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#34 追手登場(一瞬で終わります)

 〈付与〉の効果を確かめてからさらに1週間。別に急ぐこともなくのんびりゆったりとした道程の旅はようやく終着点にたどり着いた。


「あれがエルグリンデか。ここもここで結構デカいな」

「当然やろ。ここら一帯を治める侯爵が住んどるんやからある程度栄えとるし警備も厳重や」


 広大な窪地の底に広がる頑丈そうで分厚い外壁。内部は中央の大豪邸を中心に放射状に広がって、街の真ん中あたりに存在する外壁の半分以下の薄い壁を境に貧富の差がハッキリと別れてる。

 アニーが言うには貴族が住まう貴族街と一般市民が住む住宅街と区別されているらしい。

 どっちがどっちなのかは言うまでもないが、これでも世界標準に当てはめれば十分市民に寄り添っている方らしい。見ていてあまりいい気はしないけど、これが世界のルールなんだから口を挟む余地はない。

 南西には海が広がっていて、何十もの帆船が港に停泊し、数隻が頻繁に出入りを繰り返しているのが見える。ここは陸運より海運の方に力を入れてようだが、こんな窪地で地平線まで見えるような海に領主が暮らすなんて……津波が怖くないのかね。

 いくつか意匠が違う船が見えるのは、大部分は人族の船で残りが他種族の物らしい。そう考えるとここでは他種族の素材が手に入るって訳で、わざわざ〈万物創造〉を使わなくても素材が手に入りそうな予感がするのは、今から港に行くのが楽しみだぜ。

 そんな光景を眺めながらゆっくりと丘を下りて行くと、随分と人通りは少ないみたいでギック市みたいに人の列はなく、並んでいるのもほとんどが商人。それに少しばかり護衛の冒険者がいるくらい。

 なので、ユニに馬車を引かせてやってきた俺達は当然ながら目を引いた。主に恐怖と言う感情でもってだけどね。

 数少ない冒険者連中もユニを見るなり戦闘態勢を取ったりしたけど、軽い咆哮だけで恐慌状態になってあっという間に戦意喪失するんで、こっちは一応従魔契約を結んでるんで大丈夫だって事を伝えはしても、人間なんて一飲みにするんじゃないかってくらいデカい姿を目の当たりにすると信じられないか。

 そんな訳で、騒ぎを聞きつけたこの街の騎士が、ギック市みたいに十数人の規模でこっちに向かってきた。


「そこの貴様! その魔物はなんだ!」

「俺の従魔で森角狼ユニコーン・ウルフのユニですね」

「森角狼を従魔に? 〈調教師(テイマ―)〉にそんな事が出来るなんて話は聞いた事がないぞ」

「俺の生まれは極東でね。そこではそちらさんが知る方法と違う特殊な従魔契約を行っているので、このように強い魔物との契約も可能って訳よ。方法は教えらんないがな」


 もちろん嘘だ。従魔契約はこの世界でも普通に出来る方法でやったが、それを行うには魔物を殺さずに屈服させる必要があるが、〈調教師〉事態は魔物頼りな戦闘をするために能力値が低くなっているため、せいぜいがゴブリン(Lvにして20以下)程度が限界らしい。

 それ以上になると、魔物側にも知識なんかはついて来るし、単独で殺さずに屈服させるのが非常に困難になるから、〈調教師〉という職業の人間は絶滅危惧種の1つらしい。

 もちろん。それ以上の魔物を屈服させる事が不可能とは言わんが、そんな苦労をするくらいならさっさと倒して強くなれるジョブになった方がはるかに効率がいいし安全性も高い。簡単言えば〈調教師〉なんてカスと表現するのがふさわしいのだとか。

