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#323 この俺とした事が……

 獣王の咆哮と共にドン! なんて音が聞こえたかと思ったら、頭頂部に辞書をポンと置かれたくらいの衝撃が確認できたが、当然だが痛いなんて思えるほどの感覚じゃない。気にも留めずに外壁を創造して突き刺し、50メートル移動しては創造して突き刺す。

 その間に何十って数の接触があった。あちらさんからすれば攻撃であるかもしれんが、こっちからしたらベタベタ触られてると感じる程度。正直に言って本気を出してるのかすら疑いたくなるんだが、こっちは仕事中であっちも仕事中。余計な茶々は終わってから確認すればいいだろ。


「あぁそうだ。お前王様だったよな? だったらどこら辺に門を築いたらいいのかのアドバイス――助言が欲しいな」


 ここでようやく振り返って相手の姿を確認してみると、ワゴン車に鉄柱を突き刺したような巨大なハンマーを握りしめ、ぜぇぜぇと荒い呼吸を繰り返して大の字で大地に寝転がっている身の丈3メートルはありそうな大男がそこに居た。


「おい。聞いてんのか?」

「き、聞いておるわ。しかし……今少し時が要る」

「ったく。それでも獣人の頭かよ。たかがハンマーの40・50振り回した程度でへばるなんざジジイな証拠だ。居るかどうか知らんがさっさと息子なりに家督を譲っとけ」

「ぬかせ。息子など余に比べれば尻の青い童にすぎぬ。まだまだ王の器には程遠い。それにこの猛暑で戦闘をすればいつもの数倍体力を消耗するに決まっているではないか」

「ふーん。それよりも門だよ門。どこら辺がいいんだ?」

「そうであるな……可能であれば今ある門扉と直線にならぬようにしてもらえればどこでもよいだろう」

「あっそ。じゃあ適当につけとくわ」


 一通り暴れて満足したのか、獣王は帰っていった。とりあえず門と門を直線でつなごうかなぁと思ったけど、スタート地点がそこだったからもうどうにもならん。戻すのも面倒だし、どうせなら多少ズラして敵が侵入しにくい感じにした方が注文通りで奴等もむせび泣いて喜ぶだろう。ランクは勿論外壁に合わせてヘボい奴一択だがな!


 ――――――――――


「よし。終わり」


 全体の半分近く終わった辺りで猛烈な面倒くささが襲い掛かって来たんで、それに抗うことなく仕事を放棄。別に1日で終わらせろなんていわれてねぇし、ルナさんに会える実感が薄い現状だとこの位が精一杯。

 ひーこらひーこらとアンリエットを運びながら街に戻り、いつものように綺麗で可愛い女性をナンパしつつ歩いていると、前の方からやって来る集団が〈万能感知〉で確認出来て、そいつらは非常に厄介な事に有名人らしく進む先の連中がこぞって道を開けやがる。

 まぁ、鉢合わせしたくないからしっかりと避けていくがね。俺がちょちょいと実力を発揮すればそんな連中に気取られるなんてマジであり得ねぇっての。


「帰ったぞ門番」

「おう。そういやぁ城の連中がお前の事探してたぞ? なにしたんだ」

「なぜ事件を起こした前提なのかが分からんが答えてやろう。俺は何も知らん!」

「犯罪者ほどそう言い切るんだよ。ってか聞いてんぞ? 勇者ぶん殴ったらしいな」

「おう。気に入らんかったからな」

「確かに分からなくもない。あの勇者、見た目はいいんだが妙に違和感を感じるんだよなぁ。歓楽街のお姉ちゃんみたいな――ってどうしたよいきなり」


 昨日までの俺を殺してやりたい気分だ! どうしてそこを真っ先に攻めなかった! 王都ほどデカい場所であれば綺麗で可愛い女性と共に酒を酌み交わしたり、ベッドの上でくんずほぐれつ。そんな桃源郷の事を欠片も思いつかなかったなんて……。


「俺は蛆虫にすら劣る女好き――いや、女好きの真似事をしていただけのゴミだな」

「……だ、大丈夫か?」

「どうなんだろう。綺麗で可愛い女性との邂逅すら忘れ、多くの時間を野郎との会話だったりおっさん共の願いを聞き入れるなんてぇ事に浪費してたせいで精神に強くダメージが入った。これを癒すためには是非ともその場所に行かねばならん。詳しく教えろ。知ってんだろ?」

