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#332 噴火警戒レベル3

 ふわりと宙を舞ったぬいぐるみは、そこからひねりを加えての一回転を披露しての着地を見事に決め切ったんで自然と拍手をくれてやるとどこか誇らしげに見えたが、そんなにぐるみにイフリアは速攻で掴みかかった。


「なにしてんだい!」

「なにって……用が済んだから逃がしてやろうと」

「なに考えとんじゃワレ! アレと黒づくめが一緒に居る時点で真っ黒じゃろうが」

「あぁ。そういえば精霊閉じ込めてたんだったな。何だってあんな事してたんだ?」

「精霊を閉じ込めるぅ? ぼぉくの知ぃらない情報ぉでぇすねぇ」

「なに言ってんだい! あたい等を襲ってここまで引っ張って来たのはそこら辺に転がってる連中で、あんたもここに居たんだから、こいつ等の頭目と思うのは当然だろう」

「あぁ……そういうこぉとでぇしたか。誤解してぇるようなぁので説明してあぁげますよ」


 って訳でぬいぐるみの解説を聞かされた。俺としては興味なかったんで大して真面目に聞いてなかったんだが、要約するとこいつと黒ずくめの関係性は浅くもないが深くもないって感じらしい。

 黒ずくめの連中の正体は闇ギルドって所に所属してるどんな汚れ仕事だろうと請け負う奴等らしく、こいつも正体がぬいぐるみとあってか、冒険者ギルドではまともに請け負ってくれないとの事なので、仕方なしに解読した結果の実験のために魔力が補充できる何かを持ってくるように依頼を出したら、まさかの精霊母が釣れたというとの事。


「凄ぇ嘘臭い話だな」

「そぉですねぇ。ぼぉくも自分で言ってて現実味が少なぁいと思いまぁすねぇ」

「捕まえるための道具は誰が用意したんだ? 普通触れないはずだろ?」

「彼らが自分達で用意したぁんでしょうねぇ。ぼぉくは精霊を連れてくぅるなんて予想しぃてません」


 確かに。こいつの言い分がすべて真実なのだとすれば、精霊を捕まえて来いなんて言ってないのだからある意味で寝耳に水のぬいぐるみ風情に用意してるはずもないが、そんな言葉を鵜呑みに出来るような状況じゃないのはイフリアとカサンドラだ。


「この状況でそんな言い訳が通用すると思ってんのかい!」

「そう言われてもねぇ、事実であぁる事に間違いはなぁいのですよぉ」

「ハッ! そんな言葉信じられないね」

「でぇは焼き殺しまぁすか? そぉんな事をしても、ぼぉくは別の肉体に魂を移すだぁけでぇすよ」


 奴の言動に一切の恐怖や嘘は見当たらない。どうやら本当にぬいぐるみを消し炭にしたところで生きながらえる絶対の自信があるんだろう。

 イフリアもそれに気付いたんだろう。空いた方の手から出ていた炎を苛立たしげに消し去った。


「やぁらないのでぇすか? そぉれならさっさと放してもらえませぇんかね」

「その前に。お前はこういった設備の場所を把握してたりしてねぇか?」

「もぉちろんでぇすとも。そぉれがいったいどぉかしたんでぇすか?」


 詳しく聞いてみると、どうやらこの王都付近にはここだけらしいが、獣人領全体に視野を広げると、全部で6ヶ所ほど似たような場所があるらしいが、そのうち4ヶ所が闇ギルドとは違った謎の集団に占拠されていて入れず、ようやく見つけたここで調査をし、知識欲に勝てずに闇ギルドに依頼を出したら何故か精霊母がやって来て、俺もやって来て魔法陣が起動しているところも見れた上に霊薬エリクサーの効力も目の当たり出来て結果として非常に満足したとの事。


「ふーん。つまりなんだ。ここを発見したのはたまたまだってのか?」

「それは違いまぁすね。ぼぉくは天才でぇすからぁ? 他の設備の位ぃ置からこの場所を導き出したんでぇすよ」

「なるほどな」


 まぁ、〈万能感知〉を持っている俺でも出来る事だが、ロクな地図すらない世界でそれが出来るってのは優秀な部類だな。まぁ、無機物に魂を入れるなんて魔法が使えるからとんでもない腕利きなのかと思っていたが、まさか他の連中が占拠しているってだけで尻尾を巻いて逃げるほどの奴だったとは思わんかったがね。

