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#317 与作じゃないけどへいへいほぉ~

「うーん。やっぱ予想通りとはいかんかぁ」


 よく分からん連中に別れを告げ、〈万能感知〉を頼りに戦える人材が多く集まっている場所に到着してみると、そこにはなぜかピンクのカバが大口を開けている不可思議な像がデンと鎮座し、武装した獣人がそこに飛び込んだり、逆に吐き出されたりしてくる。

 少し異様な光景だなぁと思いはしたが、こっちの目的はあくまで綺麗で可愛い女性だけだからな。目を皿のようにしてぐるりと見渡すと、やっぱ危険と隣り合わせな職業なだけあって随分と少ないし、誰も彼も筋骨隆々で益荒男と表現して問題ない外見をしてる。正直ガッカリ感が強すぎて一気にやる気が無くなりぐでっと近くのベンチに寝転がった。


「どうすっかなぁ」


 一瞬でやる事が無くなっちまった。このガッカリ具合はまた大通りに戻ってナンパするって気分すら根こそぎ奪い取る位えげつない。ってか、益荒男女子の破壊力がえげつなすぎて若干気分悪いわ。こういう時は〈写真〉に撮りまくった綺麗で可愛い女性の画像を見て気を紛らわせよう。デュフフのフ。たまりまへんのぉ。


「大変だ! 10階層で変異種が出たぞ!」

「なんだと! それは本当か!」

「ああ。しかも相手は大地牛(グランド・カウ)だ」

「チッ! よりにもよって厄介な奴が現れやがったな。今すぐギルドにこの事を伝えてこい!」


 うるせぇな。人が折角多くの女性を相手に天国へと誘っている想像をして楽しんでるってのに……たかが大地牛ごときで何をそんなに慌てふためいてんだっての。多少外皮が硬いだけの程々の食料じゃねぇか。今だったらアニー1人でだって狩れる程度のザコ魔物。アンリエットはこの噛み応えがたまらないのなのと言って好物の1つとしてたっけ。


「おい。今ダンジョンにどれだけの奴が残ってんだ」

「めぼしいところはCクラスの鋼の心とDクラスの龍の息吹。後はBクラスの戦女神の園だな。後は下級民達が数百ってところか。どうするよ」

「龍の息吹だけじゃ荷が重いな。他に魔法を使える奴は残ってねぇのか」


 まぁ正しい判断だな。腕にもよるが、あれは最低でもミスリルを含有した武器じゃないと傷一つつかんが、魔法であればLV2くらいあれば十分に戦える。勝てるとは言わん。


「昨日、叡智の結晶達が戻ってきたがどいつもこいつも酷い怪我でしばらくは絶対安静だそうだ」

「なんて間の悪い……ポーションは?」

「ついこの間使い切ったばかりだ。今回復の使える奴が治療してる」


 うーむ。王都と言っても物資不足は深刻らしい。まぁ、あとひと月もすれば狂信者共によって事態は好転してくるだろう。

 さて。美人成分をいくらか補充出来たんで起き上がる。うん。動ける動ける。ダンジョン――と言うか冒険者ってのは綺麗で可愛い女性はいないんだと認識できただけでも良しとしよう。


「おいガキ。ここに居ると危ねぇからさっさとどっか行け」

「言われんでも行くさ。用はなくなったからな」


 どーすっかな。昼を食うまでに大通りなんかは駆けずり回っちまったし……ここが駄目となると後は貴族連中が住んである辺りかスラム街的な場所ってなるな。まぁ、どっちを選ぶかなんてわかりきってるがな。


《アスカー。今どこに居るん?》

《んあ? ダンジョンの前だけど》


 久しぶりのパーティーチャットに足を止める。別に緊急って声色じゃないのに使うなんてな。っていうか久々過ぎてこんなんがあるって事すら忘れてたわ。


《ほんならちょうどええ。ダンジョンに関してちぃとアカン問題が発生したて聞いてな。すまんのやけどぱぱっと問題片づけてくれへん? あとポーションも使わせてもらうで》

《……ルナさん絡みか?》

《せや》


 やれやれ。今さっきの事なはずなのに大地牛の変異種の事をもう知ったとは随分と耳が早いな。しかし……こんな事がどうルナさんに繋がるのか甚だ疑問だが、これも会うための障害と考えればおのずとやる気も上がって来るってもんよ。ついでに食料調達にもなるし、今日は肉肉祭りでも開催するか。