「つってもなぁ……この状況じゃどこもやってねぇぞ」

「なん……だと!?」


 詳しく聞いてみると、水の工面すら苦労するようなこの状況で酒なんて何事だ! という風潮が蔓延してるようでどこも自発的に休業しているらしいが、娼館なんかはさすがに野郎共からの必死な訴えによって営業がされているらしいが、どうやら俺がくれてやった御神体も人気商品になっているらしい。


「だが入店は男だけだし、制限も付けられてんだよ。シーツを洗ったり体を洗ったりする水は貴重だからな」

「なるほど……なら水があれば、綺麗で可愛い女性と酒も飲めるしベッドで乳繰り合ったりも出来るんだな? あとで嘘でしたなんてほざいたらこの王都を廃墟にすっからな」

「いやいや。それが出来れば苦労しないだろ」

「出来るってんならどうなんだって聞いてんだよ」

「だったら案内してやるよ。自他ともに認める色町の帝王と呼ばれてっからな」

「よし。ならさっさと案内しろ」

「ちょ、ちょっと待て! さすがに引き継ぎもしないでここを空にすんのは給料に響くから勘弁してくれ。隊長に叱られちまうよ」

「チッ! しゃーねぇなぁ」


 本来であれば首根っこ引きずり回してでも街に繰り出すところだが、さすがに城の警備をほっぽり出せとまでは言えんわな。とりあえず待ってる間にどの程度の魔道具が適当なのかを奴の反応で確認すっか。まずは立水栓タイプ。


「変な形してんな」

「魔道具だからな。ここを捻ると水が出る」


 きゅっとするだけでドバっと水が吐き出される。それが乾いた大地にぐんぐん吸い込まれ、需要と供給が追い付かなくなると水たまりとなって範囲を拡大させていく。


「おお! ちなみにどのくらい出るんだ?」

「さぁ? しばらくほっといてみるか」


 門番がどの位で自由になるのか聞いてみると、あと30分くらいらしいのでその間出しっぱなしにしてどうなるのかの経過観察をする事に。その間に一度部屋に戻ろうかなぁなんて事も考えたが、これから向かう先は戦場だ。事前に仕入れなければいけない情報は多ければ多いほどいい。

 店の数。

 店員のレベル。

 サービスの程度。

 おススメなどなど不要な情報など何一つねぇからな。金の事など気にしねぇ! とにかく綺麗で可愛い女性が居並ぶ店を片っ端から制覇するつもりだからな。ルナさんとの出会いが最優先だが、待ってる間に別の出会いはやっぱり欲しい。

 そんな感じの話し合いを門番と共に語り合っていると、何やらにぎやかな声が……なんだろうと詰所から顔を出してみると、水を出しっぱなしの魔道具を中心に随分な人だかりができてた。


「うお……こいつぁ酷いな」

「そうだな。誰も彼も泥だらけだ」


 水を出しっぱなしにしてたんで、魔道具を中心に買い沸いてた地面が泥になってそこで獣人達がわちゃくちゃしてるんで、1人の例外もなく泥まみれですよ。綺麗で可愛い女性がそうなってると、薄着ってのも相まって見ようによっては裸と変わらんように見えるけども中には野郎もいるんで〈写真〉はお預け。


「そっちじゃねぇだろ! おい貴様等! どこで何をしているのか理解しているのか!」

「おー。お前がまじめに仕事するなんてな」

「やかましい! ってかお前の魔道具だろうが! お前がどうにかしろ!」

「ったく……ちょっと待ってろ」


 そういった仕事をさせるならユニに出張ってもらうのが手っ取り早い。って事なんで一度部屋に戻り、アンリエットと入れ替わるように戻ってくると門番の交代がやってきたようで人数が増えていたが、相当水に飢えてたんだろう。


「貴様らいい加減にしろ! 城の前でこれ以上騒動を起こすようなら牢屋にぶち込むぞ!」

「うるえせぇ! だったらさっさとこの異常気象を何とかしやがれ!」

「そうよそうよ! あんた達何もしてないじゃない!」

「物価も上がって水も満足に飲めなければ食事もまともに食べられないじゃない!」

「この騒動を起こしたのはお前等の怠慢が原因だろうが!」


 おーおー。出るわ出るわ不平不満が。数の暴力って怖いね。たった2人で数十人の獣人を牢屋に叩き込むのは実質的に難しだろうから、ユニの腹をポンと叩いて遠吠えをさせる。それだけであれほど騒々しくしていた連中がしん……と静まり返った。


「主。どうぞ」

「うむ」


 ここは一発――あれをいう時が来た。

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