 ならどうしてリリィさんが従魔契約の魔法が使えるのかと言うと、なんでもその昔に誤って魔法のスクロールを使ってしまい、それがたまたま従魔契約の魔法だったのだとか。

 別に覚えた所で使う訳でもなく、何かしら不都合がある訳でもないらしいので、そのままにしておいたのがこうして一瞬だけだが日の目を見たって訳か。

 って事で、俺の指示にちゃんと従う姿をみせながらいくつかの説明を終えると、及び腰だった騎士達は引きつった表情で納得してくれた。

 まぁ……至近距離でユニに牙むき出しで睨まれたら頷く以外に選択肢はないよね。一応笑いかけてるらしいけどそう見えなけりゃそれはもうほとんど脅しだろ。

 ついでに用件を伝えてみると、並んでいる商人達を全て押しのけて最優先で検分を済ませてくれてすぐに街の中に入れてくれた。


「やっぱ侯爵の御膝下は違うなぁ。犯罪臭が少ねぇ」

「そんなことが分かるんか?」

「まぁな。ギック市は上がクズだった事もあって随分と腐ってたが、ここは大して感じねぇな」

「せやね。あそこと比べて騎士がよぉ動いとりますわ」


 と言っても〈万能感知〉でざっと調べただけなんだけどな。

 さすがに中継都市として機能してるギック市は多くの種族が入り乱れているためか、喧嘩がそこらじゅうで起きているのに騎士団連中の稼働率が著しく低かった。まぁ誰のせいなのかは言わずもがな。

 外壁を抜けた先は、ギック市ほど広くない通路がうっすらと見える門まで続いているけど、立ち並ぶ家や商店は軒並みレンガ造り。それも中央に向かっていくにつれて濃くなっていくようにグラデーションまで気を使って建築されている。明らかに景観を意識してるのが分かった。

 そして石畳も、ギック市とは比べ物にならないほど凹凸が少なくて職人の技術が光っているなと感心しきりだ。


「さて。とりあえず宿を取ってからどうするか考えるとするか」

「せやね。さすがに用件がある言うたってすぐに会えるような伝手もあれへんからな」


 俺達がこの街に着いた時点で、ギルマスの目的は達成したも同然。とはいえ相手は貴族で最高位に近い侯爵。確か王族との血縁関係とか何だっけ? そういった連中は王都なんかで暮らしてるもんだとばっかり思ってたが、この世界は違うらしい。


「その間アスカはんはどないしますのん?」

「観光したいかな。他種族の綺麗で可愛い女性も気になるから港に行こうと思う。こっからは自由行動って事で一つよろしくな。問題が起きたらパーティーチャットで連絡よろ~」

「なんや。また女漁りか?」

「人聞きの悪い。多くの出会いを求めているだけだ」


 一応ギック市のギルマスからこの街で一番の店への紹介状を貰ってはいるが、それ以外にも良店があるかも知れないし、そもそも船が出入りしているという事は他種族の女性をお目にかかれるという事でもある。そんなチャンスを棒に振るなんて勿体ない真似を、この俺が出来るはずがあるまいて!

 理想は全種族だが、さすがにそれは難しいだろう。せめて獣人と人間以外のお知り合いが欲しい。


「同じやろ! まったく……。まぁええわ。ほんならウチ等はウチ等で好きにやらせてもらうで」

「せやね。商人ギルドに商品売ったりせなアカンし。ユニちゃん手伝ぅてくれます?」

「行ってやれ。一応護衛もかねろよ」

「主の命であれば仕方ありませんね」


 そんな感じで、全員のこれからの行動が決まったのですぐに宿を取った。

 まず第一として、綺麗な看板娘が居るところ。これ自体はすぐに見つかった。というか大抵の宿の看板娘は可愛かったので選択肢はそれほど減らなかったが、あまりに安すぎると安全の観点から選びたくないし、そもそもユニが寝泊りできるほどの施設がない。

 って訳で次の条件はユニがくつろげる環境が併設されている場所のある宿ってなるんだけど、さすがにこのサイズともなると獣舎のある宿でもお断りを受けて、結果として泊まれるのは2つの宿に絞られた。

 1つはこの街で一番の高級宿。まぁ……俺達みたいな一般ピーポーが気兼ねなく入れる外側の中ではだが、建物としてはかなり大きめだし、扉の前にはドアマンが居たり大通りに面しているから人気も高いし品の良さもうかがえる。

 もう1つの方も負けず劣らずの高級宿って感じだけど、こっちは大通りから少し外れた場所にある為か全体的に風情があってゆったりと落ち着ける雰囲気がある。ドアマンはいないがこちらの方が獣舎は立派な造りをしている。

