蜘蛛と紋白蝶の未来にも希望を描けなくなって突き放されていく。
神の力に負け、自分の欲がこの蜘蛛との愛が、間違いだったと懺悔する紋白蝶。
それでも、蜘蛛は紋白蝶を愛していた。
彼女と交わした純粋な約束を守りたかった。
どれだけ彼女に裏切られようと彼女と一緒にいたかった。
そう思っても蜘蛛は蜘蛛。全て結局は、
自分の為だけに偽りの愛を振りかざす。
これは、そんな蜘蛛と紋白蝶の叶うはずのない悲しき愛の物語。