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#315 あなたの望みを叶えましょう。ただし有料だ!

 翌日。良くも悪くもない朝食を平らげると、特にする事もないんでベッドでぼへーとしてる。

 アニー達は今日も今日とてどこかに出かけてていないし、ユニは相変わらず読書に熱中。アンリエットは昨日はしゃぎすぎた反動なのか食事時以外はずっと寝てるし、飯自体も寝ぼけ眼で大きく船をこぎながらなんで相当エネルギーを消費したんだろうな。

 さて、こうなるとわざわざ廃教会に行く必要もなくなる。そこでナンパをするために街へ繰り出してもいいはずなんだが、アニーにあのおっさん共に外壁を見せるんやろう? と釘を刺されてしまったんで、仕方なしにこうして暇を満喫しなきゃならんのだよ。


「ゔあ~。超絶暇すぎる」

「……」

「なぁ。主人が暇だって言ってんのに無視するのって従魔的にどうな訳?」

「そう仰られても、ワタシに主を楽しませる芸など持っておりません。それに、アニーにあのカビ臭い連中がいつ来るのかの確認をしなかったのが悪いのでは?」

「よし。待ってるのも面倒だから直接問いただしに行こうじゃねぇか」


 確かに確認を怠った俺にも非があるかもしれんが、いつまでも待ってるのは俺の性に合わねぇ。なによりこうしてる内にも俺との出会いを今か今かと待っている他種族の綺麗で可愛い女性が数多く生きているのだ。事態が好転するのなら待機も苦じゃねぇが、今回は違う。

 って訳で、ユニにまたもや留守番を任せ、〈万能感知〉を頼りに王宮内を歩き回る。

 一応宿泊客って事である程度出歩いたところで咎められるような事はないものの、当然ながら入れない区画も存在するが、俺のスニーキングスキル(魔道具ガン積み)の前にはそんなルールは存在しねぇし、そもそも連中はその先にしかいないんだからしょうがない。

 抜き足差し足忍び足……って感じは必要ないんで普通に通路を闊歩し、時折見かける綺麗で可愛いメイドさんの後を追いかけたりしながらたどり着いた場所は、兵練所っぽい感じの場所で、何人かの兵士・騎士が並び、チビおっさんが壇上に立って何かしゃべってんな。


「にやり……」


 これは、きっとこの俺を待たせたことについて罰を与えてほしいっていう心の現れなんだろう。だったらその期待には是非とも応えてやろうじゃないか。


「よいか。貴様等の働き如何によってこの王都の未来が変わる。それを肝に銘じるのじゃぞ」

「「「ハッ!」」」

「良き返事じゃ。ではすぐに――のわっ!?」

「きゅ、キュウソ様!?」

「なんだなんだだらしない。この程度の不意打ちで体勢を崩しといてよく連中に講釈を垂れられるな」


 突然チビおっさんが倒れた事に、前に居た連中はかなり慌てた様子だったが剣を抜いたり警戒するような気配が微塵もなかった随分と温いな。


「ぬぐぐ……お主どうやってここに」

「歩いてだよ。そんな事よりも昨日の話はどうなってんだ? 結構待ってやってるのに全然こねぇだろうが。舐めてんの? ねぇ、舐めてんの?」


 へらへらしながら感情逆撫でダンスを披露していると、ようやく騎士っぽい奴が剣を手にしたままと通ってきた。


「おいガキ! キュウソ様がどのようなお方か分かっていてそのような口をきいているのか!」

「知らん」


 振り下ろされる一撃を人差し指と親指で受け止めてやると、どうやら両断する自信があったんだろう。滅茶苦茶ビックリしまくっているが、こっちからすればいつも通りの光景なんで普通にそれごと放り投げる。


「ほれ。結局どれを選ぶんだ。あんだけ時間をくれてやったんだからもう選択肢は決まてんだろうからさっさと言え。こっちはテメェ等のせいで無駄に時間使ってんのよ。決まってねぇんだったら黄泉の世界に叩き落すぞ」


