表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
303/357

#296 男子の強い味方登場っ! 人とは言ってないけどね。

 幼女の案内で――と行きたいところだったが、その背中を追いかけるより俺が走った方が速いんでひょいと担ぎ上げて素早く屋根に飛び移り、誰もいない道を建物を傷つけない程度の力で駆け抜ける。


「わ、わ、わ、」

「舌噛んだりすんなよ」


 とかなんとか言っているうちに門に到着した訳だが、幼女からすれば出入り口もない場所に向かって突き進んでるようにしか見えないからな。もちろん意識してそこを目標にしているのは言うまでもない。これを持ってない時点で街の外で暮らしてるの一目瞭然漬けよぉ。

 ここに入る時に許可証を貰ったんだが、ギルドカードじゃない場合は大抵一度でも出てしまったら効果を失うらしいと聞いているが、実際試した事はない。そう言う場合はこんな風に不法に外出するからな。


「ふわ――」

「はい。静かに」


 最後の一歩で大きく宙を舞い、幼女の口を塞ぎながら〈迷彩〉を付与したローブにくるまって、地面までの距離を〈万能感知〉で確認。最終的に街から数百メートル離れた位置に着地。ちょい駆け足で距離詰めると、江戸時代の長屋って感じの平屋がズラッと並んでて、かなりの密度でみすぼらしい格好の獣人達が生きている。


「さて。お前さんの住処は?」

「あっち」


 幼女の指先案内であっちにフラフラこっちにフラフラと言った感じで長屋街を歩く訳だが、ここはもうあれだな。ほとんどスラムと何ら変わらん場所だな。

 片やみすぼらしい格好の幼女。

 片や人族だけど超絶美少女の俺。

 そんな2人が、武器も持たず護衛も居らずの全くと言っていいほどの無防備な状態で歩いていれば、当然のように馬鹿な野郎共が歩み寄ってくる。たった10分で5回くらい脅しをかけられたが、そこは俺の必殺・連続黄泉帰りを炸裂させれば、30や40程度の有象無象は尻尾巻いて逃げ出し、その噂が広まれば自然と安全が確保される。野郎には遠慮しない人間だからな。


「ここか?」

「うん」


 どうやら着地した場所が悪かったらしく、幼女が住んでいたのは門のすぐ近くだった。不法外出がバレないようにと手を打ったのが無駄だったらしい。

 一応ノックをしてから中に入ってみると、中にはベッドが1つとこじんまりとしたテーブルに椅子2つがギリギリ収まっている程度の省スペースしかない独房みたいな場所で、幼女の母親であろう女性らしき何かが横たわっている。


「だ…れ…」

「俺は世界中の――貴族王族を除いた綺麗で可愛い女性の味方のアスカってモンだ。お前さんの可愛い可愛い娘の願いで治療薬を持って来た。代金は受け取ってるから安心して飲め」


 と言う訳でちゃっちゃと人らしきそれの口元辺りにエリクサーを一滴落とす。

 ちなみに、有無を言わさずにやってるのは表現方法からでも分かる通り、母親の容姿は今のところすこぶる悪い。線の細さと微かに聞こえた声色が野郎じゃなさそうだからそう判断してるが、この状態だと人の形した喋る木と言われてもなるほど。と納得出来る。

 なーんて事を脳内解説している内に治療はアッサリと完了。

 一体どんな病気にかかっていたのか知らんが、枯れ木みたいだった肉体はまだ多少乾燥しているがちゃんと皮膚って分かるし、100近いババアみたいな顔はやはり親子だね。幼女をいくらか大人びさせ、儚さをプラスした守ってあげたくなるタイプの綺麗な女性だ。


「こ、これは……」

「おかーさん!」


 元通り――に近い姿に戻った母親に感極まった幼女は、自分の身に起こった状況を理解できないままの母親に飛びついてわんわん泣き出してしまった。


「依頼完了だ」


 報酬額は銅貨2枚。今のところはだけどな。


「あ、あの。何とお礼を言ったらいいか」

「気にしなさんな。それよりも貴女の労働についてお聞きしたい。ここの連中に肉体を提供していたか」

「……ええ。娘は幼く私は病弱で労働らしい労働が出来ないとなると、他に方法はありませんから」

「その結果。病気をうつされて死の淵に立たされ――横たわらされてた訳だ」


 多分梅毒だろう。まあここに来てからと言うのであれば最長で1年となるとあそこまで悪化はしないと言えなくもないが、娘がいるとなると旦那との行為の際に感染した可能性も無きにしも非ず。その場合はこの幼女の方にも感染が拡大しているかもしれんのだが、今言うのはさすがに無理があるか。


