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#346 有望だからべーろべろべろと唾をつけまくる

「……たった2匹ですか。やはり使い物にならなかったといったところでしょう。だから僕はロクに魔法も使えない獣人如きにここの守備を任せるのは分不相応だと進言いたしましたのに……」

「あっはは~。しょーがないって。〈盟主〉様は他人の強さがあんまり分かんないんだっからさ~」


 突然現れ、そんなよくも分からんことをしゃべりだす2人。とりあえずあの豚と知り合いではあるんだろう。同等に見ていたとは確実に言えないけどな。


「よぉ。盛り上がってっとこ悪いんだけどさ、そこのお嬢さん。名前とか教えてくんない?」

「あぁ。これは失礼。僕は……そうですね。〈参謀〉と名乗りましょう」

「じゃあぼくは〈一番槍〉。よろしっくね」


 ふむ……野郎の名前なんざ聞いた覚えはねぇんだがな。とりあえず一番槍ちゃんって事が分かればそれだけでOKよ。


「クソ眼鏡と一番槍ちゃんね。ここに来たって事は、お前等もそこの装置に関わってるって考えていいんだよな?」

「……ええ。此度の騒動は我々の〈盟主〉様が引き起こしたもので、僕と〈一番槍〉は無能が失敗した尻拭いをするために、こうしてこの場にやって来たのですが、存外充填具合が芳しくないようですね……」

「本当だ。〈盟主〉様はそろそろ滅茶苦茶になるよって言ってたのに。お前らっがなんかやったの?」

「さぁてね。どうだろうか」


 別に隠す事に何の意味もないと思うが、わざわざそんな面倒な事を俺がする訳がない。多少の手伝いくらいはしたものの、その大部分はあの狂信者共にやらせたんだ。なのでやったのはあくまでアシストであってゴールではない。


「まぁ良いではないですか。ここで死にゆく者達の戯言などに耳を傾けても時間の無駄ですよ」

「だっね」


 クソ眼鏡の一言に一番槍ちゃんが狂気じみた笑みをより一層深めながら大剣を持ち上げ、殺気を纏い始めた。こりゃあれだ。臨戦態勢って奴か。面倒臭い……。


「俺等と戦うつもりか? 正直面倒臭いんだけど」

「勿論。君達は知ってはならぬ事を知ってしまいましたので、口封じをさせていただきます」

「あっはは~。せいぜいぼくを楽しっませてよね!」


 クソ眼鏡が瞬時に杖を構え、一番槍ちゃんはあの龍王の息子(自称)と比べれば遅いが、十分に速い速度でもって間合いを詰め、大剣を振り抜いてきたんで件で受け止めようとしたんだが、刃と刃が触れそうになった刹那。大剣の軌道がどうなってんの? って速度で変化。側頭部にクリーンヒット。


「えっ!?」

「……おお。結構重いな。一番槍ちゃんはかなりの実力者なんだねぇ」


 アニーのオリハルコンハリセンの一撃より重い一発でわずかに上半身がズレ、痛いと感じたもののダメージらしいダメージはない。


「っく!?」

「おしい。もう少しで抱き着けたのに」


 せっかくボケっとしてたからいけっかなぁと思ったが、すぐ正気に戻っちゃって逃げるように距離をとられてしまった。今の童貞レベルならあの年齢くらいの娘であれば自分か行けるんだがなぁ。


「こんな時まで……」

「仕方ない事だ。そこに綺麗で可愛い女性が居れば、お近づきになりたいと思うのが俺の本能よ。それよりもルナさん的にあの2人はどんな感じ?」

「勝たれへん相手。アスカ居らんと逃げ出す」


 さっきからプルプル震えてるのはそういった理由からか。改めて〈万能感知〉で視てみると、確かに2人の気配とルナさんの気配には大きな差がある。こりゃあ下手するとユニ並じゃないか? 今まで相対してきたどの連中よりも圧倒的に強いな。


「なるほどね。とりあえず隠れてなよ」

「それを許すとでも? 〈火雨(ファイア・レイン)〉」


 ようやく詠唱を終えたクソ眼鏡の杖から真っ赤な雲が発生。そこから無数の火の矢が降り注いできたんで傘代わりに神壁で防いでいると、魔法の隙間を縫うように一番槍ちゃんが迫って来たんで、神壁をルナさんに任せてこっちも間合いを詰める。