 この俺が野郎相手に待ってやったんだ。きちんと出た結論を報告しない以外におっさん共が生き残るすべはねぇんだからな。


「貴様が作れる城壁次第じゃ。どの程度の物かによってはかなりの短縮に協力してやろうという結論じゃ。そこまで言い切れるだけの自信を見せてみぃ」

「いいだろう」


 その程度の事に考えを至らなかったとでも思うのかね。そんな事になるだろうとこっちはキッチリ準備万端なんだけれど、さすがにそれを出すにはちぃと狭いな。邪魔になりそうな辺りは……あの辺か。


「おい! どこへ行こうというのじゃ」

「心配すんな。ちょっとあの辺りが邪魔になりそうだから取っ払うだけだ」

「いったい何を言うておるんじゃ。そこには何もないじゃろうが」

「あんだろうが。あんなに邪魔な障害物がよぉ」


 俺が言っているのは、王城を囲むように建築されている城壁の事だ。これを20メートルほど切り取れば、〈収納宮殿〉にあるそれを取り出す事が出来るんで一切のためらいもなく剣を2回振ってサクッと消し去った代わりに用意しておいたへぼい外壁を取り出す。


「な……っ!?」

「まず始めに、これがへぼい奴だ」


 総レンガ造りで、サイズは縦5メートル幅2メートルの一般的な外壁。低くもないが高くもない中途半端な物だが、出会いまで半分となると出せるのはこんくらいだ。これであればMPの消費も少ねぇから3日もあれば余裕で王都の土地を一回りデカくできる。


「……」

「次に普通がこれだ」


 総レンガ造りなのに変わりはないけど、外側にはわずかにミスリルの粉末が混ぜてあるため、耐久性は勿論の事、魔法に対しても強い抵抗を与えた事でかなり堅牢だ。高さも幅も倍の10メートル×4メートルで、中が空洞構造なんで倉庫にするもよし、兵舎にするもよしの便利設計。最初の比べて大きいうえにミスリルを使っているんで、MP消費量はグンと上がるんで時間も3倍以上かかる。


「……嘘だろ」

「最後はこれだ」


 総ミスリル造りの外壁だ。一応これ以上の物も創造できるが、あんまりやりすぎるとアニー達に滅茶苦茶怒られるからな。まぁ、これでも十分怒られ案件なのは間違いなかろうが、ルナさんに会いたい欲が俺を突き動かしているからな。明日にでも会えるとなればこの位の無茶は無茶じゃねぇ!

 ちなみにサイズは縦50の横20だ。


「信じられん……これだけのミスリルをどうやって工面したんじゃ!」

「教えてやる義理はねぇ。さっさと決めろ」

「いや……さすがにこんなモンを見せられてすぐに決めろというのはわしの一存では無理じゃ」

「じゃあ今日1日くれてやるから決めておけよ。もし決まってなかったら問答無用で一番へぼい物で速攻で会いに行くからな」


 そう言い残し、俺は兵練所を後にする。さて……これで今日1日はナンパに時間を費やす事が出来るようになったぞ。少し順番が変わったものの、元々予定している事なんだから何も問題はねぇ。あるとするならユニだろうな。


「断固として反対します」


 やっぱこうなるか。うっすら分かっていたことだが、どうやらユニとアンリエットの相性はあんま良くないらしい。というか、ユニが子供の扱い方をよく分かっていないんだろう。かくいう俺もさっぱりな部類だが、アニメなんかでそう言ったシーンは時々見られるからな。多少なりとも知識はある。


「アンリエットを連れてナンパは出来んだろ。1日中寝てんだから平気だって」

「あれはいつ目を覚ますか分かったものではありません。もし主がこの場を去ってから目を覚ましたとすれば、確実にワタシが遊び相手にさせられるのです。そんな地獄は御免です」

「そこまで言うか」


 まぁ、何度となくその被害にあった後の姿を見ているからな。そういう事であればさすがに無茶はさせられんな。ユニは大事な大事な足だからな。


「しゃーない。昨日と同じ連中に世話を頼むか」

「そうしてください。アニー達が戻ってきたら女漁りに行っていると伝えておきますので」

「まぁ、アンリエットを連れて行くんだからそのくらいはしてくれんとな」


 まぁ、ガキ連中は嫌な顔をするかもしれんが、ジジイは金さえ払っておけば文句も言わんだろ。

 そうと決まれば善は急げだ。1日が長いんで相当な時間ナンパが出来るが、おっさん共がちんたらしてやがったせいで無駄な時間が発生したからな。取り戻すためにも急がんと!

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