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#337 要は解決すりゃいいのよ。そうすりゃそれが事実

 他の連中の準備は少しかかるとの事なんで、俺はアニー達に急遽予定が変わったって事を言うために〈万能感知〉を頼りに探してみると、どうやら舌戦を繰り広げている間に商談が終わったらしく、歓楽街へと向けて突き進むリリィさんの反応の少し先で待ち構える。


「おいっすぅ」

「アスカはん? こないな所で何してますのん」

「いやぁ。実はおっさんズに偵察に向かうルナさんの護衛をしてくれって頼まれてな。泣く泣くどんちゃん騒ぎを中止する事になったんだよ」

「ほーん。女漁りを優先するアスカにしては随分と気ぃ狂った判断やないか」

「ちょっと色々あってな」


 大雑把にそう言った結論に至るまでの経緯を伝えると、何故か2人からうわぁ……なんてうめき声がもれたが意味が分からんのでスルー。


「――という訳なんで、ついて来るかどうか聞きに来たんだ。どうする?」


 一応アニーもリリィさんもその辺の一般騎士と比べものにならん実力と装備を備えているんで、十分に偵察としての役割は果たせると思うが、外の世界は大分と暑い。それはもう謎の文字を縫い付けたフード付きマントを纏っても汗をかくくらいらしいからな。

 綺麗で可愛い女性の滴る汗……イイね。個人的には是非とも見せてもらいたいもんだが、本人達にとってはしんどいだろうから強制はしない。ついて来てくれればげんなりする空気の割合をいくらか改善させてくれるし、偵察の手間も少なくなる。


「せやなぁ……商売も一区切りついたし、獣人領の危機やし同行させてもらおか」

「あてもご一緒させてもらいますよって。任しといて下さい」

「おう。じゃあすぐに行こうか」

「え? 今すぐなん」

「そりゃそうだ。だって偵察じゃなく潰すつもりだからな。騎士共は邪魔になりそうなんで置いていく」

「ええんですの?」

「いいんじゃねぇの? こっちとしてもノロマな奴が居ないから迅速に行動できるし、あっちからすれば余計な戦力減少がなくなる。イイ事尽くめだろ」


 こっちとしてはさっさと解決してさっさと綺麗で可愛い女性にお酌されたアルコールを浴びるように飲み明かしたいんだからな。それなら偵察なんてまだるっこしい事はスパッと諦め、ささっと潰すのが時間も兵も無駄にならない。

 そんな説明をしながら街の入り口近くに到着すると、すでにルナさんを乗せた馬車が待ち構えていた。


「おーホンマにルナも行くんやな――って、どうやって連れ出してきたんや」

「ん? 普通に連れて来たぞ」


 なんで驚かれてんのかよくわからんが、こっちとしては暑さに耐性のあるローブを着せ、魔法を使うらしいので自重もせずにオリハルコンの杖を手渡したり死んだりしないようにといくつか便利な道具を渡した上で普通に連れて来ただけだ。特に何かした記憶はマジでない。


「そう。獣人領の危機らしい。それやったらうちも手伝う」

「珍しい事もあるんやね。ルナが簡単に動くなんて」

「そうなのか?」

「せやな。アスカはん並みに気難しいんよ。おまけに男同士が好き言う変人ですよって」

「むか。あの話は至高。リリィこそ女同士が好きなんて気持ち悪い」

「なんやて?」

「なに?」

「はいはい喧嘩はそこまで。これから嫌でも体力使うってのに無駄な事をするな」

「「無駄やない!」」

「……俺は無駄だと言ってんだぞ? まだやるか?」


 百合が好きか薔薇が好きか。そんな事は未来永劫歩み寄る事が無い――まさに無駄な論争にすぎない。そもそもの方向性が違うんだ。それを論破したり真反対の勢力に引き入れるなんて百害あって一利もなし! だからちょろっと殺気を突き刺すだけですぐに大人しくなってくれて先生は大変に満足です。


「で? こんな少人数で制圧できる相手なんか?」

「知らん」

「また無計画かいな……」

「しかし。相手方の実力はさして強者と呼べるモノではございませんでしたな。レベルに換算いたしますと……おおよそで40~50の間と言ったところでございましょう」

「そんなもんですの? せやったらあて等でもなんとかなりますなぁ」

「せやな。さすがに1人やと厳しいやろうけど、アスカが控えてる思うたらそん位どうとでもなるやろ」

「ホンマに? 40・50は冒険者でも上位。うちは難しい」


 丸男の敵評価に対し、日々のレベル上げによって強くなってしまった2人はさらりとそう言ってのけたが、ルナさんはそれほど強くなっていたなんて微塵も思っていなかったために少しビックリした様子でそう呟くと、何故か愕然とした表情に。


