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#339 そんな装備で大丈夫か? ――いや、これ以上求めたらドエライ目に合うわ!

「あれが一か所目だな」


 ユニを走らせ続けて数時間。おおよそで百数十キロを走破。一見すると代わり映えのない荒れ果てた荒野にしか見えんだろうが、こっちには天下御免の〈万能感知〉があるからな。数キロ先に100人近い真っ黒な反応がしっかりと発見できている。


「よぉ分かるな。ウチ等にはなんも見えへんわ」

「スキルの一種だからな。さて……ここからどうすよ」

「いつも通りアスカが突っ込むんと違うんか?」

「他に5カ所もあんだぜ? そんなメンドイ事するかっての。こうして面突き合わせてんのは、お前等の中で誰が行くかって話し合いを設けるためだ」


 ざっと見た感じ、強そうな奴はいなかったし、内部の全容を見てもさほど広い場所じゃない。一応そんな情報を紙に書きだしていく。


「数は仰山居るんやな」

「せやね。それに魔法をあんま使ぅたらアカン言うのは、あてとルナに厳しいわぁ」

「魔法使うくらいなら大丈夫だと思うぞ」


 あのぬいぐるみも魔法っぽいのを使って結界を張ってたが、特にMPが流れていくような動きはなかったからな。それでも絶対じゃないだろうから大規模な魔法は止めておいた方がいいし、何より地下でそんなもんをぶっ放せば崩落からの生き埋めコンボになる。


「せやけどLv1でどうにかなりますのん?」

「どうにかするための装備だ」


 一応アニー達の装備は定期的に更新してあるんで、今じゃあ総オリハルコン。別にヒヒイロカネが作れない訳じゃないんだしそっちでよくね? って思うんだが、なんでなのかよくわからんが2人は頑なに拒否をするんだよなぁ。

 とりあえず同じような杖をいくつか創造し、それに低レベルながらも〈付与〉を施してゆく。


「こんなもんかね」


 アニーには持ち前のスピードを生かせるように。

 リリィさんには魔法の威力上昇だったり詠唱速度上昇だったりと魔法特化で。

 あとは各種ポーション類を――と思ったんだが、前に蓋を開けた瞬間にエリクサーが吸い込まれたのを目の当たりにしてる以上、そういった類の物は持たせらんないんで、アクセサリーに〈自動回復〉を付けたんで、それで何とかやりくりしてほしい。


「さて。あそこをウチ等で制圧すればええんやな?」

「ああ。それが出来たら、鞄の中に入ってる黄色い透明な板を入り口に設置してくれりゃあいい。最悪の場合に備えて呼び寄せ石を渡しておく。死にかけるようなことがあったら迷わず使えよ」

「分かりました。ほんなら行ってきます」


 ――――――――――


 アスカが乗る馬車があっという間に遠ざかってくわ。獣人領を守るためやとはいえ、ホンマにウチ等だけで100人近い連中を相手にするんかぁ……。自信ないわぁ。


「はぁ……ああも安請け合いをしたはええけど、ホンマにうまくいくんやろか」

「アスカはんが大丈夫言うたんよ? 出来るに決まってるやん」

「ホンマリリィは楽天家やな。ウチは全く自信が持てんわぁ」


 アンリエットもユニもアスカもバケモンみたいに強い奴ばっかやからな。まるで歯が立たんウチとリリィでホンマに勝てるかが全く分からん。

 アスカは大分と楽に勝てる言うてくれたけど、やっぱ日ごろの手合わせでボコボコにされとるせいか自信が持てへん一方で、リリィは能天気なんか平然としとる。こいつも同じくらい丸男言う魔物の腹から出てくる魔物の魔法にいいようにやられとるはずなんやけどなぁ。


「グチグチ言うてても解決せぇへんよ」

「わーっとる。行けばええんやろ。行けば」


 このままここでボーっとしとっても干からびて死んでまうだけや。それやったらさっさと連中を切り伏せて、あそこにあるらしい獣人領を滅茶苦茶にするらしい施設を制圧するだけや。


「ほんなら前は任せるわ~」

「はぁ……ウチ等が失敗してまうと他に迷惑が掛かってまうからな。さっさと済ませるで」


 覚悟を決めて一気に駆け出す。アスカの話やと入り口付近には罠が仕掛けられとる言う話やけど、ウチの〈鑑定〉越しの視界には確かに罠っぽいなんかが仰山設置されとるものの、キッチリ解除方法は載っとるんでそれに従って行動すれば相手に勘付かれることもなく入り口に到着や。


「手際がええね。アスカはんの持っとる本に載っとった怪盗の三世になれるんと違う?」

「あれはどっちか言うとアスカに近いやろ。女に見境ない所とかそっくりや。それよりもこっから先は一応静かに行くで」

「ほんならこれの出番やね」


 そう言いながら、リリィが靴のつま先で地面を数回蹴るだけで、その姿が透明になったうえに気配が随分と薄くなりおった。一応説明を聞い取ったけどまさかここまでのモンやとは……やっぱアスカは野に放ったらアカン奴やな。