 その2つの中で俺は後者の宿を選択した。理由はもちろんそちらの看板娘の方が綺麗で俺の趣味に合致したからだ。全員から白い目で見られたが、その程度の攻撃でこの俺の決意が揺らぐと思っちゃあいけないよ。

 受付を済ませ、俺としてはオレゴン村の二の舞にならないようにと3人別部屋にしようと思ったんだが、2人から主に金銭面に関して有無を言わさず大部屋を取られてしまった。別に金なら無限に生み出せるし、代金はコッチ持ちだからと言ったんだが頑として譲らなかった。特にリリィさんの迫力と言ったらもう……思わず土下座したほど怖かった。

 荷物を降ろし、ユニを解放し終わったたら俺だけ1人でエルグリンデの散策に飛び出し、アニー達は商人ギルドに売り飛ばす品目の吟味をするとの事で、〈収納宮殿〉に入れていた大量の魔物素材や魔道具。日本製の下着などの生活必需品をこの旅の間に作ってた量の半分を吐き出しておいた。


「これだけでいいのか? もっと便利なモンもあるぞ」

「十分すぎや。これだけでもアンタに借りた借金を返せそうやで」

「それに、あんま多すぎると買い叩かれてまいますから、特に下着なんかは少しづつ売って、希少価値を高めてから交渉するんです」

「なるほどな」


 まぁ、全ては借金返済の為なんだし、俺的にはいくらで売れようが痛くも痒くも嬉しくも無いんでどうでもいいんだが、2人にとってみれば重要なんだから素直に支持には従っておくか。

 そんな訳で、荷物を出した俺はユニに2人の護衛を任せ、1人で港まで駆けつけた。


「ふむ。見た事ない物ばっかだな」


 この街は、港を持つために基本的に交易品を扱う店舗が多くを占めており、それを他の街で売る為に自然と商人が集まり、それを護衛する冒険者相手は少ない酒場等で時間を潰す。武具屋も少なからず存在しているようだけど、ギック市に比べるとその規模は小さいし品質も一段劣る。だから昼間っから酒場には多くの冒険者っぽい格好をした連中が多い。

 ギック市でも思ったけど、やっぱ道案内の類や街の全体図を掲示したりと言った親切さはないみたいだな。俺は当然ながら、他にも初見っぽい商人や冒険者も辺りを見渡したり露店で不味そうな串焼きを買ったりして場所を聞いたりしてる。

 まぁそれは後で侯爵にでも聞けばいいかって訳で、やっぱりこのチャンスに他種族の見目麗しい女性の御姿を目に焼き付けようではありませんか。いるかいないかどうか分かんないけど、万が一いなかったとしても〈万物創造〉の一覧を増やすために爆買いをすればいい。

 幸いにも街の三分の一を占める港の位置は分かっている。何せそっち方面だけは切り開かれてて海が丸見えだからな。これで迷うようだったらもはや三刀流の剣豪と同レベルだ。剣術レベルは同じかそれ以上であってもそのデバフだけは違う! って心で叫びながらあっという間に到着。潮の香りが懐かしい。小学生の頃に海水浴に行って以来か。ふふふ……勝ったぜ。


「おぉ……賑わってるねぇ」


 ずらりと並ぶ船の数々からは、ひっきりなしに箱を抱えた各種族のマッチョ船乗りが行き交い、降ろされた箱の前では品物の品質を確認しながら商人同士がそろばんを手にああでもないこうでもないと値段の交渉が熱い火花を散らし、売買が成立した物は次々に建物の中へと運び込まれていく。

 それ以外にも旅客船もあるようで、中からは竜族やエルフと言った他種族の商人が次々と降りて来ると、背負っていた商品を地面に広げて露店を始める。ちゃんとそれ専用に確保されているスペースがあって、冒険者が冷やかしたり俺の許可も得ずにナンパをしたりしている。

 思わず蹴り飛ばしてしまいそうになる光景を眺めながら、足取りはさらに奥へ奥へと突き進んでいけば、自然と人通りは少なくなるし、喧騒も遠くになる。でもまぁ……それが目的だからね。