「とりあえず馬鹿な連中に身体を売るのは止めておけ。娘を1人残して逝きたいと言うのであれば、止めはせんよ。貴女の人生だ。自由に使えばいい」

「しかし……それでは生きて行けません」


 そうなんだよなぁ。人が生きるには最低でも水2リットルと2000キロカロリー程度の食料が1日に必要になる。何とかなるだけの金があれば問題ないが、この2人にそれを強いるのは酷。かと言って俺がすべて世話するのは7日が限界。

 その間に勤め先を紹介するなり。商売のタネなりを与えられればいいんだが、こんな場所で出来る商売なんてのはたかが知れている。何せここに居るのは明日の飯にも事欠くような連中ばかり。

 薄利多売しようにも、飯を作るには謎の文様入りの食器に始まり、バカ高い食材自体を仕入れる為に街に入るか暴利の商人から購入するしかないとなると現実的じゃない。さて――どうするか。


「入るぞ~」

「あ?」


 声に反応して入り口に目を向けてみると、あん時の騎士ほどじゃないが太った豚獣人に、生前の俺よりブサイクな豚猫獣人がいる。ちなみにどっちも野郎だ。


「お? なーんか知らん女がいるぞ?」

「ゲヒヒ……使いモンになんねぇ母親の代わりに娘を使おうと思ったが、2人いるなら丁度いい」


 なるほど。どうやらタイミング的にギリギリだったか。それにしても性のはけ口か……こりゃいい商売になりそうだ。


「おいお前等。さっさと身体を差し出せ」

「あ?」

「「っ!?」」


 おっといけない。つい殺気を出してしまったよ。抑えて抑えて……こいつ等は必要な駒だ。お前等。さっさと身体を差し出せ」

「あ?」

「「っ!?」」


 おっといけない。つい殺気を出してしまったよ。抑えて抑えて……こいつ等は必要な駒だ。威殺すんじゃなくて餌付けをして従順なペットとして仕込んだ方が得策なのだよ。


「さて。お前等は性欲を解消するためにヤりに来たんだろう?」

「あ、ああ。その通りだ」

「何か月か前まではそっちの母親を利用してたんだが、いつしか勃たたねぇくらいになっちまったから他の連中で我慢してたんだが、多少小せぇが見た目のいいガキを使おうとこうして足を運んでやったんだよ」


 ふむ。どうやら豚の方は俺に逆らう事を諦めたみたいだが、キモデヴの方は平然と下衆な事を口走ってる。アホなのか? それともなんとでもなると高をくくってんのか? どっちにしたって問題ないか。


「だったら残念だな。この親子はそういった商売を数日前に廃業したんだと。だから諦めるんだな」

「なんだと!? こっちは金を払うって言ってんだ! さっさと股を開いて事が終わるまでじっとしてりゃいいんだよ!」

「やれやれ。お前はちょっと黙ってろ」


 こいつが居るといつまで経っても話が進まんので、どてっぱらに蹴りをぶち込んで御退出願ったが、もう1人の豚は逃がさないようにきちんと襟首をつかんでおく事も忘れない。


「な、なにすんだ! おれはまだ何もしてないだろ!」

「だが性欲を鎮めたいのも事実だろ?」

「そりゃあまぁ……そうだけど」

「そんな君にそこそこ便利な道具があるのだよ。『神の穴』というのだがね。いまなら特別に潤滑油をつけて銅貨5枚で販売してやるぞ?」


 そう言って〈収納宮殿〉から取り出したのは、女性経験のない男子諸君には心強い味方のアレである。もちろんプレミアムじゃなくてノーマルの奴だけどな。俺も生前はプレミアムに非常に世話になったよ。これを知る前と後ではまさしく世界が色づいて見えたもんだ。


「『神の穴』? 軽々しく神の名を語るとは不敬だぞ」

「なぁに。この程度で目くじらを立てる神なんか居ないって。それに、一度使えばなんでそんな名前になったのかがすぐに分かるだろうよ。現に俺の知り合いはこれを使って以降、半端な女性に金を払うよりコッチの方がイイと断言したくらいだ」


 俺の説明に豚の喉がゴクリと鳴る。もちろん高い金を出して綺麗で可愛い女性女性を抱くのが最高だが、銅貨5なんて金でそう断言させる使い心地はどれほどの物なのか。そう思わせた時点で勝ちなのはほぼ決まりだ。


「毎度アリ~」


 念のために気に入らなかったら返品も受け付けると言っておいたが、正しい使い方をすればそりゃあもう腰砕けになる快感ですとも。特に初めてともなるとマジで俺の嫁です(キリッ!)とかのたまいそうになるほどだからな。すぐに戻ってくる前に契約を進めておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