 リリィに倣ってつま先を小突いて〈気配希薄〉と〈迷彩〉を展開させてから隠し扉を開けて中に――


「あ? 急に開い――ぐぎゅ!?」

「……危ないところやったな」


 まさか戸を開けるなり目の前に人がいる思わんかったせいで反射的に殺ってもうた訳やけど、こない簡単に斬れるとはなんや拍子抜けやな。


「アニーちゃん?」

「ああ。いきなり人が居ったんで殺してもうた」

「悪い人等なんやったらええんやない?」

「それもそうやな」


 そもそも相手は、この獣人領をなんでか知らんが滅ぼそうとしとる連中やったな。ほんなら殺しても特に問題はあれへんか。最悪の場合はアスカがエリクサーで何とかしてくれるやろ。

 っちゅう訳でひと悶着あったものの、問題なく処理できたんで悠々と降り立つ。


「んむ……っ。えらい臭いやわぁ……」

「しゃーないやろ。こんな暑さで風呂もないうえに地下なんやから」


 思えばウチ等も贅沢になったもんやなぁ。アスカに出会う前やったら、多分やけどこの程度の臭いは気にならへんかったはずやのに、毎日風呂に入って毛並みがツヤッツヤになるシャンプーっちゅう液体で洗うようになってから妙に周囲の臭いが気になるようになってしもうた。


「はぁ……さっさとおわらせてまいましょ」

「せやな」


 不意の一撃で敵を倒せた事で、ある程度ウチ自身の強さいうんもなんとなしに理解できた。これならイケるで!

 そんな感じで、気配をかなり消し去り。透明になったウチ等を前に、ロクに抵抗できる奴なんて居らんくて、誰も彼も一刀で骸や。

 そんな中を適当に歩き続け、ようやくいっちゃん奥やろう場所までたどり着いた訳やけど、やっぱやりすぎたんやろうな。妙な魔法陣の周囲に人が仰山居って油断なく周囲を警戒しとるわ。


(どないする?)

(どないしましょうか……)


 あんだけ密集しとったら、リリィの範囲魔法一発で片付くやろうけど、それをやってまうとここ自体が崩落してまうかもしれへんし、気付かれてまうとそれだけ他の場所を警戒させてまう……けど、他の連中やったらそうされたところで意にも介さず蹴散らしそうやなぁ。


(……せや。アスカから預かっとるあれで閉じ込めるなんてどうや?)

(なるほど。それならいけるかもしれへんね)


 地下っちゅう事もあって部屋は全体的に薄暗い。それであれば気付かれる事もなく閉じ込められるやろう。何せドラゴンのブレスの直撃ですら傷一つつかんっちゅう代物らしいからな。

 そうと決まれば即行動や。するりと室内に潜り込み、対角線上に位置取るために移動していると――


「ん? なんかいい匂いがしねぇか?」

「そうか? どっちかって言うと鼻の奥が痛いほど臭いぞ」


 あっちゃあ……どうやら気配と姿は消せても匂いは誤魔化されへんらしい。リリィもヤバいと思い始めたやろうから、さっさと位置について閉じ込めんとばらけられたら面倒やからな。

 ……にしてもこの香りが臭い言うんは、そいつの嗅覚を疑うわ~なんて事を考えながら、淡々と連中を捉えるための檻を設置してく。急がへんと動き始めてまうかもしれへんからな。せっせと〈魔法鞄〉から取り出しては音を立てんように地面に刺していく。

 最終的に、不審には思われたもののアホ共が持ち場を張れるような事もなかったおかげでつつがなく設置が終わった。


「リリィ。やってまえ」

「うまくいくか分からんけど、とりあえず撃ってみますぅ」

「っな!? 何者だ!」

「答える気はあれへんよ。自分等はやったらあかん事をしてもうた。その報いは地獄でうけぇ」

「なんだ? 見えない壁があるぞ!」


 ようやくウチ等の存在に気付いたみたいやったけど遅すぎるわ。声を出した瞬間に戦闘態勢に入ったんはええけど、紙みたいに薄い板きれ1枚で100人近い連中の攻撃を一切通さへんってのは、そこそこ頑丈らしいな。


「〈旋風(ウォローウィンド)〉」


 詠唱を終えると同時に、結界内で風の刃が縦横無尽に舞い踊り、中に居る連中を一切の情け容赦なく切り刻んでいくわ。やっぱ風属性魔法って密室やとえげつないわぁ。

 こうして、この場に居た謎の連中は1人残らず肉片になった訳やけど、肝心の装置には傷一つついてへんし、どうやらここはすでに魔力の充填が終わってもうてるようやったのは残念やった。


「あっさり終わってもうたな」

「アスカはんが言うてはった通りやな」


 ホンマに強ぉなっとるんやな。こないにあっさり終わってまうと思わんかったけど、そもそもアスカが次ぃここに来るんは7日くらい後や言うとったから待ってるしかなのがシンドイわぁ。


「アニーちゃん。コテージ出してや」

「そうやったな。すぐに出すわ」


 ま。この中で暮らしとったらあっという間やろうから心配あらへんわ。

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