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#344 そんな装備で大丈夫か? あ? 俺の用意したモンに文句あるってのかコラ

「いよぉ~し到着ぅ」


 軽い足取りで、跳ねるように移動してたらあっという間に到着した。まぁ、と言っても数時間は走りっぱなしだったから日焼け跡やシミ一つない俺の美しすぎる足が疲れちゃったよぉ。肉刺なんかが出来たらどうしてくれるんだと内心ユニにプリプリしながら担いでた扉を下ろし戸を開ける。


「……もう着いたん?」

「ああ。あそこが――と言っても見えないだろうけど、最後の場所だ」


 見る先には、どうやら不可視の結界か何かが展開してるらしいが俺の目にはハッキリとそこそこデッカイ塔が見えてる。

 最悪だぁ……今まで回ってきた施設と比べるまでもなく中心的施設だってのが一目で分かってしまうのと同時に、〈万能感知〉で10階近い階層には随分な数の謎の組織員だろう連中がいやがる。


「どしたん?」

「いやぁ……なんで俺って運が無いんだろうなぁって思ってな」

「勝てないん?」

「馬鹿言っちゃいけねぇよ。数ばっかでロクな連中が居ねぇんだから楽勝に決まってんだろ」


 そう。常人レベルで考えれば、恐らくであるが随分な強者だろう奴が数人確認できるが所詮は俺の足元にも及ばん雑魚連中。綺麗で可愛い女性で無ければ出会い頭にぶっ殺す事にためらいは微塵もねぇ。


「じゃあ何なん?」

「面倒臭ぇんだよ」


 まず1階層の奴を全滅させる。それだけでも数10回は剣を振り回さなきゃなんないし、無駄に上に伸びてるんでいちいち上らないといけないってのも面倒に拍車がかかってる。

 おまけにそれを10回近く行わなきゃなんないってのが非っ常にやる気がそがれるんだよなぁ。もし壊しても構わんよと言われてれば、てっぺんまで飛び上がっての稲妻切りでバラバラにしてやるところなんだが駄目って言われてるからなぁ……。


「うちには分からへん」

「まぁ、見えるようになれば分かる」


 ルナさんも俺ほどじゃないだろうが面倒臭がりだからな。この全容を目の当たりにすればきっと俺のげんなりした表情に同意してくれる事だろうとズンズン近づいて行ってるんだが一向に反応する気配がない。

 ……結局、入り口らしき扉の前に立ってもルナさんは何ら反応を示さないんで、それを蹴破って堂々と入場を果たす。


「何者だ!」

「こんちわっす。俺の酒池肉林のために死んでもらうわ」


 いうが早いか、小石散弾を叩きつけて10数人を一瞬のうちに肉塊に。

 それにわずかに遅れてルナさんが魔法を撃ち込んで1階の制圧が完了したが、当然ながらこれだけ騒げば上の階から敵が大量に流れ込んで来る。うむ! 騒ぎを起こせば起こすほど相手側からやって来てくれるのか。それならいちいち階段を上がる手間が省けていいね。


「上……高いん?」

「王宮の1階から2階に上がるまでを2回繰り返すくらいの距離を10回続けるくらいだな」

「アスカの面倒の理由分かった。めちゃシンドイ……」

「そうだろうそうだろう。まぁ、しばらくはここで何とかなるだろ」


 ようやく俺の嫌そうな顔の理由が分かったルナさんも、眉間にしわを寄せる。やはり同類だ。

 なんて会話をしながらも、次々に降りてくる経験値に石を投げつけ。途切れたら〈万能感知〉を頼りに天井に向かって放り投げたりしながら潰していると、ようやく第一の刺客が悠然と階段を降りてきた。


「随分と暴れてくれたな。どうやって見つけたのか知らんが、ここを知った以上生かして返すわけにはイカンな」


 現れたのは中肉中背の野郎。全身青色の皮鎧を身にまとい、利き手であろう右にはショートソード。左には小盾といったオーソドックスが靴履いてやって来たみたいなThe・騎士って感じの奴だ。因みにフェイスも俺の怒りに触れないレベル。


「その辺の心配はせんで大丈夫だぞ。どう頑張ったところで死ぬのはそっちだし」

「大した自信だな」

「純然たる事実だよ。つーかこういう会話も無駄だからさっさとかかってこいよ――とルナさんが申しております」

「お前じゃないのかい!」


 おぉ……意外といいツッコミするじゃなぁ~い。とりあえず60点バッチを相手の足元に褒美と称して投げておく。メイド――おっと。冥土の土産としては最高だろう。何せこの俺がナイスツッコミと認めた証だからな。きっと地獄で優遇されるだろう。


「なーに。お前如きの相手、ルナさんで十分って事よ」

「ホンマに?」

「ホンマにホンマに。何のためにここに来るまでレベルを上げて来たと思ってんだ。最優先としてルナさんが死なないようにって思いも多分にあるんだが、大きな理由としては俺が楽出来るかもって考えもある訳よ」


