表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
340/357

#333 外見で分かんだろ!!

「……それが真実だとするなら、獣人領最大の危機と言う事になるね」

「嘘と言う事はないのかの?」

「まず真実で間違いないで。そこは保証するわ」

「せやね。アスカはんは女性が絡んだら嘘を言うような人やないから」


 あれからすぐに王都に戻ると、やっぱアニー達に随分と問い詰められた訳よ。

 仕方がないので飯を作りながらあらましを説明してやると、随分と顔色が悪くなってギャーギャーと文句を言ってきたけど睡魔には勝てないんで飯を食って就寝。

 翌日になってすぐにたたき起こされ、寝ぼけ眼のところを引っ張りまわされておっさん共を捕まえて強引に部屋へと連れ込んで事情を渋々説明すると、当たり前だが疑いの目を向けてくるところをアスカだからと2人は断ち切る。


「そうそう。俺だって綺麗で可愛い女性が焼け死ぬのを見るのは嫌……ふわぁ……っ」

「この緊急時にあくびとは……随分と余裕があるのじゃな」

「まぁ、究極を言わせてもらえば人種である俺には関係のない事だし。いざとなれば影響が及ばないほど遠くに逃げる事くらいできるだろうしな」


 噴火の速度がどんなもんかはさっぱり分からんけど、距離も十分にあるし全力を出せば逃げ切れるだろう。それに俺には神壁がある。いざとなればそれを展開させてルナさんをはじめとした綺麗で可愛い女性くらいは守るだけの余裕はありまくりだ。


「しかし……これが事実とするならさすがに兵を派遣せざるを得ないんだけど……」

「そうやったな」

「時機が悪いわぁ」

「なんだよ。何か問題でもあんのか?」

「有り余っておるわ」


 なんでも、俺の助言を受けて色々と調べてみた結果、どうやら報告された書類のほとんどが虚偽の物と判明。すぐさま各所に兵を派遣したらしく、随分と戦力が減っているとの事。あん時のトカゲに乗っていた連中はそれだったのかね。

 とにかく。今はその場所に兵を派遣したくても難しいって状況って事だ。


「勇者が居るだろ。後は冒険者もそこそこの数いただろ」

「勇者はレベルアップのために朝早くから冒険者を引き連れてダンジョンに潜ってしまいおった。そのほかの腕の経つ連中はいつの間にやら随分と大きな怪我をしておってのぉ。何でも暴力沙汰を起こしたとかでその多くは牢に押し込まれ、まともに動けるのは低ランクの連中だけ。闇ギルドなんかに太刀打ちできんわい」

「そりゃご愁傷さまだな」


 なんでかこっちを見る目が鋭い気がするが、あれをやったのはあくまで門番だ。俺はその場に居合わせてちょーっとお手伝いをしただけ。報告にもきちんとそう記されているんだろうから、何を言ってきたところで知らぬ存ぜぬで押し通る。


「アスカ」

「メンドイから断る」

「獣人領の一大事なんやけど?」

「……どうにか出来んか?」

「じゃあ今すぐルナさんに会わせろ。そうすれば半分は何人も立ち入れないようにしてやる」


 ここで渋るようだったらもういいだろう。どうせ滅ぶ運命にあるんだから、城をぶっ壊して力づくでルナさんとのご対面を果たしてやろう。向かって来るってんならうち滅ぼすまで。どうせ土石流に飲み込まれて死ぬ運命にあるのであれば、俺が殺したところで証拠ものなからんだろうから罪に問われん――はずだ。

 俺の提案に対し、アニー達は額を突き合わせてあーでもないこーでもないと熱心な会議が続く事5分。ようやく結論が出た。


「……ええじゃろう。ほんに獣人領が神の怒りで滅んでしまうのであれば、他の連中も文句は言わんじゃろうからな」

「よし。だったら今すぐ案内しろ」

「その前に確たる証拠が必要じゃ。ワシ等はお主の出鱈目な力を見たくないと思うてしまう程目の当たりにしとるが、他の連中は疑わしく思っておる連中ばかりでのぉ」

「そんなアホ共をウチ等が少しづつ説き伏せとったんや。感謝しぃや」

「まぁ、全員が聞く耳を持っとるモンばかりではないがのぉ」

「中には勇者の代わりにダンジョンをクリアさせて見せろとか言うてきたアホもおりましたわ」

「却下だな。そいつが貴族とかじゃあなけりゃ、誰を出すかによってだがやったかもな」

「「……」」

「なんだよ。俺の生きる九割九分の理由だぞ? そもそもここに来たのだってルナさんと会うのが目的だとしても、綺麗で可愛い女性を得られるのであれば貪欲に狙うだろうが」


 金は潤沢。実力も最高レベル。権力は不要。とくれば他には三大欲求を満たすかねぇだろう。日本で暮らしてた頃から特に性欲が強かったな。言いズリネタが手に入った時はそりゃあハッスルしまくったモンだ。

 その他の旅だからな。綺麗で可愛い女性と関係が持てそうなチャンスがあれば遠慮せず要求するのは男としてごくごく自然な思考の流れだろうというのに、おっさんズは呆れたような顔をしてやがる。


