#53 そうだ。王都に行こう
ニコニコ笑顔で2人の返答を待っていたら、何故か超真面目顔でずいっと詰め寄って来た。
「1つ聞かせてもろてええか?」
「こ、答えられる事ならな」
おかしいな。俺としてはもうちょい砕けた感じで質問が飛んでくるんだとばっかり思っていたんだけど、問いかけてきたアニーの表情はすこぶる真面目だ。それはもう真面目すぎて、真面目か! なんてツッコミをするのもはばかられるくらいの大マジぶりだ。
よし……ここは俺も同じ感じのマジっぽい雰囲気を出して返答するしかねぇ。
「王都に行ってる間。アスカは何しとるつもりや?」
「短期なら周辺で美女探し。中期なら別の貴族領で美女探し。長期なら他種族の美女探し。だな」
「全部同じやないか!」
「何を言うか! 短期であればアイドルの原石。中期であればある程度完成された宝石。長期であればまだ見ぬ未知の原石と宝石を発見する。どれも同じでは断じてない!」
「あいどるいうんがよく分からへんけど、キレイどころを探す言う時点で同じやと思います」
「それは否定しない。俺の生きる目的の半分はこれだからな」
残りの49%が男に戻るで、1%が六神ぎゃふん(死語)である。
「はぁ……っ。余計な心配したウチがアホやった。勝手にしろ言うもんやから、アスカがウチ等を捨てるんか思うた心配を返せや!」
「はっはっは。そんな心配は無用だ。何せ2人とも綺麗で可愛いからな。そっちから俺と一緒に居るのが嫌になったと言わない限り、たとえ王族に寄越せと言われても断固拒否するつもりだから安心しろ」
アニーは胸は残念だけど太ももが健康的に引き締まっているし、お尻もきゅっと引き締まっている。顔も少し鋭い感じはあるけど十分に可愛い。
リリィさんは当然そのビックバンが魅力の一つだ。これほどのサイズはこの世界ではいまだにお目にかかった事はないし、元の世界では同人誌やエロゲ―でしか存在できないのだよ。
なんぜなら~そう! 他がビックリするくらいのプロポーションなんだから。
腰はアニーほどじゃないにしろかなり細いし、お尻だって少し大きいけど安産しそうだし、すらっと伸びた足もおっとりとした顔立ちもグッドだ! それにリリィさんは勝手に抱きついて来て俺にそのビックバンを押し付けてきてくれるからな。これまでも結構その感触を堪能したけど、全く飽きる気配がないな。女体おそるべし!
「何かアスカに言われると皮肉にしか聞こえへんねんけど」
「一切の嘘偽りのない本心なんだけどなぁ」
「あて等なんかよりアスカはんの方が何倍も可愛らしいわぁ♪」
ほらね。最近ようやく慣れつつあるけど、何回押し付けられてもこの感触は素晴らしい。飽きる事なき至福の一時だ。呼吸が出来なくなるまでの短時間だけどな。
「という訳で、俺は自分の安全のために王都には近づくつもりはないけど、2人にまで俺の仮説をそこまで押し付けるのも悪いから好きにしていいぞ。行くんだったら、今言ったみたいに俺はその辺をブラブラしてるから遠慮しなくてもいい。そもそも基準を満たしてないしな」
王都が厳しい条件で入国者を制限しているのであれば、まさに千載一遇のチャンスなんだ。わざわざ俺の一存で駄目と言うには厳しすぎるからな。一生に一度の王都観光を楽しみたければ楽しんでほしいのも本心だ。万が一病気になっても、こっちには伝家の宝刀エリクサーが待ち構えているからな。
「ほんならウチは行ってみたいわ。やっぱ商人たるもの、一度は王都の商人ギルド本部は一度行ってみたいと思ってたんや。1回くらいなら大丈夫やろ」
「あても一度だけ言うんなら王都のファッションに興味ありますわ。アスカはんに似合う服を見つけてきますよって、そしたら着てくれますか?」
「まぁ、気が向いたらな。って訳で、仕方ないが王都に行く事が決まったんで、アクセルさんを除いた護衛を連れて行かないって言うのであれば、特別に貴族なんだが乗せてやろうではないか」
「お願いしますね」
とりあえず方針は決まった。王都に向かいがてら侯爵の護衛をし、俺は浄化魔法の範囲外で美女との出会いを求めて村々を巡り、アニーは商人ギルドで顔を売る為に王都に足を踏み入れ、リリィさんは王侯貴族が袖を通すような――俺の想像通りなら奇抜という言葉にドレスを着飾った様なぶっ飛んだ服を見て回る為に王都に足を踏み入れる。ユニとアンリエットは俺と同行。おおむねこんな感じだ。
「ところで、出発はいつだ?」
「明日です」
「……そう言うのは普通もうちょい余裕をもって伝えるもんなんじゃないのか?」
「王都からの連絡が来たのは20日程前だったのですが、ごく最近にダンジョンの問題が発生してしまい、アスカさんが解決してくれる前まではこちらの方が重要と判断して登城不可の知らせを出そうとしていたのです」
「なるほどな」
