表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/357

#6 取り調べ

「おね~ちゃん。どこのにいくのだ?」

「ん? ちょっと運動してくるだけだ」

「うんどうならペルもしたいにゃ」

「チカもはしりまわりたいにゃう」

「レトもなのだ」


 普通の運動と勘違いしてる3人娘に、危ないから駄目だと優しく頭を撫でてから年長2人に預ける。どうしても我慢できなくなった場合に、簡単に大人しくさせる為にと分厚いハムサンドをいくつか渡してあるので、しばらくは持ちこたえてくれるはずと信じたい。

 そして。木刀を〈品質改竄〉で鉄の剣程度にまでしてから作り出す。まぁまぁ魔力を持っていかれた気がするけど、全部で100人近い奴隷達にパンを振る舞っていたら何故かレベルが1上がり、微々たる数値だけどMPも増えたので、問題にするほどじゃない。その内〈回復〉で元に戻るだろ。

 音を立てずに牢屋を抜け出し、左右に延びる通路を垂れ目と同じ右に向かう。

 気配を消すっていうのがどうやるのか分かんないから、とりあえず足音は立てないようにしつつ呼吸も最小限。水たまりや石ころなんかを避けながら5分ほど〈万能感知〉を頼りに進んだ先に、ようやく明かりが見えたのでそっと近づく。


「居た」


 見張りの待機場所だろう小さな部屋には、ガラスのないくり抜いただけの窓があるおかげで椅子に腰かけて大口を開けて寝てる垂れ目の他にもう1人の姿が確認出来る。

 部屋の外には、気弱そうで線も細い青年が粗末な槍を持って見張りをしている。なんかヤンキーがバイト先で後輩を使ってサボってるみたいな光景だな。

 その少し先に、薄暗いけど上に向かう階段があるのが見える。あれを上れば他の連中が待機している場所にたどり着くのかもしれないけど、立ちはだかるあの男を無力化しないとそれは難しいんで、小さな石を創造して階段側の天井に向かって弾き飛ばし。音を立てて視線をそっちに誘導する。


「ん?」


 作戦成功。視線を戻すより先に飛び出してその背後から飛びかかり、喉元に刃を軽く押し付ける。


「声を出したら殺す。動いたら殺す。振り向いたら殺す。分かったら石突で軽く地面を2回叩け。中の奴に知らせる目的だと判断した場合も殺すぞ」


 俺の脅迫に従うとの意味を込めて、男は地面を2回叩いたんでゆっくりとその背から飛び降りる。ちゃんと背中に剣先を押し当てるのも忘れない。こういう時に子供の身体ってのはちょっと不便だが、混浴の為と思えば後悔は全くない! 今は女の身体になってるんで混じゃないけどな!


「さてと。それじゃあまずはお前の仲間が今ここに何人いるかを床を叩いて教えろ。虚偽の報告をすれば後で殺す」


 ……全部で8か。牢屋の中の女の子達の証言とは一致しないけど、足りない分はまたどこかで捕獲の旅に出ているのか。それとも販売に向けて商人でも呼びに行ったのかのどっちかだろ。

 ついでに。魔法使いの特徴もきちんと聞き出してから、両手足を創造した手錠で拘束して口に布を詰め込んでから猿轡さるぐつわで助けを呼べないようにもちゃんとしておく。次はさっきの垂れ目の番だが、こっちはさっきの男と違ってマジで殺しに行く。敵は1人でも少ない方がいいし、それに何より……傍らに転がる無残な少女の死体を見せられたら仇討ちをしてやらんと成仏できないだろうからね。


「んがっ? なん――」


 バレないようにゆっくりと扉を開こうとしたけど、蝶番が錆び付いていたのか思いの外デカい音が鳴って、その音に驚いた垂れ目が咄嗟に剣を抜こうとしたんだろうけど、残念ながらそれは少女の胸に突き刺さってるんだな。そしてそれを抜かせる訳がない。ためらいなくそいつの心臓を貫いてやった。

 あっという間に垂れ目の全身が血で染まる。普通だったら到底正気でいられる光景じゃないけど、〈恐怖無効〉のおかげでまったく心がざわめかないし罪悪感もないが、一応手を合わせてやろう。少女には冥福を。垂れ目には地獄に落ちろと念を込めてな。

 これでこの階の制圧は完了した。次は上の階に構えている連中か。

 耳を澄ませてみると、どうやら一番近くに居る4人くらいは酒盛りをしているようでそこそこ賑やかだ。2人が外の警戒と見張りか。

 ルーアの話によると、なんでもこいつらはこの辺りでも有名な人攫いの集団らしい。誰もなんも言わないのかと聞いてみたが、近くの都市を治める貴族がクズらしく、街道を使う他の貴族からも文句を言われてるらしいが対処する気がないらしい。

 もしかしなくてもこいつが主犯だろう。クズな貴族ってのは往々にしてそういうモンだってのがテンプレよ。

 さて……と。さすがに6人を相手に真正面からぶつかるのは〈剣技〉や〈身体強化〉があればこんななまくら剣でも余裕だろうけど、その隙に逃げられたり別の場所にいる仲間に助けを呼ばれたりするのは面倒極まりない。ここは効率重視で奇襲を仕掛け、一網打尽にするとしようかね。