 この世界で実力者なんて呼ばれて粋がってる連中は大部分がデコピン1発で沈む雑魚ばかり。正直言ってそんなのを相手するのって超絶面倒なんだよね。しかもそれが6ヶ所ですのよ奥さん。これはもう俺的労働基準法違反しまくってる。だからルナさんに任せる。


「ええよ。装備もろて。強ぉしてもろた。やる」

「おう。まぁ負ける事はないだろうから気楽にな」

「せやからシルルに会わせて。もっとやる気でる」

「構わんぞ」


 前回、シルルが俺のところを訪ねてからそろそろ一週間が経つから。紙が切れただインクが切れただトーンが切れただと騒がしくやって来る頃だろうからな。そん時にはほぼ確実に一緒に居るだろうし、安請け合いしても何ら問題はない。最悪の場合は丸男にでも呼び出させれば万事解決ぅ。


「ほんなら、すぐ終わらす」

「話し合いは終わったかい?」

「ん。うちがあんたを殺す」

「魔法使い風情1人で私を相手に勝てると言い切るとはね。その伸びた鼻をすぐにでも――っ!?」


 相変わらずの高速詠唱……惚れ惚れするねぇ。あちらさんも咄嗟に盾で防ぎはしたがビックリしてらぁ。まぁ、装備という装備に〈詠唱短縮〉の付与をバチコリ捻じ込んでるからな。Lv2の魔法もほぼ無詠唱に近い。


「舐めたらアカン」

「人生舐めずに~これなぁ~めてぇ~」

「急に何?」

「いや……つい、な」


 ついつい反応してしまう己の反射神経が恨めしい。幸いにも怪訝な表情をされただけでよかったが、これが同類の前だったらと考えるとちょっとIT。おっと。またやってしまったがこれは言葉にしてないのでセーフだろう。

 とりあえず、戦闘はルナさん優勢なので俺はボーっと待たせてもらう訳ではなく、より面倒を省くためにこっそり階段横まで移動し、〈万能創造〉で煙玉を大量に創造して2階に向かって投げ込み続け、後は寝転がって週刊誌を読みつつボケっとしてるだけ。


「〈地槍走(スパイク・グレイヴ)〉」

「ぬう……っ!?」

「避けるんか」

「この程度の魔法を避けられないようでは上には立てないからな」


 おぉ……新連載のこれ、絵も良いし頻繁にギリギリが拝めてエロくていいなぁ……。こっちのは随分と急展開だな。こっちのは……あぁ、連載終了か。アニメ化もして同人誌としても随分と世話になっていただけに、感慨深いものがあるなぁ。

 そうやっていくつかの雑誌を読みふけっていると、上の方からどたどたと結構な数の足音が近づいて来たんで、片付けをして階段前を開けてしばらくすると、顔中から汁という汁をまき散らしてる連中が転がり込むように1階へ。


「よそ見。アカンよ」

「チッ!」


 突然の出来事に対し、標準騎士は驚いたせいで隙を作り。

 ルナさんはここ数日俺と一緒に居たおかげで耐性が出来てたんだろう。何にも反応する事無く魔法をぶっ放して、標準騎士の盾を吹っ飛ばした。


「これで終わり。〈岩撃(ロック・ショット)〉」

「が……は!?」


 盾のなくなった標準騎士は、ルナさんの間断ない魔法を避け切れずに直撃。来ていた鎧は大きくひしゃげ、血を吐きながら吹っ飛んだ。


「勝ち」

「残念」


 勝負の観点で言えば確かにルナさんの勝ちではあるが、生憎と奴はまだ生きているので止めを刺さなければ本当の意味での勝利とは言えないんだなぁこれがって事なんで、石を投げつけてその身体にいくつも穴をあけてやってキッチリ息の根を止めてやった。


「むぅ……」

「油断大敵だ。次はしくじらずにしっかりとやればそれでいいんだよ。幸いにも実験体はここにたくさんいるからな」


 そう言いながら、視線を降りてきた連中に向ける。とりあえず煙による影響は落ち着いたみたいだけど、顔中汁でぐちゃぐちゃだし、武器らしい武器も持っていない。


「ええん?」

「それを判断するのルナさんだが、獣人領を滅茶苦茶にしようとしてる連中だってのを注釈しとく」

「ん。分かった」


 言いたい事を理解したルナさんは、情け容赦なく魔法を行使してその場に居た全員を一塊の肉へと変貌させた。これで随分と手や足を動かす手間が減ったのは良かったものの――


「……アスカ」

「うん。失敗したな」


 窓のない塔だったらしく、煙が滅茶苦茶充満しまくってる。これじゃあ前もロクに見えん。

 とりあえずガスマスクを創造。後は俺が壁を殴りつけて大穴を開けての換気をしながら最上階まで登る羽目になりましたとさ。

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