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#311 お客様は神様でしょう? (悪w)

「おぉ……またあった」

「随分と設置されているのですな」

「まったくだ。きっと搾り取った予算をこれに回してたんだろうな」


 王都への道中、アニーとリリィさんはうだるような酷暑に速攻でコテージに避難。出てくる気配はなく、アンリエットは俺と遊んだことで相当に体力を消費したのか、飯を食う以外の時はまたほとんど寝るような生活に逆戻りしているので、道中は俺とユニ以外外には出ていない。

 そんな道中は勿論の様にべらぼうに暇なんで、なんとなしに王都に向かう道中に例の物があるのか調べてみたところ、まぁ出てくる出てくる。今回で20基目だ。


「しかし……精霊がこの世界の気象バランスを保っていたなど初めて知りました」

「だがこれを仕掛けた連中はそれを知っていた。一体どうやって知ったんだろうな」


 精霊は一定のレベルにならないと適性のある奴以外には目にも見えねぇし声も聞こえねぇ。イフリアや馬鹿シルフなんかの上の精霊達は具現化なんて技を使って強引に存在をアピールできるらしいが、今回みたいな緊急時でない限り、その姿を表に出す事はまぁないと本に書いてあったらしい。

 ってなると、ますますどうやってこの事実にたどり着いたのかの謎が残る。正規の方法で情報を入手するには特別なスキルが居るし、何より素直に教えるような連中――じゃないと言い切れない曲者ばっかなんだよなぁ。特に馬鹿シルフに至っては少しおちょくるだけですぐに吐きそうだからな。

 うーん。こいつぁ同郷の奴の仕業って匂いを感じるな。


「考えても仕方ありません。それよりもそのルナとやらに会った後はどうするのですか?」

「隣の龍族領だな。そこで片っ端から綺麗で可愛い女性を横取りする予定だ」


 龍族は実力主義らしいからな。夫を妻の目の前でボコボコにしてやれば俺に惚れてくれるだろうな。そう考えるんであれば、龍族の女性はチョロいと言えなくもないが、普通の人間であればまず無理だろうね。


「良く飽きもせずにそんな事が出来ますね」

「お前だって飽きもせずに文字だけの本を読んでんだろ。それと同じだよ」


 なんてくだらない会話をしながらも、時々〈万能感知〉に入ってくる装置の位置を地図に書き込みつつ走り続ける事5日。ようやく王都にたどり着いた。


「おぉ……さすがにデッカイな」


 ここに来るまでに通過してきた集落はたった2つだけど、どっちも外壁が低い感じがしたがここは人族の物と比べてもひけを取らないほどの高さを有してやがるな。建物が城っぽい奴のてっぺん程度しか確認できないくらいにはそびえてやがる。


「そらそうやろ。獣王が住んどるんやで? 守りを厚くするのは当然やろ」

「だったら他もそうすりゃいいと思うんだがなぁ」

「獣人は守るより攻めの精神やから。それに、あくまで噂なんやけどここの守りが固いんは獣王が命より大事にしとるモンがあるかららしいわ」

「ふーん」


 あぁ。そういえば獣王の奴が持ってるんだったっけか。あのトンデモ魔神を召喚できる愚具を。そう考えると俺はその御膝元に来てるわけか……またあんな面倒な奴に出てこられるとマジで萎えるなぁ。


「どないしたん?」

「いや、なんでもねぇよ。思い出し落ち込みだ」

「随分器用なことするんやね。それやったらあてがぎゅーってしたります」


 なんてスキンシップを受けつつ外壁に目を向けると、1つ前の街にはあれほどあったボロ小屋は一軒も存在しない。


「ここは外壁そばに住むなんて連中は居ないんだな」

「当然だろ。ここは獣王様が居られる王都だぞ? あんな連中をのさばらせて何が起こるか分かったものではないからな。見つけ次第処分している」

「処分か……どんな方法だ」


 その単語を聞くと、どうも死体の想像が容易になる。

 万が一にもそんな事をしているんだとしたら、綺麗で可愛い女性が俺という存在を知らずに輪廻転生してしまったと言う事になる訳で、それに対する怒りは軽く王都1つを破壊できるほどやでぇ。


「何か勘違いしてないか? 連中は王都内で職に就いているぞ」

「……なーんだ。俺ぁてっきり殺処分してんのかとばっかり勘違いしてたぜ」

「まぁ、犯罪者はそうしてるがな。よし、問題ないようだから通っていいぞ」

「おう」


 まぁ、問題があるようなモンは事前に〈収納宮殿〉に放り込んであるからな。

 悠々と門を潜り抜けて王都に入ってみると、すぐにアニー達の表情がぐっと柔らかくる。すぐに壁を確認すると、やはりここにも例の記号が一面に刻み込まれている。


「ふはぁ~っ。ようやっと涼しなったわ」

「いやぁ~ホンマに軟弱になってしまいましたわぁ」

「さて。そんじゃあさっそくルナさんへの渡りをつけてもらおうか」

「わーっとるって。せやけどその前には準備が居るんで1日待ってくれへんか?」

「まぁ、1日くらいならいいぞ。ここはどうやらあの街と違って平穏そうだからな」


 あの街じゃあ増税による食料の高騰が出て行く瞬間にも続いてた。一体どこからどうやって食材が運ばれてい来るのか分かんねぇけど、目を血走らせながらそれを奪い合う殺伐とした空気がここにはない。薄着の女性が和気藹藹キャッキャウフフな光景が広がってる。これを堪能しないような俺じゃねぇからな。