てっきり腹の黒いどっかの貴族がわざとそんなギリギリに手紙を送りつけてきたみたいなテンプレ展開だと考えていたんだが、どうやら違ったらしい。
「それにしても本当に助かりました。これで、妹からのパーティーの招待を断る事をしなくて済みそうです」
「意外としょうもない呼び出しだった!?」
てっきり何かしら重要な報告でもあるのかと思っていたのに、いざ蓋を開けてみればメチャ平和的な誘いの招待状かよ。そんなモノのためにわざわざ領主が土地を離れていいのか? 呼ぶ方も呼ぶ方だが受ける方も受ける方だな。
「アスカ」
送られた手紙の奇妙さに首をかしげていると、アニーが突然手を突き出して来た。
「なんだよ」
「いや。王都に病気んなる危険と分かっとるんなら、アスカならそれを解決できる道具とか持っとると思ったんやが違うんか?」
「そうだな……あるにはあるけど今は無理だ」
「その方法。詳しく教えてもらっていいですか!」
「別に難しい事じゃない。魔法って言うくらいだから、〈魔法消失〉で自分を覆っていれば、浄化されずに済むと俺は思っているんだがどうだろうか」
あの短絡馬鹿が使っていたんだから魔法としてはちゃんと存在しているし、俺の〈魔導〉にもちゃんと表示されている(レベル不足だから使えない)から勇者専用って訳でもないだろう。レベルの高い優秀な魔法使いを雇って王都にいる間中かけ続けてもらえれば何とかなるだろう。
俺のこんな解決方法に対して、マリュー侯爵は困ったように眉間にしわを寄せた。
「今現在。〈魔法消失〉が使える魔法使いはごく少数で、確認されている者達は他の貴族の庇護を受けているから、引き抜くにしても多くの金銭が発生してしまうし、狩りを作ってしまう事になりかねないとなると、この方法は現実的ではありません」
「なら他の方法を考えるしかない。ちなみに俺は〈魔法消失〉は使えないからな。まぁ? 使えたとしても行かんけどな」
一番手っ取り早いのは浄化魔法を使えなくする事だけど、そんな事をしたら高い確率で今の王家は滅ぶだろうからまず許可が下りないだろうね。
無理矢理ぶっ壊せない事もなさそうだけど、さすがにそれをやるとやるとなれば徐々に魔法の威力を弱めて病気に慣れさせるしかないが、そんな悠長にやっているといつまでもこっちが病気になるだけだ。
「アスカでも何ともでけへんのか?」
「現状だとちょっと難しいな。だが、ある程度の病なら治す方法があるから、今回は病気になってくれとしか言えないな」
「アスカはんでもでけへん事があるんですな」
「そりゃそうだろ。俺は神でもなんでもないただの旅人だ。いくつもあるさ。むしろ治療する方法があるだけでも感謝してほしいくらいだ」
レベルが上がればなんとかなるとは思うが、そのためには今のペースでの経験値の稼ぎ方じゃ確実に間に合わない。つまりは期待できないって訳だ。
「分かりました。護衛をしてもらった上にそこまでの要求は貴女の不興を買うので終わりとしましょう。道中はよろしくお願いしますね」
「快適かどうかは知らなけど、魔物の姿すら確認させない最高の旅を提供する自信はあるんで、せいぜい日頃の疲れを癒すといい。明日迎えに来るから準備を終わらせとけよ」
「王都まではおよそ一月の旅となりますので、商人ギルドに割安で食料の用意をさせるように紹介状を書きますので少し待っててください」
「えっ!? そんなに遠いのか?」
てっきり1週間か2週間くらいの旅だと思っていたけど、まさかそんなにかかるとは思っていなかった。と言うか侯爵なんだからもっと王都に近い場所が領地なんだと思っていた。1月なんて距離はもはや辺境伯だろ。
「王都は人族領地の中心に位置し、私は侯爵として霊族達がいつ戦争を仕掛けて来るやも知れぬと目を光らせる為に隣接する東端に領地を持つので、それだけ時間がかかるのです」
「マジかよ……つーかそんな場所を任されてる人間がそう簡単に領地をはなれてもいいのか?」
「霊族領とは友好的な関係を築いていますので平気ですよ」
まぁ一度受けると言った以上はそれを取り消すつもりはない。元々世界中を回る予定なんだから、いろんな村や街に行くのが早まったと気持ちを切り替えるとしますかね。
それからさらに詳細を詰めていった結果。馬車は馬よりも早く安全性と乗り心地の高い俺の馬車でと決まり、マリュー侯爵側の護衛にはさっき言ったとおりにアクセルさんのみ。
これには随分と不満があったみたいだったんで実力で黙らせた。その方が手っ取り早いし何より面倒が少ないってのもおススメな理由だ。
護衛に対する報酬は2人の商人としてのランクアップで、俺に対しては侯爵領内での自由行動となった。これで領内に限って最悪の場合は殺人すら罰せられることがなくなったのでまぁ良しとしよう。
もちろんそんな事をしたりしませんよ? 悪人でなければだけどな。