「いい加減出てきたらどうだ? 誰か知らんが殺気交じりの目線ってのは気付かれやすいぞ」


 俺の問いかけに反応はない。〈万能感知〉で俺達に悪意を向けている存在が居るのはユニも気付いていた。なのでわざわざ1人になり、こうして人気のない場所までやって来たと言うのに、どうやら出てくるつもりはないらしい。


「やれやれ」


 ここまで御膳立てしてやってると言うのにまだバレてないとでも思ってるのか? だとしたらこいつ等は余程のザコなんだろう。出て来ないと言うのなら、こっちから引きずり出してやるまでだ。


「出て来いって言ってんだろうが」

「ぐあああああああっ!?」


 拾った石を投げつける。たったそれだけで物陰に隠れていたであろう何者かの肉体の一部を抉り取り、激痛を与えて強引に声を上げさせる。そうすれば、まだ自分達に言っている訳じゃないなんて脳内に花畑がある馬鹿共でも気付かれたと認識する。こんな風に。

 続々と建物の陰から人が姿を現す。その数は15人ほどだが、まだ物陰に隠れているのが5人ほどいる。これらはきっと弓や魔法による援護を目的とした人員だろう。


「何か用か?」

「死にたく無けりゃ、持ってるモン全て置いていけ」

「それは脅してるつもりか?」

「脅しじゃねぇ。命令だ」

「お前等みたいなザコがこの俺に命令ねぇ……」


 一応冒険者っぽい格好をしてる奴も混じっちゃいるが、大部分はこの街に住んでるゴロツキ連中。そんな連中が見た目だけは超絶美少女な俺を取り囲んで有無を言わさず犯そうとしない時点で、目的がそれじゃないのは一目瞭然。

 これだけの人数差だ。普通に考えれば数で押せば簡単に拘束できると考えるのは当然。中身を知らなきゃここに居るのは間違いなく10歳程度の超絶美少女なんだからな。

 どいつもこいつもそこまで切羽詰まった感じは見受けられない。であれば金取り物取りの線も薄い。

 ゴロツキ連中は皆体格がいい。その肉体と粗暴な態度でもって一定の防犯効果が見込め、同時に雇用となって賃金を生み出す。特に重い荷物を運びこみ、女日照りが多い船乗りから住民を守る意味合いも含まれているとすれば、決して悪くない額のはず。まぁ、やり過ぎなければと言う追記があるがね。

 他の理由としては……なんだろうね。誘拐か? であれば犯すのと同じように有無を言わさず襲い掛かってとっ捕まえるのがベターだけどそれをする気配もないので違う。

 結局のところ結論は出ない。であれば本人達から聞き出すのが一番手っ取り早い。そう簡単に素直になる事はないだろうが、こっちにはポーションの類が潤沢。骨折の10や100程度であれば治し続けるくらいにはな。


「が……は!?」

「そう言うのはもっと格下相手に言うもんだぞ?」


 正面に居た男のどてっぱらに拳を深々と突き刺し、背後に居た2人ともに吹っ飛ばす。当然のように誰も反応できなかったようなので、そのまま横に飛んでボケっとしてる冒険者の顔面を踏んでの跳躍から、屋根に居た射手に石を投げて片腕を潰す。


「……殺せぇ!」


 その辺りでようやく冒険者であろう人間の怒声が響き渡る。ここは港の中でも一際人の少ない場所。多少大声を出したところで喧騒飛び交う表に届く可能性は低い。

 であれば、男連中の断末魔が響き渡ったところで全く問題はない……か。


「そぉ……れっ!」


 着地すると同時に四方から剣だの斧だのが襲い掛かって来たが、大した連携訓練もされてない寄せ集め程度ではてんでバラバラ。結局は順番に対処出来てしまう程度の余裕が持てる。

 これがあの老け顔騎士の部下連中であったなら回避を選んだな。


「〈重鎖(ミドル・バインド)〉」

「あ?」


 さて次の相手――と言ったところで全身に太い鎖が絡みつき、ずっしりとした感覚を覚える。どうやら魔法を使ったらしいが、俺からすればこの程度の拘束は拘束じゃない。俺の自由を奪いたいのであれば、リリィさんを連れて来るしかない。あの拘束力は人智を越えている。