「いや、聞いてたけどそこまで徹底してるとはね」

「その年でどれだけ色欲に狂っとるんじゃ」

「じゃかましい。お前等だって若かりし頃は女をとっかえひっかえしてたんじゃねぇのかよ」

「「あっ!?」」


 ……どうやら突いてはいけないところを突いてしまったらしい。両者共に明らかにテンションがグン下がりしてるし、ハゲの方に至っては死んだ魚みたいな目をして天井を見上げてる。どうやら外見上の問題は若かりし頃かららしい。


「アスカぁ……さすがに言ってエエ事と悪い事はある思うで?」

「いくら男が嫌いや言うても限度っちゅうもんがありますよって」

「ま、まぁその……これでもくれてやるから元気出せよ」


 さすがの変貌ぶりに、野郎には厳しくがモットーの俺でも憐みの思いが双肩にずっしりとのしかかって来たんで、それぞれに合った特別なお薬を提供してやった。


「なんじゃい」

「それぞれのコンプレックス――気になるところを改善してくれる便利品だ。あまりにも不憫すぎるんでタダでくれてやるよ」

「……すまないね。日頃から女女と言ってはばからない君にそこまで思わせてしまって」

「有難く頂戴するわい」


 まぁ、大して期待してないんだろう。俺を不機嫌にさせないために形式上受け取り、それを服用した瞬間――


「「ぬぎゃああああああああああああああ!!」」


 おっさんズが汚ぇ悲鳴をあげながらのたうち回り始めた。おっかしいなぁ? 魔物で試した時は大した反応もせずに刈った毛がもさもさ生えたり、手のひらサイズのネズミが馬並みにデカくなったりしたんだが、どうやら人間相手だと色々不都合があるらしい。


「アスカぁ! 今度は何をしたんや!」

「だから薬飲ませただけだって! お前等も見てただろ?」

「ええっ!? もしかしてあれを飲ませたん。アスカはんお人が悪いわぁ」

「せやで。あないな劇薬飲んで平気なんは魔物くらいやで」

「ふーん。そーだったんかぁ……まぁ、エリクサーがあるから問題ねぇだろ」


 このまま死なれると俺が犯人扱いされそうなんで、動かなくなったらエリクサーで元気にしようと、おっさん共がのたうち回る側でのんびり週刊誌をペラペラ。アニー達もそれぞれ漫画をペラペラして時を過ごした。


 ――――――


「ひ、酷い目に合った」

「あんな思いをしたのは戦場でも初めてじゃわい」

「いいじゃねぇか。おかげで生まれ変われたぞ」


 20分ほどでようやく断末魔以外の言葉がしゃべれるようになったんだが、チビのおっさんの方は俺の頭半分ほどデカかったくらいの背が2メーター50くらいまで伸び、ハゲの方はギネス狙ってんのかってくらいの長さの髪が頭頂部から異様なほど生えていた。実験は成功よ。


「ぬおお! 景色が違うのぉ」

「凄いね。これほどの効果があるとは」

「特別な薬だからな。それよりもさっさとルナさんのところに案内しろ」

「っとと。そうだったね。だが少し待ってくれ。さすがにこれだけあると動きにくくて仕方ない」

「ワシもじゃ。いきなりここまで背が伸びると思い通りに身体が動かんわい」


 突然の変化に戸惑うのも無理はないか。俺としてはそこまで急いでる訳じゃないんでボケーっとしてると、元・ハゲおっさんは髪を切り。元・チビおっさんは部屋の外周をふらふらとした足取りで歩き回ってる。


「うん。こんなものかな」

「こっちも十分じゃわい」

「ようやくか」


 どのくらいの時間が経ったんだろうな。こっちも漫画を数冊読み終わったから1時間くらいかね。おっさんズ先導で部屋を出ると、確かに元・チビおっさんの足取りは最初に見たモンと比べて随分と軽やかだし躓いたりといった不安定さが無くなってるし、元・ハゲおっさんもふっさふさの髪が嬉しいのかしきりに触りまくってる。

 そんな2人の変わり果てた姿に、すれ違うメイドなり兵士なりが気づかず不審な目を向けてくるも、1つ2つ声掛けをするとすぐに気づいてぎょっとした顔をしながら去ってゆくって光景を12回くらい繰り返してようやくたどり着いたのは、随分と質素に見える木製の扉。


「ここがそうなのか? 商談部屋にしては随分と質素じゃねぇか」

「……そう見えるかい?」

「あ? それ以外にどう見えるってんだよ」


 元・チビおっさんによると、ルナ嬢は派手な装飾や部屋が苦手らしく、室内も簡素なベッドと本棚がある程度らしいんだが、それだと来客者に対して色々と問題があるらしいので、豪華絢爛に見えるように幻覚魔法を施しているらしい。


「はーん。そんな風にはさっぱり見えんな」

「一応宮廷魔術師の魔法なんだけどね」

「お主の前では形無しか。ワシ等には金属製の扉に宝石をあしらった物が見えとるんじゃがな」

「うわぁ……趣味悪ぅ」

「奴の趣味じゃし、王宮ともなるとある程度の格が必要になるに決まっとるじゃろ。それよりさっさと入るぞい」


 特にノックする事もなく部屋に足を踏み入れてみると、中にはケバいくらいの化粧を施した狐獣人が、布団から顔だけを出して黙々と本を読んでいる――いわゆる引きこもりな感じの光景に出くわした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