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#50 おいでませ商人ギルド

「さて。飯も終わったし、サクッと終わらせるとするか」

「助かるで。あのパスタやったらギルマスも納得する思うわ」

「ホンマです。まさかあないな材料であんな美味しいパスタになるなんて夢にも思わへんやろうね」


 昨晩は三種のパスタの味見をしてもらい、全員からいつもの俺の味には及ばないが十分に美味いとの太鼓判はもらってある。

 俺自身も食ってみたけど、いつものと比べて60点くらいの出来にはなっていた。やっぱ調味料の力と品質の良い食材は偉大だと思うんだよね。

 この世界の人間がどんな調理をしているのか見た事がないけど、砂糖・塩・酢・胡椒なんかの最低限のものしか使えないのと、古今東西あらゆる食に関する物が集まり、さらにそれを美味くしようと研究する熱意に満ちた日本との差を考えれば勝ちは揺るがない。おまけに〈料理〉スキルまで持ってるんだ。唯一のアドバンテージであるだろう腕すらも劣らないんだから仕方ないと言えよう。

 案内人としてアニー。リリィさんは服飾関係の店を回ってショーツを販売してもらうための商談に向かうらしく欠席。

 ユニは最近ハマり始めた日本の専門書なんかを読みたいと宿屋で待機。

 アンリエットは飯を作りに行くと聞いて嬉しそうについて来ると言って聞かなかったんで、騒いだり他に奴の迷惑になるような事はするなよと釘を刺してから許可を出した。


「ここが商人ギルドや」


 港があるのでエルグリンデの商人ギルドは入り口と港のちょうど中間ぐらいにある。その建物は、金があるだけに建物自体はかなり豪華な造りをしているが、意外な事に過度な派手さは一切排し、使いやすさと頑丈さを優先させた地味な外観は好感が持てるね。

 この世界では珍しいガラスの張られた扉をくぐると、中もまた質素に見えるがいちいち使っている建材が高級品質だ。

 まるで銀行みたいなカウンターは10以上。そのほとんどが買い取りの為にあるんだろう。一席一席にゆったりとしたスペースを確保されているし、狭い所は金銭の貸し出し・支払いと言った交渉をする場所なんだろう。今も駆け出しっぽい少年が書類数枚を提出して登録の精査を受けている最中みたいだからな。

 後は商品を保管する倉庫に続く道や、職員やギルド員が使用できるのであろう食堂。ギルド員同士が歓談するためのカフェ的なロビーなどなど、冒険者ギルドとはマジで大違い過ぎるな。

 この街の冒険者ギルドもちらっと通りかかったけど、何であっちはあんなに貧乏極まりないんだろうな。


「さてアンリエット。もう一度言うが勝手にどこかに行ったりするなよ? 言う事を聞かずに周りに迷惑をかけたりしたらご飯抜きだからそのつもりでいるように」

「あい。ごしゅじんさまのいうことをきくのなの」


 ご飯がかかっているだけあって扱いがチョロイ。もちろんそれだけで安心するほど俺も馬鹿じゃない。子供の言葉ほど頼りにならない物は無いからな。アニーにも目を離すなと言い含めておいて目的地へと案内してもらうと、向かう先は当然食堂のさらに奥にある厨房だ。

 そこには数人のコックの他に、恰幅がよくて短く刈り上げた髪にバッファローみたいな角を生やした50代くらいのおっさんが居て、こっちを確認するなりずしんずしんとその巨体を揺らしながら近づいて来る。


「おぉアニー嬢。待っとったで」


 ともすれば凶悪と思われてしまうような変貌を遂げたけど、本人的にはきっと笑顔のつもりなんだろう。声色と友好的な態度を見れば大まかにそう捉える事が出来るが、アンリエットは完全にビビってしまって俺の背中に隠れてしまった。


「相変わらず怖い顔や。そないな顔でよくあんな別嬪な嫁を射止めたわ」

「うわっはっは。それについてわしもよぉ分からんが、嫁が好いてくれとるから何の問題もないわ! ほいで? そっちの子供が例の情報をくれる言うてた奴かいな。ホンマに来ないなチビが金貨10枚ほど価値あるレシピ持っとるんか?」

「アスカだ。偉そうにそう言うあんたは何者なんだ?」

「これは紹介が遅れたな。わしはこんギルドのマスターをしとるドリュッセイいうもんや。短い付き合いになるやろうけどよろしゅう」


 軽い握手と自己紹介が終わり、なんでギルドマスターが直々にレシピの審査なんて面倒そうなことを引き受けたんだろうな。

 もちろん素人に毛の生えた程度の新人職員に任せるなんてできないんで、普通こういうのはある程度経験を積んんだ、ある意味専門の人間が審査をするもんだと思うし、その方が絶対にとは言い切れないけど正確な審査をしてくれるだろう。