 とりあえず占拠されている場所を聞き出すために地図を取り出すと、ぬいぐるみは随分と驚いていたがそれを無視して占拠場所に印をつけてもらうと、確かに1つの山を囲むように存在している事がよくわかる。

 これに、俺が見つけておいた例の装置の位置を照らし合わせると、さすがに獣人領全土を網羅できるほどじゃないからな。一部だけだが、それでも随分と密接してる事がよくわかる。恐らく他の場所にも似たようなものが設置されてんだろうなぁ。


「そぉれにしても貴女は何者なんでぇすかな? こぉれほどの詳細な地ぃ図を持ち、ぼぉくの結界を破壊すぅる実力。興味深ぁいねぇ」

「野郎に興味を持たれても気持ち悪ぃだけだ。それよりもいい情報がたくさん入手できた。礼としてこれをくれてやろうじゃないか」


 そう言って、使い道のないくまの〇ーさんやモ〇クマのぬいぐるみをくれてやる。アンリエットは長話に速攻で飽きて寝てるんで、くれてやったと言ったら悲しむだろうが飯時にスイーツの10でもくれてやればすぐに機嫌が直るだろう。


「ほぉほぉ。こぉれは随分と出来が良いでぇすね。ガサツそうな性格をしぃているのに、こういう事が出来るとぉはねぇ」

「全くだねぇ。こういった細々したものが似合わなそうなのに感心するよ」

「他の誰かにやらせたんじゃ思いますわ」

「やかましい。それよりもそろそろ放してやれよ」


 ここまで十分なくらい情報を入手した。これだけあれば、おっさん共に言って討伐隊の編成させて一気に制圧させればいいだろう。俺は面倒事は嫌いだからな。こっちに吹っ掛けてくるようだったら勇者にでも押し付けてやる。


「ふぅ……やぁれやれでぇすね。ようやぁく自由の身ぃになれましたぁね」

「仕方ねぇよ。とんでもなく胡散臭い奴だからな」

「そぉれは自覚しぃてまぁすよ。しぃかし、ぼぉくの魔法はこういった物にしぃか効果が及ばないのでぇすよ。そぉれが唯一の欠点と言ったとぉころでぇすかねぇ」


 なんてことを話しながら施設を脱すると、ぬいぐるみは仲間を引き連れて空の彼方へと飛んでってしまった。まぁ2度と会う事ないよう祈っておくとしよう。あんな濃い野郎と面ぁ突き合わせるのはゴメンだかんね。


「で? これからどうするんだい」


 ぬいぐるみの情報提供で、ここと同じ施設があと5つ。そのうち4つが謎の集団に占拠され、きっと火の精霊から魔力を吸い上げて何かの準備をしてんだろう。残りパーセンテージを考えると、逼迫してはいないがさほど余裕もないってところの微妙なライン際ってところかね。


「とりあえず国の偉いさんに報告すっか。まぁ、時間はかかるだろうけどやってくれんだろ」

「ほいじゃったらワレがやればええじゃろ」

「ヤダよ面倒臭い」


 今回こうして足を運んだのは、イフリア経由で他属性の綺麗で可愛い女性型精霊を紹介してもらうためだと言う事でこうしてやって来たんだ。タダ働きはゴメン被る。


「面倒臭いで済むような事態で済む話じゃないんだけどね」

「あ? あの装置の事を知ってたのか?」

「そうさね。あたいもさっきの地図を見て少しだけ思い出したのさ。詳しい事は忘れたけど、アレが起動すると精霊火山から神の怒りが噴き出して獣人領が滅んじまうんだよ」

「急に物騒な話になったな」

「事実だからしょうがないだろ。あたいも過去に1度だけ見た事があったんだけど、ありゃあ酷かったね。Lv5の魔法が子供の遊びなんじゃないかってくらいに思えたもんさ」


 山から出るものと言えばまず間違いなくマグマだろうな。大きさから考えて獣人領が滅ぶレベルの噴火が起きるとはあんま考えらんないけど、ファンタジー世界に地球の常識を持ち込んでもあてにはならんか。

 目立つような働きをするのは嫌だが、さすがに滅んでもらっては困る。何せ綺麗で可愛い獣人との出会いが全くと言っていいほどないんだ。せいぜい勇者及び騎士連中には精魂尽き果てるまで馬車馬のごとく働いてもらおうかね。クックック……。

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