「とりあえず宿に行くで。支払いはアスカ持ちやからな」

「そんなのいつもの事だろ。わざわざ確認する必要があるのか?」

「ものごっつ高いんよ。後で文句言われへんように先言うておきますわ。一泊で白金貨3枚や」

「ふーん。なんでそんなに高ぇんだ?」


 今までの宿も大抵は最高級の宿を貸し切ってきた。その方が滅茶苦茶安全だし、何よりいつか一夜を楽しむための下見って意味合いもある。やっぱこういう宿でムードを作るのが1番だろうってのが俺の考えだ。

 しかし。それにしたってバカ高ぇ。今まで泊まってきた宿を貸し切ってもそんな大金には届かんかったってのに、ここではまさかの1人でそれを優に超える金額か。一体どれだけの豪勢な部屋で極上のサービスを提供してくれるんだろうな。


「簡単な事や。宿泊先が王城なんや」

「はぁ? たったそれだけの理由で白金貨3枚ぃ? 別に払えねぇ訳じゃねぇけどよぉ、そんな事でそんな大金払うのは超絶面倒なんだけど。ナンパに行くにも移動が面倒そうだしそこじゃなくてもいいだろ」

「ルナに会うんはここに泊まるんが1番の近道やで?」

「よし行くぞ。さっさとそこまで案内しろ。そしてルナさんに会わせろ」


 ナンパも確かに大切な事の1つと言えるだろうが、ルナさん最速の道以上に重要ではないからな。それを済ませてから始めてもこの王都から出て行くような女性達は居ないだろう。


「相変わらず現金な奴やな。まぁええわ。ほんならウチとリリィは別行動させてもらうで」

「なぜに?」

「会うための準備に色々せなあかん事があんねん」

「すんまへんねぇ。ルナはんの親がホンマに過保護で苦労しますんや」

「ふーん。金持ってくか?」

「そっちは要らへんけど料理が欲しいわ。あの肩肘張る料理あるやん? ああいうのがええわ」


 恐らくフランス料理とかの事を言ってんだろう。一度コース料理として提供した記憶があるが、リリィさんにしか好評じゃなかった。特にアンリエットは酷かったな。頭の形が変わるんじゃないかってくらい殴ったし、リリィさんに滅茶苦茶脅されたもんな。


「ほれ」


 ルナさんに会うんだとなればもったいぶる必要はない。そもそも仲間内のほとんどが手をつけねぇってのに満足いく出来になるまで作りまくった俺が悪いんだけどな。とりあえず満載されてる〈魔法鞄〉を投げ渡すと、2人は人ごみの中へと消えて行った。


 ―――――――――


「ほっほぉ……随分と頑丈そうだな」

「そうですか? ワタシにかかればこのような城など一晩で潰せますが」

「甘いな。俺なら一撃だ」


 なーんて物騒トークを城のモンの前で繰り広げる。何故かて? 超絶怒涛に暇だからだよ。あいつらぁ……絶対にこうなる事を知ってて逃げやがったな。後で文句を言ってやろう。


「おいそこの貴様等。随分と楽しそうな話をしてんじゃねぇか」


 こめかみ辺りをぴくぴくさせながら近寄ってきたのは、ここの門番。用件を聞かれたんで城に泊めろと言ってから1時間はたってる。週刊誌も今週分は読み終わっちまったからな。あまりにも暇なんでそんな感じの会話で連中をいじるくらいしかする事が無くなった。


「うるせぇノロマ。嫌だったらさっさと手続きを終わらせろ」

「そうだぞ下等生物。主を無駄に待たせるなど殺されても文句の言えない案件だぞ」

「だったら事前に予約を入れておけ。ったく……金を支払えなければテメェ等みたいな連中は追っ払うってのによぉ。余計な仕事増やしやがって」

「余計な仕事ってのはどういう事を言うんだろうなぁ……ユニ」

「お任せを」

「おい――」


 暇つぶしにユニに遠吠えをさせる。それだけで城の中から騎士が飛んで来ては門番連中がペコペコ頭を下げる。ついでにこっちを睨んでいくが、こちとら宿泊客なんでな。無碍に出来ねぇだろうし、そうすればどんな酷い未来が待ってるのかと想像に難くない。

 結局。手続きが完了するまでにユニは3回遠吠えを上げ、俺が1回ほど悲鳴を上げたりしてみたりしてそこそこ暇が潰せて野郎どもに迷惑をかける事が出来て多少は満足した。

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