「ギルマスが直々に審査をするなんて、人材に困ってんのか?」

「いんや。これはわしの趣味みたいなもんや。ウチは優秀な職員が多いもんで案外暇なんや」

「何言うとんねん。どうせフラッタに仕事押し付けてきたんやろうが」

「わっはっは。あやつは仕事のできる男だからな。わしがやるよりよほど早いわ」


 だからと言って、ギルドマスターが仕事をしなくてもいい理由にはならないんじゃないのか? まぁ、そこは俺が口を挟む必要もないんで黙っておこう。それにしてもアニーとギルマスは随分と仲がよさそうだ。ギック市の冒険者ギルマスとも顔見知りだったみたいだし、一介の行商人にしては少し顔が広すぎると思わんくもないが、そこまで被害を受けた訳でもない。これについては後で興味が涌いたら聞く事にするか。


「で? そっちの連中が味見役って事なのかな?」


 ここの食堂はあまり繁盛していないのか。この時間の利用者が少ないだけなのか、シェフが全員揃っている。ちなみに全員人間のパッとしない容姿が3人ほど椅子に座っている。


「ああ。何せ料理のレシピを登録に来る奴ってのが久しぶりだからな。是非ともこの食堂の新メニューとして出せるかどうか見せてもらおう」

「それも登録の基準として入ってると判断してもいいんだな?」

「当然だろう。安くて美味ければそれだけ利益が見込めるんだからな」

「なるほど。こっちとしては邪魔さえしなければ結構。じゃあ食材を貰えるか?」

「案内します」


 こういう場合……やれ調理器具に細工されているだとか。やれ食材が駄目になっている物しか用意されていないだのと言ったテンプレ展開が待っているもんだと思っていたけど、コック達は簡単に受け入れてくれたし、食材だってちゃんとしてるし調理器具だって手入れが行き届いてて俺が普段使いの物と遜色ないくらい手になじむ。


「さて。確か担保はパスタの調理レシピだったっけな」

「その通りや。お前さんの作る料理が美味ければこの問題は不問となるが、万が一にもわし等を満足させられへんかった場合は色々と覚悟してもらうで」

「覚悟?」


 はて……今までそんな事を一言も言っていなかったような気が――って目を逸らした。という事は知ってて隠していたって事なんだろうね。どうやら後で色々と問いただす必要がありそうだけど、今はこっち優先か。


「ちなみに何の覚悟をすりゃいいんだ?」

「どうやら聞いてなかったようやな。まぁ、もう言うてしまったならしゃあないか。お前さんのレシピが益をもたらさんと判断された場合。アニー嬢には降格してもらわんとアカンようになる」


 ちなみにアニーのギルドランクはアイアン。可もなく不可もなくって感じのランクらしいけど、それなら別に一つ落ちたくらいなら何の問題もないようにしか俺には思えないけど、問題なのは降格への経緯らしい。

 曰く。クズ商品で金を得ようとした不届き者。こんな情報がギルドを通じて全体に知れ渡ると、他の商人はアニーを再起不能に追い込むためにあらゆる町や村にその情報を垂れ流しにする。そうすればあら不思議。あっという間に商人を廃業しなくてはいけなくなりましたとさ。めでたくないめでたくない。


「なるほど。そりゃ大変だがまぁ大丈夫だろ」

「たかがパスタで大した自信やな」

「まぁ。俺とこいつ等とでは立っている次元が違うからな。食材の好き嫌い以外で納得しないなんてことは絶対にありえないからな。それに、そう思い込んでる時点で勝ちは決まったようなもんだ」


 街でパスタの喰い方についてそれとなく訊ねた所、味付けはシンプルに塩のみ。小麦は基本的にどこでも手に入るから安い食い物で、貧しい住民のメインとしてよく食べられている――いわゆる価値の低い料理であって料理と呼べない物を、地球の歴史と同じようにいずれは王侯貴族の食卓にも上がるレベルの料理――その入り口を見せてやろうではないか。

 こんな俺の挑発に、3人のコック達が若干怒りを出してきたが戦闘もろくにしてきてないだろう相手のものに怯むような俺ではない。


「それじゃあ始めますよーっと」


 さらっと無視して調理開始だ。

おかげさまで10,000PVを超える事が出来ましたので感謝の言葉と謝罪の言葉を。


ただ勢いに任せて所々滅茶苦茶になっているこんな小説を見てくれて感謝しかありません。

出来る限り暇を見つけて直すつもりではありますので、これからもお付き合いいただけたらと思います。

この度は本当にありがとうございますと申し訳ございませんでしたという事を締めの言葉とさせてもらいます。

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