 そして、当然のように迫る一撃を防御するでもなく脳天で受け止め、下心満載の動きで抱きしめようとするも、どうしてもあと一歩ってところでするりと逃してしまう。


「ムっカつく!」

「何がよ。俺だって抱きしめらんなくてムカついてるぞ」

「全く避けようとしないとっころ! ぼく結構強いんだっけど!?」

「確かに。俺的に一番槍ちゃんの可愛さには強みを感じるな」


 目が複数あるのはちょっと気になるものの、幼女ながらに引き締まったいい体をしてるし、胸だってすでにアニーを超えている。十分に5年後10年後が楽しみな逸材と認定できるから素直に褒めてるっていうのに、どうやら納得がいかない様子。


「ちょっと〈参謀〉っ! 強化魔法の利きが弱いってるんじゃないっの!」

「何を馬鹿な事を。僕はいつも通りの物をいつも通り付与しましたよ」

「だったらなんだって人族1人斬り殺せないわっけ!」


 クソ眼鏡に怒鳴り散らしながら、一番槍ちゃんが俺に大剣を叩きつけてくる。一応服とかには切れ目が入ったりしてんのになぁと思ってるが、それじゃあ満足しないんだろう。


「……とても人間とは思えない頑丈さですね」

「それでも人間だけどな。どうする? 帰るって言うなら追わないが?」


 一番槍ちゃんの全力の斬撃も効果は薄く、クソ眼鏡の魔法も神壁の前では何の意味もない。

 俺が本気を出せば秒で片が付く戦闘だけど、無尽蔵に復活が可能とはいえ将来有望な一番槍ちゃんを殺してしまうのは忍びないからね。ここで無傷で見逃してあげれば、俺に対する好感度もうなぎのぼ――らずにめっちゃ下降してるっぽい顔してんなぁ。


「こんなに舐められたのっはCランクの時以来。マジになっていいっかな?」

「……本気を出しても構いませんが、装置に傷をつけるのはいけませんよ」

「そんな事言われなくても分かってる」


 どうやら今までは本気じゃなかったらしい。いわゆるあと変身を2回残してる状態な訳だけど、残念だが俺はあと8回残してる状態だからな。


「はぁ……いやだいやだ。何だってどいつもこいつも2言目には戦おう戦おうっていうのかねぇ。もう少し平和的に生きられんもんかねぇ」


 ため息交じりに一応剣を構える。一応〈身体強化〉を2割から3割に引き上げ様子を見るか。


「そう余裕でいられるのも今のうちだけですよ。一番槍が本気を出せば、魔族であろうと敵ではありませんので、人間でしかない君など手も足も出ない事でしょう」

「さぁて。それはどうかね」


 魔族を倒せる程度じゃ、俺を殺せるには全く足りない。まぁ、ダメージを負うような事はあるかもしれんけど、〈回復〉がある限りは致命傷には至らない。

 程なくして、一番槍ちゃんが本気になったらしいんだけど、ちょっと距離があるせいで見た目は全く変わってないようにしか見えん。とりあえず相手の出方でも伺ってみま――


「っがあ!!」

「っとと」


 随分と早くなった速度で、さっきよりはるかに速い速度でもって大剣が振り抜かれたんで、今度は受け止める事を完全に放棄。打ち込まれるたびに引っ叩かれたような感覚があるものの、HPの減りは〈回復〉には及ばない。


「んぎっ!?」

「隙ありぃ」


 剣を打ち込まれてる間に床にばら撒いておいた感圧式の強力な接着剤がようやく効果を発揮したようで、一番槍ちゃんの上体が大きく傾いたその隙を突いてようやく抱きしめる事が出来た。

 うーむ。やはりこの世界は風呂が広まってないせいか臭うねぇ。女子らしく香水で誤魔化してるようだけど、俺的には嫌いな匂いだ。


「離っ……せ!」

「まぁまぁ。そう暴れんなって。とりあえず一番槍ちゃんが居ればいいから、クソ眼鏡は殺す事にする」


 情報って観点で見れば、クソ眼鏡も生かして捕縛した方がいいんだろうけど、野郎ってだけで欠片も気が乗らないからな。サクッと殺すか。


「理解しがたいですね。一番槍の本気を避けないどころか傷すら負わないとは……おまけに加減したとはいえ僕の魔法すら無視ですか。正直言ってここまでの化け物と対峙したのは〈龍王〉以来ですね」

「じゃあ俺はそれ以上の存在って訳だ。案外その〈盟主〉って奴より強いんじゃね?」


 なーんて事をサラッと言ってみると、意図した訳じゃなかったが2人の気配がガラリと変化した。

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