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一時間企画

恋愛禁止区域での恋愛劇場

作者: アオニシキ

一時間企画です。テーマは『恋愛禁止』結果はお察しです。


 俺は木本 優。ごく普通の男子高校生だ。いや、正確には男子高校生だった、というのが正しいか。俺は先週の怒涛の経験を思い出して、重たい溜息を吐いた。アイツが言っていたことが確かなら、そして先週の体験が夢か何かでないならば、そろそろ連絡が来るはずだが……。


 まだ来ないようなので俺は連絡を受け取るために手に持っていたケータイから自然とテレビに目を移す。テレビではちょうど天気予報をしていた。


『……本日は快晴で過ごしやすい一日となるでしょう。それでは最後に本日の恋愛禁止区域のお知らせです。○○学区、またその周辺の地区の内部では、『ヒリアー』が発生する予測があります。皆さん自分の身を守るためにも恋愛禁止区域内での恋愛は控えるようにしましょう』


 現実逃避のためにテレビに意識を向けたというのにリア同盟の天気予報のアナウンスによって先週起こったことを思い出してしまった。



  ~~~~



 『ヒリアー』それは突如現れた怪物の俗称である。まるで幸せを破壊するかのように仲の良いものたちのもとに訪れては破壊と悲しみをまき散らしていく。そんな怪物だ。人々はそんな『ヒリアー』に対抗するべく研究を始めた。『ヒリアー』の生態、弱点、倒し方、その他いろいろ……とにかく怪物の脅威から身を守るために人々は団結した。その結果、リア同盟という組織が生まれ、『ヒリアー』の発生を予見、そして対処できるまでになったのだ。


 俺はそんなリア同盟の事をどこか他人事としてとらえていた。正直、俺が関わるようなものでもないと思っていた。町にある数多い会社の一つ、そんな風に思っていた。


 だが、先週の出来事によって俺は思いっきり巻き込まれることになる。


 休日、買い物に出ていた俺はその帰り、のんびりと町を歩いていた。店は家から近い場所にあるのだが地味に恋愛禁止区域であった。だが、俺は恋愛なんかとは無縁だし別に問題ないだろうと思って恋愛禁止区域をのんびりと歩いていたんだ。


 だが、そこに途方に暮れたような少女がいた。正確にはボーっとしているような少女である。だが俺はなんとなくその少女が困っているように見えたのだ。


 どうせ時間もあるし問題ないだろうと思い、その少女――桜坂 尚実――に声をかけようとした瞬間、彼女もこちらを向いた。そして目が合った瞬間……



  ~~~~



 先週の事を思い出しているとケータイが振動していることに気が付いた。どうやら連絡が来たらしい。そこには、


『○○学区にて待つ。 尚実』


 とだけ書かれた簡潔なメールが届いていた。現実逃避も終わりだという事か……と俺はため息をついて、外出の準備をした。



 そして○○学区にて、彼女、桜坂 尚実はすでに来ていた。彼女にとっては仕事に当たるのだから早めに来たのだろう。こちらに気が付いたのか声をかけてきた。


「悪いわね。こんなことに巻き込んでしまって」


「いや、いいよ」


 先週も行ったやり取りをもう一度。気にしてないと俺は言ったのだが、彼女はどうしても気になってしまうらしい。


「じゃあ、優にとっては不本意でしょうけど、『デート』を始めましょう」


 彼女は恋愛禁止区域の中でそう言った。



  ~~~~



「先週と同じだな」


 俺は多少呆れながらもそういった。思った以上につれるのが早い。これが恐ろしいと言われていた『ヒリアー』の習性なのか。だとしたら何か悲しい。そう意識を飛ばしていると、奴らが一斉に叫び出す。


「バクハァァァア!」

「バクハァァァァァァァア!!」

「バクハァァァァァァァァア!!!!」


「巻き込んでしまっている分、優には手を出させないから!」


 俺は尚実と『ヒリアー』の群れに対峙していた。先週も尚実と目が合った瞬間、突然『ヒリアー』が襲ってきたのだった。それで何とか逃げようとしたところ、尚実が『ヒリアー』を倒していた、というのが先週の結果だ。


 どうやら尚実はリア同盟の一人らしい。リア同盟の活動の一つとして、恋愛禁止区域を定め、その中で隊員が疑似的な恋愛行動を起こすことで『ヒリアー』をおびき寄せ退治する、というものがあるそうだ。


 その任務はペアでやるそうだ。当然男女ペアである。おびき寄せる役割も担うのだから当然と言えば当然だ。だが、尚実はうまくいかなかったらしい。誰と組んでも一向に『ヒリアー』が現れなかったそうだ。それで困っていたところ俺と目が合って……突然の『ヒリアー』襲来となったわけだ。それで、今週から俺が尚実のペアになることになったのだ。


 『ヒリアー』相手に無力な足手まとい一人いて大丈夫なのかというと、尚実は戦闘能力は問題なかったらしく、今も目の前で『ヒリアー』を相手に無双している。ゆえに問題にならなかったのだ。


 俺がつらつらとそんなことを考えていると。尚実が最後の化け物を倒してこちらに戻ってきた。


「終わったわ、優も無事?」


「ああ、こっちには一体も来なかったからな」


 事実、俺はボーっとしてただけだからな。むしろ、戦っていた尚実の方が心配されるべきだろう。


「ならよかったわ。はいこれ。謝礼よ」


 そういって、尚実は封筒を差し出してきた。彼女は心底真面目な顔をしているが、俺は思わずため息が出る。こんなんだからペアが見つからなかったんだなぁ。そんなことを思いながらも世間知らずの不器用な彼女を諭すことにした。


「なによ、足りないっていうの」


「違うよ。普通『デート』っていうのは謝礼なんて発生しないんだよ。だからいらない。じゃあな」


 さて、正直なんでこんなことになったのかは分からないが、巻き込まれているだけじゃなくできることを探さないとなぁ……


 とりあえず、尚実にまっとうな恋愛について教えるくらいはしようか。一応、命を助けられたしな。


 去り際の、よく分かってなさそうだった尚実の顔を思い出し、俺は今後も超常に付き合っていくことを決心するのだった。





簡単な設定


木本 優 (きのもと ゆう)

一般的な男子、困っている人を見ていたら放っておけないお人よし


桜坂 尚実 (さくらざか なおみ)

エリートな女子、ペアとなる人物がおらず、役立たずと言われていたが、戦闘能力はリア同盟の中でNo.1

実は子供のころに優と出会っており、無意識に惹かれていた。そのせいでペアが出来なかったのである。


リア同盟

突如現れた怪物『ヒリアー』に対抗するためにできた組織。

恋愛禁止区域を定め、その中で隊員が疑似的な恋愛行動を起こすことで『ヒリアー』をおびき寄せ退治している。


『ヒリアー』

突如現れ、仲睦まじいものの幸せを破壊するかのように襲い掛かる怪物

鳴き声は「バクハァァァア」



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