――――――――――


 準備を終えて上へと行くと、向かう先から酒の匂いと野太い喧騒が聞こえてくる。角度的に本当に4人いるのか分かんないけど、まぁまぁの数がいるのは間違いない。

 ここで取り出したるは閃光手榴弾。本当ならグレネードでふっ飛ばしてもいいんだけど、もちろんこの世界に無い近代兵器だから制限で創造できないし、何より魔法使いに俺にしでかした事の真相を聞き出さなきゃいけないんで無力化にとどめておく。

 閃光手榴弾は近代兵器に入るだろうけど、殺傷力がないからなのか問題なく創造できた。所謂法の抜け道っぽいいい訳だけど、簡単に通じてくれた。かなり魔力使ったけどね。


 ――カツン。


「あ?」


 連中にとっては突然の未知の物質の乱入に、喧騒が一瞬止むと同時に闇を斬り裂く閃光と轟音が室内を駆け抜けてこっちにまで襲い掛かるけど、所詮は余波だしサングラスと耳栓を着用していたから何の問題もない。

 光が消えると同時に室内に飛び込むと、全員が一切の例外なくその場で耳を塞いでうずくまったまま動く気配がない。情報として閃光手榴弾の威力は知っていたけど、本当にこうなるんだな。まさに百聞は一見に如かず!

 そんな事を考えながらも、断罪の意味も込めて的確に剣先を首に突き刺して次々に永遠の眠りにつかせてやる。もちろん狙いは鎧を着こんだ筋骨隆々の魔法使いに該当しないだろう男達だけだ。

 こんな体格で魔法使いなんてまずやんないだろうから迷いはなかったけど、正直言って盗賊と魔法使いはどっちもひょろっとしててローブ着てっから判断がつかないんで、まずは分かりやすい2人を殺害。


「今の光は一体なんだ!」

「戦士のハゲ頭の光です!」


 次に異変を察知して室内に飛び込んで来た戦士を鎧ごと斬りつけて怯んだところを蹴り飛ばして、背後の男ごと建物の外に吹き飛ばす。


「がは……ッ! クソガキがぁ! どうやって抜け出したから知らないが、たった1人でこんな事をしてただで済むと思ってんのか!」

「済むと思っているからやってんだし、なにより。お前等に言われても説得力ない」


 負け犬の遠吠えを聞いてから、折り重なった2人の心臓に刃を突き立てて黙らせれば一応の制圧は完了だが、まだやる事はある。むしろこっからが本番と言っても過言じゃない。

 結束バンドを創造しながらすぐに建物の中に戻り、ショックから立ち直る前に全員の両手足を拘束し、1人を残して外へと放り出す。残したのは一番魔法使いっぽい線の細いガリガリ根暗男。


「お前は……さっき捕らえたガキか」

「そ。お前に一つ聞きたい事があるんだ。俺を女にしたのはお前か?」

「何を馬鹿な事を。いくら魔法でもそんな事――その通り。お前を女にしたのはぼくの魔法さ。男奴隷より女奴隷の方が高く売れるんでね。何だ!? 口が勝手に。これもお前の仕業か!」


 どうやら正解だったらしい。いくら魔法でもそんな事は出来ないかもなんて思ってたけど、意外と魔法は万能なんだな。それよりも急に態度が変わったようにも感じ、正気を疑うこっちのせいにして来たけど、肝心なのは男に戻れるかどうかだからそういった細かい事は気にしない。


「ならさっさと元に戻せ。そうすれば命だけは助けてやるぞ?」

「クハハ……そんな願いを聞き入れると思っているのか?」


 精一杯の虚勢……って訳じゃないみたいだな。取りあえず指の2・3本を折ってみたけどまったく口を割る気配がない。まったくもって見上げた根性だよ。

 これ以上やって、加減を間違って殺したりなんかしたら死ぬまで女のままかもしれない。そんな結末になったら二度と男に戻れなくなるかも知れんからマジで最悪だ。

 どうしたもんか……万に一つ――他に同じ魔法が使えるやつがいる可能性に賭けてもいいかもしんないけど、流石にその確認が済んでない現状では危険すぎるよなぁ。この世に生を受けて1日も経たずに転生の主目的が無くなるのは痛すぎる。

 聞いたところで真実を答える訳もなし。気持ちを切り替えて別の方法を取るとしますか。

 と言う訳で、魔法使いと入れ替えるように盗賊を次々に引きずり込んで痛めつけて訪ねてみたものの、やっぱり本職でない人間だと魔法の原理すら知らない俺と大差ないらしく、魔法使いの弱みについても、奴は仲間内にすらプライベートな話をしなかったらしくロクな情報が得られなかったのでお役御免と生きてる奴全員を創造した鍵付きの箱に閉じ込め、見つからないような細工を程してから地下牢に戻った。


「たで~ま~」

「かえってきたのだ」

「すごいおとがしたけどだいじょうぶだったにゃ?」

「おね~ちゃんだけうんどうはずるいにゃう」


 サンドウィッチですっかり懐いた3人が抱きついて来るので、優しく頭を撫でながらフルーツジュースを飲んでいるシリアの横に腰を下ろす。


「なに?」


 マンガ・ゲームでは、その長い寿命でもって魔導の研究では他の追随を許さないほど長けている設定のが多いから、こんな幼い少女出会ったとしてもきっと御多分に漏れず盗賊連中より遥かに知識があると信じたい。


「聞きたい事がある。性別を変える魔法って知ってるか?」

「知らない。聞いた事ない」


 速攻だったな。しかしエルフも知らないってなると、あいつの性転換魔法は想像以上にトリッキーな代物って考えていいかもしれないな。これは何としてでも奴から魔法の事を聞き出して解除させなきゃいけなくなって来たな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