「馬鹿なっ!?」

「お前がな」

「もがッ!?」


 〈万能感知〉ですぐに居場所を特定し、魔法使いなので両手足を砕いてテニスボールを押し込む。これは自らか他者の手で引き抜く以外に取り出す方法がないらしいと漫画読んだ。呼吸も妨げないしさるぐつわをする時間すら惜しい集団戦において抜群の威力を発揮。

 そうして無力化した魔法使いを無視し、残った射手やゴロツキ・冒険者連中を次々にノしてゆき、10分もあれば制圧完了だ。


「さて。ここからは楽しい楽しい質問タイムの始まりだ」


 と言う訳で、まずは誰の差し金でこんな馬鹿げたことをしたのかを問う。もちろん最初は金欲しさにやったと宣って知らぬ存ぜぬとしていたが、全身の骨を5回折り。10回折り。機械的に同じ質問を繰り返す。相手が俺の求めている以外の返答をすれば問答無用で折る。命乞いだろうとなんだろうと容赦なく淡々と繰り返す。

 いったいどれだけ続けたのかね。ようやく冒険者の1人があのクソ貴族から俺を殺せとの手紙が送られてきたと言う事を白状した。あん時の飛脚はこの手紙を届ける為に走っていたって訳か。あの様子だとそうとは知らずに運んでたんだろう。

 一応俺は自分の特徴を可能な限り隠蔽するために鉄仮面をかぶっていたんだが、こうして襲われたっと事はあれを俺と同一人物であると確信してる……か。

 そう言えば、あの老け顔はあの時の俺と森で出会った俺が同一人物であると確信している節がある。まぁそうなんだが、そう思わせないように一応の努力をして来たつもりだが微塵も迷わなかった。きっとスキルの類だろう。あまりこの情報が広まると面倒な事になりそうだから、この仕事が終わったら葬るとするか。奴は俺のまったりハーレムにとって最大級の敵だ。


「さて……」


 情報は手に入った。後は徹底だ。


「なぁお前等。まだ人生を楽しみたいか?」


 ぐるりと見まわせば、例外なく首を縦に振っている。ここで殺せと言う奴が居たら望み通りにして〈収納宮殿〉にぶち込んで見せての証拠隠滅を披露したところだが、その手間が省けたので一応は良しとしようか。


「なら分かってるな? 俺の指示に死ぬまで従え。そうすれば、少なくともこの場で死ぬ事はない。なぁにそう難しい事じゃあない。きちんと考えるあ頭があれば誰にでも出来る簡単なモンだ」


 この問いに全員が首肯したので、俺の容姿に関する情報をいかなる人物であろうと漏洩させてはならんと言明する。そうすれば、全員に白金貨1枚分の金銀銅貨をくれてやると言うと全員がかなり驚いていたが、それと同時にこの命に背くような事があればこうなるぞと首だけマネキンを取り出し手指を鳴らす。

 瞬間。装着されていた首輪が光り、そこそこ大きな音を立てて爆散。全員が目を見開く。


「裏切者には死だ。これは全てと連動していてな。誰かが秘密をばらした時点で全員が死ぬようになっている。せいぜいお互いの言動に気を付けるんだな。ちなみに外そうとしても同じ効果があるから気をつけろよ」


 と言う訳で全員の首にチョーカーをつけ、ポーションで傷を完治させてから解放する。

 ま、全員に着けたチョーカーには今言った機能はついてない。マネキンが爆発したのは単純に〈身体強化〉の割合を上げての超高速の拳打でもって殴っただけで、首についてるのもただのおもちゃでしかないが、そうと知らなければ本物だと思い込む。それで十分よ。

 自由になったごろつき共は逃げるようにその場から走り去り、周囲は静まり返り、遠くの方でにぎやかな声が聞こえてくる。いいねぇ……こうのんびりした空気を感じながら、1日中ボーっとしてたいなぁ。


「……さて。それじゃあ続き続きっと」


 20分ほどボーっと空を眺め、気分転換を済ませたんで再び街へと戻る。草木への転生は絶対条件だが、やっぱり今は綺麗で可愛い女性との逢瀬がしたいのだよ。だから待っててくれたまへ俺の来世。

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