「なんちゅう事や……まだ常識がある思うてたのに」

「アスカはんにアカン身体にされてもうたんやね」

「誤解を招くような言い方をするな!」


 とにかく。その程度のレベルであればルナさん以外は問題なく制圧できる。まぁ、アニーとリリィさんは個人じゃなくコンビでって制限はつくがね。それでも雑魚い騎士連中を引き連れて行動するよりは圧倒的に怪我の心配がない。


「とにかく。俺は面倒が嫌いなんで偵察と制圧を同時に処理する」

「ええよ。うちも面倒嫌い」

「じゃあさっさと出発するか」


 一応泊まってる部屋に、『一足先に偵察してくるわ』との書置きも残してるんで、万が一にも敵前逃亡しやがったなと不名誉極まりない罵倒を居ない所でもされるのは気に入らんからな。勿論綺麗で可愛い女性にであればやぶさかではない。

 何故潰すではなく偵察としたのかは、前の村で精霊を開放した途端に税収を増やした事からも、内通者なり裏切り者が居るんだろうと判断しての措置だ。こうしておけば、少なくとも尻尾を巻いて逃げ出すみたいな事になるには少し時間が稼げると思いたい。

 これで後は、道中でルナさんのレベリングを行いつつ各所の戦力を把握しておけば、アニー達への適切な割り振りが出来るだろう。


 ――――――――――


「さて……これが精一杯かのぉ」


 付近の街や村の現状を知るために騎士を派遣してしまったがために、実力もさることながら数が圧倒的に足りん。現状の獣人領では魔物もロクに出ないと分かっておったが、揉め事が起きた際の戦力として多めに派兵したのは失敗じゃったな。

 勿論。王の命を守るための精鋭は残してあるんじゃが、それを放出するわけにはイカンので結果的に偵察に送り込む人員は平均してレベル20程度の者達となってしまったので、あの小娘の戦力はどうしても必要じゃ。まさか変異種を単独で――それも短時間で討伐するとは思わんかったからのぉ。

 あれほどの若さであの実力……いったいどれほどの死線を潜り抜ければあれほどの境地に達する事が出来るんじゃろうな……。


「いやはや。世界とは広いモンじゃのぉ」


 この薬一つとっても常軌を逸しておる。どんな力が働けば人体の構造をこうもやすやすと変化させる事が出来るとなるのはもはや神の領域ではなかろうか。


「ふぅむ……あの店の者に探りでも入れさせるとするか」


 奴は女のクセに女に弱いという奴じゃからな。それとなく問いただしても大して怪しまれる事無くその秘密を探れるじゃろう。

 人選も済ませ、外で活動をするために少なくない量の食料の申請も奴に任せてあるから、遅くとも明日には出立の準備が整うじゃろう。


「ふぅ……あの子娘が来てからというもの、妙に忙しさが増えたような気がするのぉ」


 もちろん助かっている部分もあるにはあるんじゃが、圧倒的に問題の方が大きいわい。おかげでさして必要でもなかった胃薬を必要とするようになってしもうた。

 そうして胃薬を飲み、部下に偵察任務を言い渡そうかと席を立とうとした時、同僚が飛び込んできおった。


「やられたよ。ルナとあの娘が居なくなってしまった」

「ぬぐぐ……あんの小娘ぇ……」


 恐らくじゃが偵察などまだるっこしいと感じ、潰しに向かったんじゃろう。奴等の実力であれば死ぬ事を心配する方が難しいが寡兵じゃ。万が一にでも失敗されると獣人領の未来が無くなってしまう。すぐにでも兵を送り出さんと取返しのつかん事になってしまうというのに、この男は随分と冷静なままじゃな。


「これでも焦ってるんだよ。しかし彼女を相手に何が出来る訳でもないからね。それと置き手紙だ」


 手渡された手紙に目を通すと、一応は偵察すると書かれているが絶対に戻って来た時には件の施設を壊滅させたなどと言った報告をし、それを問い詰めたところで終わった事をギャーギャー喚くなと言ってきそうじゃからな。

 あぁ……また胃が痛くなって来たわい。

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