「おいガキ。何の用だ」

「ダンジョン入る以外なにがあるってんだよ」

「馬鹿かお前。今ダンジョンは大地牛の変異種の出現で厳戒態勢なんだよ。スタンピードが先か上位冒険者の怪我が治るのが先かって瀬戸際にお前みたいな邪魔者に入られるとややこしくなるだろうが。黙って立ち去れ」

「知るか。こっちはこっちでダンジョンに入らんといけない理由があんだ。死にたくなけりゃ大人しくそこをどけ」

「ははは。随分と大口をたたくじゃないか。出来るものならやってみるといい」

「いったな? じゃあ遠慮なく」


 という訳で、ダンジョン前に立つ障害物を剣で両断。すぐに〈収納宮殿〉に蹴り込みカバの口に向かって飛び込む。


「おぉ……」


 目に飛び込んできたのは随分と大量の樹の魔物だ。あまりに大量すぎてもはや森だろって言いたくなるくらいの大量具合で、〈万能感知〉が真っ赤っかだが襲ってくる気配がない。

 どうなってんだと試しに蹴りで1本へし折ってみると、それが合図になったみたいに一斉にわさわさと動き始めたんで、雑草刈りと言ったらやっぱこれっしょって事で鎌を取り出し一振りすれば不思議でも何でもなく半径5メートルの空間が出来、そこに大した知能のない樹がまた押し寄せるんで振る。

 空間が出来る。

 集まって来る。

 鎌を振る。

 このループを1分繰り返し、すこぶる面倒になった俺は入り口から出て行かないように神壁を立てかけ、人がいないことを確認するとすぐに鎌を放り投げる。そうするだけで直線の空間が地平の果てまで出来るんで、すっきりするまで繰り返す。


「さて。こんなもんだろ」


 面倒な樵作業を終えると、どうやら元は大草原だったみたいで随分と遠くまで続く青空が広がってんなぁ……。地面は刈り取った木材が所狭しと転がってっけど、俺としては必要な物じゃないんで無視して階段を降りるとまたもや大森林が広がってるんで同じことを繰り返す。

 3階層目もまた大森林か? と半ば戦々恐々としながら降りてみると、今度は普通に大草原に手のリサイズの兎や牛といった食用の動物がポツンポツンと点在してる非常に牧歌的なフロアで、ここまで来るとようやく人の姿を確認できるようになる。しかも大量で、変異種が出現したという割に慌てふためいた様子がないのが怪しい。

 外見こそ冒険者っぽい格好をしてるが、装備自体はどいつもこいつもお粗末。オレゴン村で知り合った時のアニー達の方がまだいい装備してたと確信できるくらいのカス装備。あんなんで肉狩りをしてんのか。大変……なのか?


「お嬢ちゃん。こんなところに1人でとは珍しいね。どうしたんだい?」

「あ? ちょっと欲望を叶えるためにな。おっさん等は逃げなくていいのか?」

「逃げる? いったい何から逃げるんだい」

「聞いてないのか? なんでも変異種の大地牛が出たって――」

「なんだって!? そりゃ本当かい!」

「ああ。そう聞いてるぞ」


 平然とそう言ってのけると、周囲の獣人共がざわめいた。何で知らねぇんだ? ダンジョンから出てきたやつもそういってたし、アニーからも退治しとけと言われてんのに、現場に居るこいつ等がこんな反応できるんだろうか不思議で仕方ねぇ。


「ところでお嬢ちゃん。上から来たって事はあの魔物の中を突破して来たと言う事で間違いないかい?」

「魔物ってあの木くず共の事だろ? あれだったら邪魔だったんで一本残らず伐採したから、木が欲しいかったら今のうちに拾ってもいいぞ」


 こっちは木なんかいくらでも創造できるし、そもそも必要とする生活なんて送ってねぇからな。足の踏み場もないほど――って量じゃないけど、ある程度の足しにはなるだろ。


「本当かい!」

「あ? 別に嘘言ったって俺に何の得にもなんねぇだろ。それに、疑うなら階段がそこにあるんだからちょちょっと見に行けばいいだろ」


 俺に言われるがままに階段を上ったおっさんが、10秒もしないうちに帰って来て魔物が居なくなってる事をなぜか涙を流しながら喉が張り裂けんばかりに叫びまくると、そこらじゅうで嗚咽の声が。

 なんかよく分からんが、野郎が顔中から体液を垂れ流して泣き叫ぶ姿は見ていて気分のいいもんじゃないんで、逃げるように10階層に向けて駆け出す。

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